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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 4
60/105

11 銃の重さ

 無事に軍事基地まで辿り着いたコノエ達は、首都へ向かう為の準備をしていた。

 荷支度も済ませ、僕達が基地の人達に色々と挨拶に回っている間、チャオとアルフィングはジ・アークに搭乗する為の手続きをしていた。


 それも滞りなく終わった所で、バーモント艦長に呼ばれて、この基地のトップであるレイドルド中将に挨拶をしに来た。


「やはり、本国からの指示通りに?」


「そうだな。仕方ないだろう。君が渋った所で、ジ・アークは変わらずアルツェイトの重要な戦艦だ」


 せっかくの挨拶なのに、何だかギスギスしているのは何故なんだ? 同じ軍の人同士でも、考えの違いで歪み合うことはあるだろうけれど、それにしてもだよ。


「バーモント艦長は、分かっていると思っていましたが……パーツ大臣の言う通りにするのですね」


「ミルディアに付け入られる訳にもいかんだろう。向こうも今は内部でごたごたしている。こちらも足並みが揃わないとなると、せっかくの好機を棒に振る。軍人なら、分かるだろう」


「私は軍人の前に、一人の人だ。本国を危険な目に合わす。カッパーリグンドからの亡命など、私は反対だった」


 いやぁ、空気悪いわぁ。もっとこう、キッチリとした礼とかをしてさ、なんか激励受けてと思ったら、何でこんな事に? バーモント艦長もそのつもりじゃなかったみたいだ、ばつの悪い顔をしている。


「いや、すまない。今更言ってもだな。貴殿らの活躍を祈っている。また何かあれば、いつでも力になる」


「……うむ。ここも重要な基地なのには違いない。緊急時には率先して向かわせて貰う」


 お互いに思う所はあるが、それでも同じ国内の軍人同士、最後はそう言葉を交わして握手をした。

 そして、僕達にも同じ様に激励の言葉を言ってくれた。一時はどうなるかと思ったけれど、何とか良い形で収まったみたいだ。


 僕達は翌日出発する事になり、その日は皆、早くに床に付いた。


 ◇ ◇ ◇


「ん~?」


 ぐっすりと寝ていた僕だったけれど、何だか変な時間に目が覚めてしまった。まだ真っ暗だ。


「……今何時?」


 ごそごそと布団の中から手を伸ばして、ベッドサイドの時計を持ってきた。


「朝の4時、過ぎ……ん~まだ寝れる。トイレ……」


 そこまでもよおしてはいないけれど、念のためと思って布団から出る。その時、遠くから人の声が聞こえてきた。同時に、銃声も。


「え? 何かが起きてる?」


 複数の足音も聞こえる。こっちに近づいている。

 一気に目が覚めてしまった僕は、隣のベッドで寝ているコルクとチャオを揺すり起こす。


「起きて、2人とも。何かおかしい」


「んにゅぅ……何よ。まだ早いでしょう」


「んぅ……ちょっと、夜這いするにはーー」


 チャオは何か変な事を言い出したな。額を軽く小突いて起こしておこう。


「っ……何するの? って、何この変な気配。というか、遠くから銃声? 何が起きてるの?」


「分からない。だから起こしたの」


 敵襲にしてはおかしいんだよ。だって、警報が鳴ってないんだもん。だけど、銃声は聞こえる。

 正確には、かなり小さな音に絞った、小銃みたいなものの音だね。サイレンサー付きかな? それくらい、僕達ケモナーの耳は良い方なんだよね。


 とにかく、僕達が警戒しながら服を早着替えすると、入り口まで近づいて行った。耳をすませようとした所で、僕達の部屋の扉が開いた。


「えっ? あ、えっと……あなた達は」


「シュカーエ隊の人達ね。3人もどうしたの? 敵襲?」


 その人達は武装していて、腰に小銃が見えた。そして、ライフル銃を手にしている。だけど、チャオがそう聞いた瞬間、その人達は僕達に向かって銃口を向けてきた。


「何をーー!!」


「君達に恨みはない。だが、処分させて貰う」


 まさか、この人達は僕達を裏切ってーーそう思った瞬間、横からその人達に向けて、誰かが銃撃をした。

 そのシュカーエ隊の人達3人は、バタバタと床に倒れ、そのまま頭から血を流して動かなくなった。


「え? 死んーー」


 目の前で、同じ軍に所属する、この基地の人達が死んだ。いったい誰がと思って、僕達はその場から動けず、だけど拳銃だけはしっかりと握り締めて、扉をキッと睨み付ける。


「無事か!? コノエ、コルク、チャオ!」


 すると、そこから姿を見せたのはレイラ隊長だった。ということは、この人達はレイラ隊長が?


「レイラ隊長……何で……」


 すると、レイラ隊長はライフル銃を構えたまま、僕達の部屋に入ってきた。


「クーデター……ではないか。あれだ、レイドルド中将が裏切ったのだろう。この基地にいる他の隊も、ジ・アークの艦員を殺していっている」


「レイドルド中将が……? 嘘でしょう? あの人が……」


「チャオ。君は薄々気付いていただろう? 彼の怪しい行動や思想をな」


 そう困惑するチャオに、レイラ隊長がそう言った。


 薄々気付いていた? それなら、何で僕達に言わなかったんだ。


「……こんな強行するようには見えなかった。たとえパーツ大臣を嫌っていても、こんな……仲間を殺してまでなんて……」


「自分の方が優秀と、そう思ったいたのだろう。どちらにせよ、ジ・アークの艦員は半数以上が艦に居る。あとは戦闘の出来る者達で、基地の奴等を警戒して貰っていたのさ」


 そんな事をしていたんだ。あんな、楽しそうに過ごしていながら、腹の探りあいをしていたんだ。

 そして今、同じ釜の飯を食った者同士で、殺し合っている。なんで……そんな、そんな事になるんだよ。


「今からジ・アークに向かい、直ぐに出港する。とはいえ、向こうは占拠されているかもしれない。だから、お前達もこれを使え」


 そう言われ、レイラ隊長から携帯型の小銃を渡された。拳銃じゃない、本当に戦争をするための武器。武装。それは僕にとってはずしりと重く感じ、とても冷たく感じた。


「これは……人の命を……」


「自分の目的を達成するための物だ。お前はここで死にたいのか?」


「そんな事は……」


「それなら使え。戦え。使い方は知っているだろう」


 それは知ってる。訓練所でやったよ。セーフティを解除すれば、もうこれは立派な武器だ。


 僕はこれから、同じ軍の人達を……。


「悩むならここでくたばれ。それが嫌なら戦え。単純な話だ。向こうはもう敵だ。同じ軍等関係ない。袂を別った敵だ!」


「行くわよ、コノエ。私は、あなたを失いたくない。だから、戦うわ。たとえ仲間だった人達でも、今はあなた達の方が大事なの」


 そう言ってくれたチャオの顔は、とても頼もしく見えた。


 何やってんだ、僕は。ここに来て、また悩んでる。そんな暇ない。分かってる。だけど、悩むんだ。これが正解だなんて思いたくない。それでも、ここで死にたくもない。だからーー


「ーー戦う。こんな馬鹿な事をする奴は、絶対に止めないと!」


 どれだけの人の命を奪ってしまっても、自分の目的の為に、自分が死にたくない為に。僕は、こいつの引き金を引いてやる。仲間だった人達でも、その銃を僕に向けるなら、撃ち抜くしかない。


「よし。前は私が行く。左右をコノエ、コルク。チャオは背後を頼む」


「分かったわ」


「了解」


 コルクもチャオも、眠たそうだった顔付きから緊張の表情に変わっている。


「そう言えば、アルフィングは? あの人の隊も……」


「出会ってみないと分からないが……多分大丈夫だろう。アルフィングが説得しているはずだ。合流出来たら良いが、寄り道は出来ない。真っ直ぐにジ・アークを目指す」


 暗い基地の中を、僕達はゆっくりと歩き出す。


「出来るだけ戦闘は避ける。銃はあっても、弾の補充は出来ない。敵と出会っても、撃ちながらその場を離脱。その後、別のルートからアプローチする。私達の誰かが銃弾に倒れても、捨て置けよ。良いな」


 レイラ隊長のその言葉は、僕の肩に重くのし掛かってきた。この小銃が更に重くなった様な気がする。


 それでも進まなければならないのなら、僕は進む。

 襲ってきたのは同じ軍の仲間だった人達。しかし、元から仲良くする気はなく、腹の探りあいをしていたようだ。このままでは、ジ・アークを取られてしまう。


 一方、ジ・アーク内でも騒動が起きていた。


次回「12 飛び交う思惑」

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