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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 5
70/105

7 スピルナーの襲撃

 様々な場所でそれぞれの思惑が飛び交う。戦う者達は結局の所、命令通りに動くしかないのか。

 オルグもまた、己の不甲斐なさに憤りを感じ、戦場を駆ける。

 それから数日後、バッゲイア諸島のミルニル島にやって来たオルグ達は、早速ゲリラの動きを確認する。


「……ふむ。ロケット発射台を片っ端から襲撃しているな」


「おおぅ。しかも機体が、ミルディアが昔使っていた機体『DK―MA1』デコワンじゃねぇか。ひょぉ、水上戦闘出来るように、足に板付けてやがるな~水上スキーみたいじゃねぇか」


 楽しそうにしながら相手機体を見るグランツと違い、オルグは真剣な表情で、防衛の陣に対しての最適な形を考えていた。


「ふ~む。水上から攻めてこられるとなると、勝手が違ってくる。四方八方から狙われることになる。狙撃手は何名用意できる?」


 テキパキと指示を出すオルグを見ながらも、グランツはふと呟く。


「敵さんあれじゃね? 例のアングラーとかの捜索もしてるんじゃねぇか? ゲリラにとってもありゃ厄介だし、海の多いバッゲイアを注視するのも分かる。ついでに、宇宙ステーションの捜索の妨害も出来るだろう」


「……アングラーに関しては、不透明な点が多い。度外視するつもりはないが……」


 それでも、今回の防衛の陣に対して、アングラー対応まで盛り込むのは、いささか装備が足りない。もしもを考える必要もあるのだが、可能性は今のところ低い。


 あれ以来、アングラーの襲撃を聞かないからだ。


「まぁ、俺は俺で鼻効かせとくわ。こういう時、ケモナーは便利だぜ」


「頼む」


 自信満々のグランツに、オルグも全幅の信頼を置いていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 更に数日。バッゲイアの島々はものものしい雰囲気だった。アングラーが拠点として狙うには、このバッゲイアが一番適していた。


 もし、アルツェイトと同じように水路を作られ、彼等を手懐けようと愚かな画策をする者がいたら……確実にこの辺りを狙うだろう。

 そこはイナンアも同じ事を考えているようで、向こうのゲリラ部隊に、変わった機体を見つけたところで、オルグもそう確信していた。


「この機体は……」


「おぉ、サムライ・ギアってやつか。たしか、データ渡されてたよな」


「ギルム様からな。完全な近接で、特に間が重要になるからか、脚回りの開発に重点した機体だな」


「ギアか……この起動部を見たが、こりゃすげぇよな。ただの歯車をここまで難解に組み込ませて、ほんの少しのエネルギーだけで、様々な機能や動作を実現しやがるんだからな」


「…………」


 ここまでの機体を、ギルムが考えたとは思えない。それ程までに素晴らしい作りになっていた。ただ、それも扱うパイロット次第なのだが。


「今は向こうも膠着状態。こっちからも迂闊には手は出せない。歯がゆいねぇ。こんな場所じゃなければな」


「確かにな。ただ、向こうは別に攻撃を続けていても何のデメリットもないはずだが……何故、突然攻撃を止めた?」


「なんか待ってやがるのか?」


 そんなグランツの悪い予感は当たった。


 突然、オルグ達の居る建物に、強い衝撃と振動が走る。


「攻撃! 攻撃です!」


「ちっ、イナンアか!」


「いえ、これはーー空です!」


「空?!」


 慌てて入ってきた兵の声を聞き、オルグは急いで状況確認をする。

 監視カメラや、防衛に付いている機体から送られる映像に、その襲撃してきた者達が映っている。


「これは……この機体は!?」


「おいおい、バグ・ユニット。あれは、スピルナーだ!」


 地球にいる、蜂の様な形をした機体が、上空から直下型の対地ミサイルを次々と落としている。

 羽根は大きく、どうやらその羽根に複数のミサイルを搭載しているようで、腹の部分にはマシンガンが備え付けられている。


「あいつら……様々な場所で好きなように戦地を荒らしやがって。バッドビー(嫌われる虫)の異名を持たされている意味、分かってねぇのかよ」


「ここ十数年は姿さえ見せず、我々の戦争に対して興味を失ったか飽きたか、または別のものに興味を持ち出したかって言われていたが……」


「ここに来て……かよ!!」


 完全なイレギュラーだったが、オルグは直ぐに動き出し、皆に出撃をするよう要請する。


「奴等は上空だ。対空ミサイルと迎撃ミサイルを組み合わせ、何とか追い払え! 準備が整い次第、私も出る!」


 スピルナーの機体は、常に上空を飛んでいる。それだけの飛行技術を持っているが、決して他にその技術を渡すような事はしない。

 よって十数年前まで、空はとても危険なものだった。人類の飛行技術に遅れがあった原因の1つには、スピルナーの存在もある。ただ、スピルナーの活動が無くなっていくにつれ、人々もようやく空へと上がれるようになった。


 当然、スピルナー側との話し合いもされていて、貿易や移動に限り、上空移動は出来ていた。

 しかし、戦闘に関しての飛行システムの開発は、スピルナーからの抗議と妨害行為で難航していた。


 それが、十数年前からピタリと止んだ。何なら、彼等の都市への特殊な電波による通信も、一切出来なくなっていた。

 それが何故なのかは、誰にも分からない。彼等の住みかは、電波妨害の激しい山岳地帯であり、歩いていくのも困難な程の、人類未踏の地だったからだ。


「しかし、あのイナンア達の動き。まるで、スピルナーがここにやって来るのを分かっていたかのような動きだな」


 こちらはスピルナーへの対処で右往左往しているというのに、海上で待機していたイナンア達は、すぐさまバズーカ砲やミサイルで応戦している。流石に対処が早すぎる。


「大将! 機体の準備が出来た、発進出来るってよ!」


「分かった! 陣頭指揮を取る。あいつらの思うようにはさせん!」


 それを聞き、オルグは急いで準備をすませ、愛機へと搭乗する。そして、兵達の誘導のもと、ミルニル島の綺麗な海へと出撃する。


 オルグの機体も、水上を移動出来るように、脚をホバーで浮かせている。

 しかし、イナンアのようにスムーズにとはいかない。それでも、空を飛ぶ煩わしい虫を撃ち落とすには十分だった。


 バズーカで次々とスピルナーを狙い、それを撃ち落としていく。


「君達は、いったい何故今ごろ出てきたのだ。大人しく籠っていればいいものを……!」


 空からのミサイルと銃弾の雨を掻い潜り、相手機体へと通信も入れているものの、一向に返事はない。


 その代わり、変わった通信が入ってくる。


『大将。何だこの通信は?』


 それは虫の羽音のように、こう鳴っている。


「ビ、ビ、ビ、ビービービー、ビ、ビ、ビ」


 それからオルグは、スピルナーの機体を望遠カメラで見て、始めてその機体の数々が、何か異常な状態に陥っている事にも気が付いた。


「…………濃い、紫の液体? いや、血管のように張っているのか? 何なんだ、あれは……」


 通信の意味は分からない。機体に纏わりつく、その濃い紫の物体も分からない。

 言えるのは、スピルナーは意図して襲撃したわけではないということだった。


『それは明らかに異常だ! どうすんだ、大将!』


「……だらかと言って、我々に救う術は……それに、このままではロケットの発射場が」


『うぉ?! 奴等、そっちまで狙って!? こんにゃろ!!』


 気が付けば、上空を沢山のバグユニットが飛び交い、ロケットを狙い打ちするように爆撃していた。

 グランツは、背中に背負わせた追加武装の大経口マシンガンで、爆撃してくる機体を優先的に狙い、撃ち落としている。


「えぇい。このまま考えても埒が明かない。各個撃退せよ! これの解明は後だ!」


 そのオルグの指示のもと、ミルディアの兵達はハコ機を狩り、イナンアに牽制しつつ、上空のスピルナーを撃墜していく。


 それでも、ずっと謎の通信は続いている。ずっとずっと……。


「耳障りな。頼むから、何とか言葉にしてくれ。スピルナーも、言語は話せるはずだ。人間なんだからな。虫の能力を与えられたからといって、喋れなくなるわけではないだろう! 脳を弄られていない限り……脳を……あぁ、そうか。虫特有のものならあったな。いや、そうなると余計に、どう言う事だと言わざるを得ない」


『大将! なんか分かったのか?! つうか、あぶねぇ!』


「おっと、すまない。グランツ君。あぁ、分かったさ。ただ、今ここを襲っている連中は助けられない。だから、全て終わってからだ」


 あることに気付いたオルグは、つい足を止めてしまい、ミサイルが直撃するところをグランツに助けられた。

 そして、完全に気持ちを切り替えたオルグは、正に黒い凶星となって、空を舞うスピルナー達の機体を次々と撃ち落としていく。


「虫でも、そうなるともう助けられない。だがせめて、君達の同胞だけでも、何とかして見せるさ。だから今は、眠ってくれ」


 そう言って、最後の1機をオルグは撃ち落とした。

 宇宙ロケットを守る戦いは、スピルナーという最悪の横やりが入り、とんでもなく大変な状況になってしまった。それでもオルグがそれを蹴散らし、何とかロケットを守りきった。


 そんな事態が外では起こり、高まる緊張感の中数ヶ月が経った。


次回 「8 新たな艦長とアルフィングの正体」

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