表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GALAXIES BEAST  作者: yukke
PROLOGUE
6/105

6 DEEP

シナプスを起動させ、何とか動かす事に成功したコノエは、戦闘の場から機体を離す為、外に飛び出たが、既にそこは敵部隊に占領されてしまっていた。がむしゃらに機体を動かし、逃げようとしたが、激しい戦闘の起こる場所に引きずられてしまった

 何とか敵機から逃れようと、必死に足掻いていたら、黒い機体のいるグラウンドに来てしまっていた。しかも、こっち見てる……。


 もう1体は訓練機。僕の乗っているのと同じ、狐型で、ヒト型になっている。

 獣型の時の顔じゃなく、変形の時に後ろに倒れて、内側から人のに近いフェイスが現れるんだ。その顔の部分は、横のラインが入っていて、赤く光っている。


 確か、訓練機に乗ると言っていたから、あっちには教官が……これは不味い。バレると色々と不味い。


「おい! そこの機体に乗っているのは誰だ! 何故動かした!」


 当然、レイラ教官から通信が入り、怒号が飛んできた。とりあえず黙って離れた方が良いな。そう思って動こうとしたら、僕の目の前に黒い機体が現れて、この機体を捕まえようとしてくる。


「起動している。となると、パイロットごと連れていかねばならないな。大人しくして貰おう」


「…………」


 無言で前方に飛び上がり、相手機から逃げるけどね。


「ほぉ。中々の機動力。完全に扱えているのか? さてさて……」


 あの黒い機体は、どうやら今回襲撃して来た隊の、隊長機みたいだ。そうなると、訓練兵である僕なんかじゃ、手も足も出ないだろう。


 それなのに、何でこんなに鼓動が高鳴るんだ? 血が頭に上るような……そんな興奮が、全身を巡っている。いったい、僕の身体はどうなって……。


「…………っ、ふぅ、ふぅ」


「うん? 慣れていないパイロットか? 訓練兵か。それなら、捕獲は容易いな」


「まさか……! お前か? コノエ!」


 しまった……息まで荒くなってしまって、隊長機の奴とレイラ教官に漏れてしまった。この通信は、相手から受け取るだけで、双方で送受信されるようにオート設定されているんだ。

 強制的にミュートには出来るけれど、その設定の仕方はまだ分からない……というか、そこまではまだ読み込めていないんだった。


 というか、さっきよりも鼓動が早くなってる。どうなってるんだ……。


『DEEP確認。性能向上設定起動。オーバーブースト開始。強制終了まで、あと5分』


「…………」


 何だこれ? 訳の分からない事が書かれているんだけど、いったいなにが……だけど、たぎる。血がたぎる。戦えって、僕の中の何かが叫んでいる。


 変なものが起動してしまっていて、残り5分でこの機体が強制終了されるなら、本当は起動したらいけないものだったんだ。


 だけど、起動したなら仕方ない。


 目の前の敵をーー


「潰すだけだ」


 実はこのユニットにも、相手機の背中に付いているような、ブーストユニットが付いている。普段は収納されるようにして、背中に隠されているけれど、この状態なら使えるようだ。


 普通のビースト・ユニットでは、そうそう取り付けられないこの装備。やっぱり、この機体は何か特別なのかな。


 そう考えながら、僕は両方のレバーを前に倒し、相手機の背後を取った。


「なに!?」


「逃がしてくれないなら、潰れろ!」


 そして瞬時にヒト型になり、手の甲に付いたダガーナイフで、相手機の背後から斬り付ける。


「させない! 悪いが、捕らえさせて貰う!」


 やっぱり早い。簡単に避けられた。

 この黒い機体、普通のハコ機と違って、色々な武装が付いている。背中のブーストユニットに、バズーカ砲。腰にはロングレンジライフルに、脚にも何か付いている。ミサイルポッドか何かかな。


 そんなゴテゴテした装備でも、スピードを出せるようにかは分からないけれど、あんな大きなブーストユニットを付けるなんて、どうかしている。


「そんな装備に、それだけのスピード。身体持つの?」


「持つのではない。持たせるのだ。私は兵士だからね!」


 むちゃくちゃだな、こいつ。

 凄いスピードで迫りながら、腰のライフルを手に持って、こっちに向かってビーム弾を撃ってくる。しかも、精確にこっちのコクピットを狙っている。このモードじゃなかったら、とっくに撃ち貫かれている。


 撃ちまくってくる相手のビーム弾を交わし、何とか近付こうと模索していると、通信機から怒鳴り声が飛んでくる。


「下がれ! コノエ! 何でそんなものにーー」


「ごめんなさい。始末書はいくらでも書きます。逃げた先が保管庫で……見つけてしまって。だけど、この状況を打開できるならと……!」


「その精神は褒めてやりたいが、相手が相手だ。下がれ! あいつと敵対したものは、私以外生きていない」


「…………」


 そして僕の横にやってきた教官が、もっと声を荒げて言ってくる。

 そんなにヤバい相手か。どっちにしても、あと3~4分しかない。


「次で、決めないと!」


「おい、聞け! コノエ! 上官命令だ!」


「おやおや。この場において、私と相対しようとした者は、等しく兵士であり、誇り高き戦士だ。戦士には敬愛を持って、死合うのみ! 上も下もないのだ! さぁ、来い! 獣の戦士よ!」


「ふぅぅぅ!! ぁぁああああ!!」


 鼓動が、生まれてから初めてじゃないかと言うほどに、早く早く大きく鳴っている。


 僕のこの状態に、真っ向から立ち向かってくるこいつが、同じように獣に見えてくる。それなら、どっちが強いか決めないと。


 気が付いたら、両レバーを強く押し、背中のブーストを使って走り出していた。ホバーしたような状態なのに、全くぶれずに相手を見据えている。


 レイラ教官の言葉も無視して、僕は向かって来た相手機の腕を落とそうと、ダガーナイフを突き付ける。

 相手機も、ビームサーベルを握り締めて振り下ろしてくる。


 ただ、相手機の方が上から斬り下ろして、僕は下から斬り上げている。普通なら、斬り下ろす方が早いし、威力も付く。

 それなのに、僕のこの状態は普通じゃないのか、感覚が研ぎ澄まされていて、この機体もそれに合わせてくる。つまり、普通の機体では出来ない事も、この状態では出来た。


「くっ!?」


 ダガーナイフで攻撃すると見せかけて、後ろ足に力を入れ、前足を下ろし、反時計回りに半回転して、尻尾で攻撃した。

 その尻尾には、表面を覆うようにして、赤くて薄いビームの膜を張っている。それは、大きなビームサーベルのような効果があって、相手を両断するにはわけない威力がある。


 相手機はそれに気付いて、咄嗟に僕から距離を取ったがーー


「ぐぅっ!! くっ……!」


 左腕を見事に斬り落とした。


「むぅ……まさか、そんな冷静に攻撃してくるとは……頭に血が上り、冷静ではないのかと思ったが……」


「ふぅ、ふぅ……普通、じゃないよ。だけど、頭だけはやけに冴えていてさ。無防備になっている所が見えたんだ」


「そうか……やれやれ、参ったな」


 その時、後ろからレイラ教官がやって来て、レーザーライフルを相手機に突き付けた。


「ふん。黒い凶星もここまでか。まさか、落ちこぼれの訓練兵にやられるとはな」


「何だと? そいつは、まだ訓練兵なのか!?」


 やけに驚かれたけれど、事実なんだよ。それなのに、僕はなんでここまで動けたんだ?

 それと、もう時間なのか、機体が急にヒューズの落ちたような音を響かせ、そのまま動かなくなった。同時に、さっきまでとうって変わって、鼓動も落ち着き、気分も冷静になっていく。


 よくよく考えたら、僕は何で戦おうとしたんだ。何とか相手機にダメージを与えられたから良かったけれど、僕がやられていたら……なんて思うと、急に恐怖心が沸いてきた。


「はぁ、はぁ……うぅ」


「なるほど……どうやら本当のようだ。何かドーピングをしたような状態か? それが切れたのか、今さら恐怖が出ているようだな。若いな」


 そう言ってくる相手の言葉には、まだ戦意が喪失したようには見えない。こいつはまだ、戦う気か。


「悪いが、お前はここまーー」


「そうはいかない。非常に気に食わないが、ここは撤退させて貰おう」


 相手の戦力を、予想以上に削っていたみたいだ。

 黒い機体のパイロットはそう言うと、脚部から大量の煙幕弾を放ち、辺り一面を真っ白い煙で包んでいった。


「くそっ!! こんな装備まで……!」


「本来、奇襲に使うものだが、こうやって撤退にも使えるのさ。気に入らないが、認めよう。私から生還した者は、これで2人になったか」


 そう言って、相手機はブーストを放ち、どこかに去って行ってしまった。


 とりあえず、この機体も奪われず、最悪の事態は避けられたって感じか。だけど、どれだけの人が亡くなったんだ……これが、戦争か。

戦闘を終え、自分の処遇はどうなるのかと不安に思っていたコノエだが、何故か巨大戦艦に乗せられ、艦長と面会をしていた。そこで自身の事を知らされ、今後について話される。


次回「7 戦艦ジ・アーク」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ