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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 5
75/105

12 離脱

 クーデターにより、アルツェイトの軍はバラバラになってしまった。パーツ大臣は死ぬことなく、王家の生き残りであるアルフィングを捕らえようとし、更にはコノエを殺そうとしてくる。


 そしてコノエは……。

 脱出した僕はシナプスに乗り、一旦アルフの後に着いていき、ジ・アークの所まで向かった。

 後ろからは、さっきの飛行艇からパーツ大臣の声がスピーカーから発せられる。


『アルツェイト軍、ルーグ派の奴等がクーデターを起こした! 私は無事だったか、何人か犠牲となった! 首謀者のルーグは撃ち取ったが、その友人であるアルフィングはまだ生きている! 逆賊を許すな! 平穏と和平を望む我等に、このような恐怖を与える奴等を、決して許すな!!』


 う~ん。そう言うなら、沢山出撃させたその機体も、戦争という恐怖を引き寄せる物になるんだけどね。

 アルフ達が乗っている機体とは違い、パーツ大臣の乗る飛行艇から出てきた機体は、どれもゴツくて太い。当然飛べないから、そのまま地面に着地してホバーで迫ってきている。


 ただ、両肩にあるバズーカー砲がかなり大きい。あれは凄い威力がありそうだよ。


「とっ……!!」


 何て言っていたら、スッゴいスピードで砲弾が飛んできて、僕の目の前に落ちて大爆発を起こした。

 ここ、一応まだ市街地だよ。街の人達はスピルナーの襲撃で外に逃げているけれど、建物は出来るだけ壊さない方が復興しやすいでしょうに。


「わぁ、しかもこれナパーム弾ですか。爆発と炎上を同時に起こすなんて、どんな改良をしているの」


 何とか距離を取ろうと思ったら、目の前が火の海だった。全く、厄介だな。あれは。


 そんな時、上空からジ・アークがやって来て、アルフを回収した。いや、よく見たら何かおかしい。ナイト・ユニットが鎖でグルグル巻きにされてる!


「アルフ!!」


『おっと。抵抗はそこまでにして、大人しく投降しろ。危険な逆賊が』


 そして、ジ・アークからジュイル艦長の声が響く。まさか……ジュイル艦長はアルフを王として、王権を復活させようとしていたんじゃないの? それこそ、ルーグと同じ立場かと……。


『おぉ、ジュイル中将。流石だ。そのまま、あの逆賊も打ち取れ』


『分かりました。ですが、このアルフィングは私めにお任せを。何せ、立場上は私が上官となりますので。それに、彼はルーグの友人というだけであり、クーデターに加担はされていないでしょう?』


『……いいや、危険分子は排除しなければな』


『そうですか。それでは、処遇は私にお任せを』


『いいだろう』


「…………」


 あぁ、何となく分かった。


 そうか、ジュイル。君はルーグ派じゃない。だけど、パーツ派でもない。君は君のやり方で、アルフを王にしたてようとしているんだね。


 どっちにしても、この状況だと僕は完全に用済みじゃないかな。


『さて。あれも回収しよう。パイロットは危険過ぎる。あんなシステムを独自で組み込むとは考えられない。何者かの意図を感じる。ジュイル中将。パイロットを殺し、シナプスを奪還せよ』


『了解しました』


「……それなら、僕はこのままさようならさせて貰うよ。このシナプスを、君達に使わせる訳にはいかないからね」


 もう心は決めていた。

 アルツェイトには協力出来ない。今のジ・アークにもいられない。それなら僕は、このまま抜けさせて貰う。もちろん、そう簡単ではないだろうね。


『コノエ!! 貴様、私達の敵になるのか?!』


 ジ・アークからレイラ隊長が出て来て、ケモノ型の状態で走り出し、僕の横から突撃してくる。

 大きなブレードで脚を狙っているか。シナプスは回収となっているから、落とす訳にはいかないだろうね。そこを突けば、ここから逃げる事は出来そうだけど。


「おっと」


 レイラ隊長のヴォルヴォの動きは鋭いし早い。オルグと張り合っているほどなんだからね。

 身を低くしてブレードは避けたけれど、後ろ足の蹴りは避けられないね。受けるけれど、ダメージは最小限に、後ろに跳んで距離を開ける。炎に突っ込まないようにもしないと。


『コノエ、答えろ!! お前は私達の敵にーー』


「そうだよ。僕は、あなた達の敵だ!」


『……っ、そうか。言ったはずだぞ。敵になるというなら、容赦はしないと!』


「……」


 レイラ隊長の威圧が物凄いのは分かっている。敵として認識した時、それが更に大きくなるなんて。


『ふっ!!』


 そして、僕の視界から消えたレイラ隊長は、一瞬で僕の後ろに回り込み、両手で押さえ付けようとしてくる。厄介だよね、こんなにも強くてブレない人は。


「ごめん。レイラ隊長。だけど、僕の心が、君達を許さないんだ」


 そんなレイラ隊長の動きが見えているんだ。避けるのは容易いよ。後ろ足の跳躍だけで飛び上がり、僕は目の前の炎を飛び越える。


『なにっ!? そんな跳躍力、今まで見せた事……いや、またそのシステムか』


 対峙した時は起動していなかったけれど、後ろに回り込まれる前にD・Aシステムを起動していたんだよ。こうなると、レイラ隊長でも僕を捕まえられない。


「今までの恩がある。君達を倒したくはない。殺したくもない。邪魔しないで。僕は僕の方法で、この戦争を終わらせるから。君達の邪魔もしない」


『黙れ』


 そうだろうね。そんなので納得しないだろう。だけど、僕の精一杯の誠意を伝えるしかない。そうしないと、皆は僕を殺しに来る。パーツ大臣の言いなりになってね。

 ジュイル艦長がどう動くか分からないけれど、彼もしばらくはパーツ大臣の言う通りに動くだろう。


 ジ・アークからは、他の皆の声も聞こえる。何とかして僕を制止しようとする声が。


『コノエ! あんた嘘でしょう! 何であんたそんな……そんなの、弱虫のあんたには出来ないでしょう! 戻ってきなさい!』


『コノエさん! 駄目です! チャオさんに続いて、あなたまで居なくなるなんて、そんなの駄目です!!』


 コルク、ツグミ。皆もそれぞれ叫んでいる。皆そこまで、僕の事を気に入ってくれていたの? 


「皆、ごめん。だけど、僕は行くよ。このままアルツェイトに居ては駄目だから。大丈夫、ミルディアに行く気もないから」


『そういう問題じゃないのよ!!』


 コルクが泣きそうになりながら、必死に僕を留めようとしてくる。だけど、駄目だよ。

 それに、出来たら君もそこから降りて欲しい。でも、君には君の事情があるからね。無理強いは出来ない。


「さようなら」


 レイラ隊長も炎を回り込んでやって来る。このまま戦い続けると、今度はパーツ大臣の部隊がやって来る。1人でアレをやるのは流石に骨が折れるし、消耗してしまうとこっちが捕まる。だから、最速でここを離れる。


『なっ……!!』


 背中のブーストを大きく広げ、最大威力で一気に加速。大きく跳び上がった僕は、市街地の半分を跳び越え、更にもう一回の跳躍で街の入り口の塀と門を跳び越えた。


 そこからホバーを使い、ブーストの加速で一気にベイザルムールを離れた。


 通信ももう途絶え、何も聞こえない。


 さて。ここから何処へ向かおうか。スピルナーもだけれど、アングラーの動きも気になる。それと、僕の記憶だ。まだ男の時の記憶は完全には甦っていない。その戦い方だけが、頭の中に浮かんだ。


 調べないといけないね。色々と、分からないことを。戦争を止めるのは、それからにしないといけないかな。そうじゃないと、ブレてしまいそうだ。

 今、ジ・アークから離れる時も、心苦しくはあったよ。そこまで、情というのが戦争に大きく関わってくるなんてね。


 祖国の想い、恩返し、裏切り、憎しみ。様々な情の中で、戦場は様変わりしていく。


 自分をしっかりと持たないといけない。ここからはもう、流されちゃいけないんだ。


「行こう、シナプス。君のオリジナルを見つけるまで、僕の手脚になってね」


 アルツェイトから出る為、森の中を駆けながら、僕はシナプスにそう呟いた。


 ここから、長くなりそうだ。

 皆が止める中、コノエはジ・アークから離れる事を伝え、ベイザルムールから離れた。1人、この戦争を止める決意を固める為、まだ甦っていない、男性だった時の記憶の手がかりを探すことにした。その手がかりの1つ、シナプスのオリジナルであるシナプス・オメガを見つけるために。


次回 新章 「1 大きな戦いの前兆」

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