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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 4
63/105

14 今はただ戦う

 ジ・アークにとって大きな痛手となる。バーモント艦長の死は、艦内の人達の士気を下げるには十分だった。それでも皆、折れてたまるかの一心で動いていた。

 ジ・アーク内は、重苦しい空気になっていた。


 バーモント艦長が亡くなって、後任にとアルフィングを指名したが、そもそも彼自身が心の準備が出来ていない状態だったから、これからどうしたら良いのかが分からないでいた。と言っても、直前までの任務がまだ継続中だから、目下それを最優先する事になるのは、誰でも分かる。


 アルツェイトの首都へと向かう事。


 ただ、その先どうなるかは分からない。皆、バラバラになってしまうかもしれない。


 バーモント艦長の亡骸を前に、皆黙ったままだけれど、そもそも敵に襲撃されている最中なんだよ。


「アルフィング……艦長さん。あの、基地前方海中から、機体反応。アングラーのものかと。何か、通路の様なものから来ているようです」


 皆、無意識に自分の仕事をしていると、高性能多機能レーダーを見ていたツグミがそう報告をしてきた。


「……そうか。海中ということは、あの水門や壁は破壊されていない。水路を作り、そこからこの基地内に直接侵入してきたか」


「そんなの、他の国や組織に気付かれーーいや、そうか。レイドルド中将がアングラーを手下にしていたのなら、向こうからではなく、こちら側から水路を作り繋げていたのか……よくもまぁ、私達にバレずにそんな事を」


 なるほど。それがいつから行われていたかは分からないけれど、だいぶ時間をかけていたのは確かじゃないかな。バレないよう慎重にとなると、それなりの時間がかかるだろう。


「彼の意図は最早分からない。死をも辞さない覚悟だったのなら、この基地の奴等全員がそうだろう。国連からの依頼とはいえ、断る事も出来た。だけど、レイドルド中将達の意図も聞かずに承諾したのが、反旗を翻す直接の原因だったのかもな。正直かなりの痛手だが、この基地は廃棄する」


「アルフィング。それは流石に、パーツ大臣がーー」


「分かっている。分かっているさ。ただ、今の皆の士気と、敵側の士気を比べてみろ。圧倒的だろう。これ以上、いたずらに死者を増やす訳にもいかない。ジ・アークを失うわけにもいかない。そして何より……」


「私が殺される訳にもいかない。皆、すまない。私のせいで、このような事に」


 そうアルフィングが話していると、ミラルド氏が操舵室に入ってきた。確かにその通りだけれど、こういう事は皆、覚悟の上だったと思う。ただ、身内に裏切られたのが一番効いている。


「ところで、私は釣りが好きでね。獲物が大きいほど、より困難になる。それなら、良質の餌を用意しないと、向こうもかかってくれない」


「……なんの話だ?」


 本当に、突然何の話なんだと思うことを話してきたね。良く分からないんだけど。


「いや、なに。そちらの軍に、ルーグという方がいるだろう? 彼とは既知でね、アルツェイトについて良くない事を耳に挟んだのだよ。その事を亡命の意思と共に懸念点として話すと、こちらに亡命するのは良いが、アルツェイトも一枚岩じゃない。そっちが手に入れた情報通りの事になっている。危険ではある。それならいっそ、餌になってくれないか……と」


「…………おい、まさか。あいつ、何を考えて……!!」


 さっきの釣りの話って、そういうことか。


 ミラルド氏は、良質の餌。竿はおおかた、このジ・アークか。

 ミルディアじゃない、一番の敵が身内にいることを、そのルーグって人は知っていたんだ。だから、ミラルド氏が亡命したいというのなら、いっその事餌になって貰って、そいつらをつり上げて引きずり出そうとしたのか。


 引きずり出す所か、大当たりの大ヒットで、とんでもない騒動を起こされたけど、ルーグって人からすれば、これで思う存分叩く事が出来るって訳だ。ついでにアングラーの方も。いや、こっちも予測していたかは知らないけれど、とんでもない大物が釣れたのにはかわりない。


「ルーグへ問い詰めるのは、向こうに着いてからだな。今はとにかく、この基地から出港する。総員配置に。各々思うことはあるだろうが、今は軍人として動いてくれ」


 そうアルフィングが言うと、皆持ち場へとついた。その後、アルフィングは僕へと話しかけてくる。


「コノエ君。君にはジ・アーク発進まで、この艦を守ってくれ。コルク、チャオもな」


「了解です」


 僕がそういって敬礼すると、後の2人もそれに続いた。


「助かるよ。君のその姿勢に、皆もしっかりしないとって思っただろう」


「……僕は、皆ほどバーモント艦長との思い出はないし、付き合いも短い。だからって、何も感じていない訳じゃないけれど、託されたなら、動かないと」


「そうだな」


 するとアルフィングは、艦長席の机に置いてあった、バーモント艦長の被っていた帽子を取ると、それを目深に被る。


「総員。発進準備。出来るだけ早くしろよ。敵は待ってはくれないからな。コノエ達が粘る時間は、お前達の働き次第だ。動け!!」


 そして艦長席にある、艦内全体に声を伝える装置に向かって、アルフィングは大きな声でそう言った。

 その後から、ちょっとだけ艦内が賑やかになった。皆、折れてたまるかの一新で動いている。


 それを見た僕は、急いで格納庫へと向かった。


 ◇ ◇ ◇


 戦闘用のボディスーツに着替え、格納庫に着くと、もう皆色々と手際よく動いていて、シナプスと他2機も、いつでも起動出来るようにされていた。いつも以上に仕事が早いな。


 それに乗り込んだ僕達も、手際よく発進準備をする。


『聞こえますか、コノエさん』


「うん。大丈夫だよ、ツグミ。それじゃあ、行こうか」


『はい。お願いします。コノエさん達は、水中から襲撃してくるアングラーの撃退及び、この基地内の隊で、こちらへ攻撃してくる人達の撃退です。ジ・アーク発進まで守って下さい』


「了解。コルクもチャオも良い? というか、チャオは大丈夫? 基地の人達はーー」


『あいつらはもう敵じゃ。やってやる』


 あぁ、いつもの女帝モードか。無理矢理感もあるけれど、彼女も軍の在籍は長い。それなら、僕からあれこれ言うのは野暮だよね。


「分かった。コノエ=イーリア。出ます!」


 そして、僕が一番最初に出撃し、ジ・アークの格納されている巨大な格納庫から飛び出した。


 その目の前に広がっていたのは、アングラー達の魚のような形をした機体の、そのヒレの部分からミサイルの様なものが発射し、海上基地を攻撃している光景だった。


『レイドルドとの約定はここまでだ! 奴が死ぬまでだからな! ここからは、我々が海上を支配する! 海を行く陸上の獣や人は排除する!!』


 う~わ。やっぱりこうなった。

 レイドルド中将は、それも折り込み済みだったのかな? だから、自分が死ぬまでの間という約束を作ったのか。そうすれば、こいつらはきっと自由に暴れだす。


 更に戦火は広がり、最早民主化とか言っていられなくなる。


「いたずらに戦火を広げて。それで泣くのは、いつでも国民の人達だ。なんでこんな事ばかり、人は続けるんだよ。もういい加減にしろよ。今の僕は、ちょっと怒っているよ」


 そう言って、僕は目の前のアングラーの機体に中口径のレーザーライフルを向け、機体中央に向けて撃ち、その機体を貫いた。そして、その機体は爆発して大破した。


 直前に脱出しているのは見えた。

 そうか、こんな時にようやく分かったんだけれど、パイロットや機体の動力部を狙わなければ、脱出する事は出来るんだった。そうしない人達もいるだろうけれど、その時はその時でまた考えたらいいか。


 今はとにかく、ジ・アークの発進まで守らないと!


「アングラーとか、そんなの関係ないよ。僕は僕で、僕の正義を貫かせて貰う!!」


 そう大声で言って、僕はアングラーの機体へと突撃する。


 これ以上相手の思うがままにはさせないために。

 このまま思いどおりにはさせない。コノエは、自分の出来ることをする為、ただビースト・ユニットに乗って戦う。


 一方ある場所で、密かに話し合う2人が居た。


次回 新章「1 談合」

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