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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 5
67/105

4 正式なパイロット

 首都の様子は別段変わった様子はなかったが、ジ・アーク数名は思うところがある感じだった。そんな中、コノエはルーグ次官の所に向かう。

 それから、本当にささやかなパーティを催され、ジ・アークの人達を労ってくれた。あんまり怪しみたくはないけれど、あのパーツ大臣の態度がね……それと、彼が一応の国のトップということになっている。国王がいないから、国民が決めた代表が大臣となって、国政を取りまとめるそうだ。


 そうなると、カッパーリグンドに近い気はする。と言っても、どちらも何かの隠していそうな雰囲気だけど。


「ふぅ。食べた食べた。コノエは、今日もこっち?」


 パーティもつつがなく終わり、用意された部屋へ向かう途中、コルクがお腹を擦りながら聞いてきた。

 家がある人はそこに帰っているみたいで、アルフとレイラ隊長、チャオもその家に帰っている。コルクの家は別の街らしくて、ここでは僕と一緒に軍の施設で寝泊まりしている。


「うん。僕には家がないからね」


「あっ、そっか。ごめんなさい」


「いや、いいよ。それと、ルーグ次官にも呼ばれているから、ちょっと行ってくる」


「あらそう。それじゃまた明日ね」


「うん、また明日」


 そうコルクに伝え、僕はルーグ次官の部屋へと向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 教えられたルーグ次官の部屋の前に着いた僕は、少し緊張しながら扉をノックする。


「どうぞ」


「あ、失礼します。えっと、コノエです」


「やぁ、お疲れ様」


 そこには、ちょっと大きめの机の前に立つルーグ次官と、もう一人女性の姿があった。

 僕と同じ狐の尻尾と耳をしている。違うのは、毛色が薄いブルーだ。髪の毛もまつげも、それに合わせて薄いブルーになっている。しかも凄く綺麗なロングヘアーで、空が靡いているみたいに見える。ただ、胸が全くない平らだ。そこはあんまり見ない方がいいね。透き通るような水色の瞳がこっちをギッと見ているよ。


「紹介するよ。本来のシナプスのパイロット、サーリャ=リグラー。君がシナプスを護送してくれたお陰で、無事に本来のパイロットに渡せる。君に紹介したかったのと、シナプスの引き継ぎをお願いしたいんだ」


「あ……」


 そっか。いや、そりゃ当然だよ。正式に任命された訳じゃないんだもん。緊急的な対応として、一時的に僕が使っていたんだ。


「あなた。もしかして、シナプスが自分の物だと勘違いしていましたか?」


「うっ」


「そんな訳ないでしょう。あなたの様な、訓練兵上がりが。思い上がらないで欲しいわね」


 ちょっと、この人かなり口調がキツイんだけど。いや、そりゃ軍の規則としては当たり前の事だし、仕方ないんだけど……何だかなぁ。


「サーリャ。君はパイロットの腕は良いけれど、そのコミュニケーション力の無さは何とかした方が良いと言ったんだけどな……」


「ルーグ次官。本当の事でしょう?」


「コノエ君は、ここまでの戦歴がある。何より、あの黒い凶星からシナプスを守ったり、ミルディアの猛虎と対等に戦った。更にはこの前、ミルディアの新型巨大機も撃墜している」


「…………」


「君の戦歴次第では、またコノエ君にシナプスを任せる事になる」


「なっ……!!」


「それはそうだろう。彼女は結果を出している。今の君以上にね」


 それ以上はちょっと……ほどほどにしておいた方が……めちゃくちゃ睨んでいるんだよ。サーリャさんが。その目はもう「こんな訓練兵上がりが?」って言いたそうだもん。


「私はね、君に期待している。だから、ちゃんと結果を見せて欲しい」


「はっ! 分かりました! 必ずや」


 ルーグ次官からそう言われ、彼女はビシッと敬礼し、自身に活を入れていた。その後またこっちを睨み付けてきたけどね。


「あなた、早くシナプスの所に案内してくれませんか?」


「え? 今から? もう、夜も遅くーー」


「私はあなたを越えないといけないのですよ」


「あ、はい……」


 この人、レイラ隊長と似た空気を感じるよ。こう、色々と厳しいというか、自分に厳しいなぁ……。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 それから、暗い夜道を歩いて、ジ・アークにやって来た僕達は、当直の人に事情を話して、艦の中に入れてもらった。


「ふ~ん。ここがジ・アークね」


「あ、閉鎖されている所もあるから、あんまりウロウロはしないで」


「分かったわ」


 その後はただ黙ったまま、格納庫に着いてしまった。何か喋りたかったけれど、空気がね……そんな和気あいあいとするような空気じゃなくて、ちょっと話しかけづらかったよ。


「これが……シナプス」


 シナプスに前に来た彼女は、機体を見上げてまじまじと見ている。動かし方は彼女の方が熟知していそうだし、今の武装とかを教えておいた方がいいかな。

 今度からは、彼女がこれに乗るんだからね。そうなると、僕は何に乗る事になるんだろう? いや、それよりも、ジ・アークにいられないかも。正式に命じられた訳じゃないからね。


「……あの腕に付いているのは? ロールアウト時の機体情報には無いけど」


「あ、あれはジュナクトで。海上基地のおっさん達が……あっ」


 そういえば、あの人達も結局は……僕達にあんなに好意的だったのに。それも、嘘だったのか?

 いいや、今またそんな事を考えていても、答えは出ているんだよ。事件として、ちゃんと……。


「シナプスって、中・遠距離じゃなかったかしら? 何で近距離武器を? ちょっと、システムも見せてくれる?」


「あ、うん。分かった」


 彼女、エリートっぽいんだよな。何というか、この機体はこうじゃないとダメって感じがしなくもない。柔軟性も必要だと思うけど、とにかく中を見せないと。


 そして僕は、コクピットに乗れるようにしてから、ハッチを開けた。


「…………」


 それから彼女は、シートに座ってひたすらシナプスのシステムOSを調べ始めた。


「なにこれ。何でこんな古びたOSなんか……いや、それよりも。動作システム関連が、近・中距離で合わせてる。何やってるの」


「いや、訓練校にあった武装だと、そうじゃないと動作がスムーズにいかないんだよ」


「あぁ……あそこにずっと隠されていたのよね。その時のOSのままなのね。まぁ、それは仕方ないわ。あなたは悪くないわね、たかが訓練兵上りだし」


 なんかその言い方は嫌味ったらしいな。ちょっとカチンときました。


「その状態で、黒い凶星も退けたし、ミルディアの猛虎も退けた。システムだけじゃないんだよ」


「そうね。だけど、適切なシステム調整をしていれば、倒すことも出来たわよ。あなたは退けただけ」


「…………」


 こういうタイプって、何を言ってもダメなんだよ。もうしょうがない。

 彼女の経歴を見ると、実践経験もあるんだ。それなら確かに、退けるだけじゃなく、倒すことも出来たのかもしれない。


「……うん、僕と同じ使い方をする訳じゃない。これ以上は平行線だ」


「その通りよ。もうだいたい分かったから、あとはじっくりと触らせて貰うわね。あなたはもう寝ておきなさい」


 そんな感じで、まるで邪魔だと言わんばかりに言うと、そこからはもう僕を見ることは無くなった。


 ただ、あることをしようとした時、直ぐに彼女は僕を呼んだ。


「ちょっと、同期出来ないわよ。あなた、何か同期ロックしてない?」


「えぇ……流石にそこまではしてないよ」


 どうやら、同期してシステムを改善しようとしたみたいだけれど、上手く同期出来なかったみたいだ。

 流石にあのドタバタした日々で、そこまでの事をしている暇はなかった。メンテナンスくらいだったから、あまりシステムは弄っていない。だから、さっきの彼女の発言があったんだけど。


「それと、何このシステム。DEEP? 禁じられているシステムじゃない。誰、こんなの入れたの! いや、違うわ。逆同期? 誰よ……こんな余計な事してるの」


 あぁ、そうか。DEEPシステム。それが引っ掛かっているのか。それを抜くのはどうしたら良いんだろう。

 詳しいのは……コート女医だ。その彼女は今、ここにはいない。


「それに詳しい人は、今ここには居ないよ。別の街に向かってるはず」


「何よそれ、話通ってなかったの? 早くその人も連れて来なさいよ。こんな危ないシステム、早く取らないと。全くもう……」


 サーリャは不満そうに呟いて、そのままシナプスを降りた。ついでと言わんばかりに、何かの紙を僕に押し付けてくる。


「いい? 明日までにはその人に連絡して、ここに連れて来て」


 そう言い捨てて、彼女はは格納庫から出て行った。


 これは、番号かな。あぁ、連れて来たらここに連絡しろってことか。

 シナプスの正式なパイロットとして、サーリャを紹介されたコノエは、1人複雑な思いでいた。


 モヤモヤした中、そのまま街を巡っているとチャオと出くわす。何やら急いでいるようで、コノエは彼女に着いていくことに。


次回 「5 スラムの惨状」

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