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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 4
50/105

1 生物の力を宿した者達

 ミルディアの騒動は、外では分かりづらい。

この国にとってそれが良い方に転がるか、それとも悪い方に転がるかは、この先のコノエ達の動き次第でもあった。


 そんなコノエ達は、ギルムの発言から色々な話をしていた。

 あれから更に時間が経ち、何とか立ち直った僕は、水上基地から出撃出来る範囲で、イナンアの撃破に勤しんでいた。

 やっぱり、パイロットは殺さないようにだけれど、自分の命と天秤にかけた時、ちゃんと自分の命を守れるようにしないといけない。それが例え、相手の命を奪う事でもね。


 数ヶ月はそんな事をしていたけれど、状況は一変した。


 ギルムという、ミルディア総督の息子さんが演説をし、核兵器を解禁すると言ってきた。


 核兵器、あったんだ……。


「ユグドルの悲劇?」


 その時に、ちょくちょく飛び出した言葉がこれだ。僕にはちょっと何の事か分からなかったから、コート女医に聞いてみた。


 するとどうやら、このユグドルに元々住んでいたのが、あの獣に近い人達、ビーストマンだったんだ。

 あの人達もケモナーだと思っていたけれど、この惑星の原住民だった。あのビーストマン達は、そういう理由で人を嫌っていたんだ。当たり前だろうね。


 それで、逃げ場の無いコロニーに核兵器を使われたのか。しかも、宇宙にはまだ何基か残っているそうだ。


 戦争の黒幕がそこに居るというなら、僕としても興味深い話なんだけれどーー


「下らん。ボンボン坊っちゃんの、父親への反逆という所か? あの国、内戦が起こりそうだな。逆にチャンスか?」


「いやぁ、イナンアもいるというのに、何を考えているのやら……しかし、これでこちらが有利にはなるだろう。コロニーの話は、まぁ自分の威厳を示す為なのか何なのか。ちょっと目的が分からないなぁ。適当な話をするにしても、古すぎるね」


 皆あんまり気にしていないし、真に受けてもいなかった。マジかぁ……。

 というかレイラ隊長なんて、飛んでもない蔑んだ言葉を言っていたよ。


 その前に、イナンアの基地を次々と攻撃していたりもしたけれど、ミルディアの目的が良く分からないのは事実だよ。


 核兵器か……使われたくはないな。それこそ、凄惨な事になっちゃう。それ以上の兵器もあり得るし。油断出来ない状況になっちゃった。


「我々としては、イナンアの本拠地を探し出し、これを制圧する事にある。その決定は変わらん……が、本国からはミルディアにも注視しろ、場合によっては即戦闘でも構わん。と、そう釘を打たれた」


 そこに、バーモント艦長がやって来て、ホールで雑談していた僕達にそう言ってきた。


「艦長。それはつまり……」


「そうだ。イナンアの拠点探し中にミルディアと遭遇したら、直ちに戦闘して撃破しろと、そう言ってきたのだ。いつもよりも、かなり強い意味合いで言ってきているような気がした」


 艦長の言葉に、アルフィングが神妙な顔で聞いたけれど、当然の答えが返ってきた。


 さて、どうするんだろうな。オルグは。


「想い人を心配している顔ね」


「ふやぁっ!? コルク!! いきなり尻尾触んないで!」


 いきなり尾てい骨辺りにゾワッとした感覚が来たから、何事かと思ったら、コルクが僕の尻尾をガシッと鷲掴みにしていたよ。いきなりは止めてくれるかな?


「耳も良いね。私の伴侶になるのなら、このくらいは当然ね」


 しまった。最近は忙しかったから、チャオの僕への求愛行動を忘れていたよ。耳をめちゃくちゃ触られてる。そこも敏感だから止めて欲しいな。


「2人とも、今そんな事している場合?!」


「そうは言っても、まだ出撃要請は無いし、この基地を狙うバカなんて、そうそう居ないわよ」


「絶対とは言わないんだ」


「そりゃね。だって、この星にはケモナーだけじゃなくて、色々と動物的な力を持った人達がいるからね~」


 それは初耳ですが、コルクさん? 聞いてないよ。


「コルク。僕はそれ初耳だけど」


「あら、嘘? 海とかに生息する動物の力を得た者が『アングラー』で、虫とかの力を得た者が『スピルナー』よ。そんなの常識よ」


 悪いけれど、そっちの常識をこっちはまだ理解していないんだってば。


「だから、僕は地球でーー」


「その地球にも居たって話よ」


 ーーそれも初耳だよ。5000万年って時は、相当長いんだなぁ……って、今また再認識しちゃったよ。


「ごめん。僕、もっと古い人間なんだ」


「いったいどれだけ昔の人間だったのよ。それはそれで興味あるわねぇ」


 そんな事を言ったら、コルクにもチャオにも興味深々な目で見られてしまった。これは、後で質問責めにあうな。


「お前達、あんまり憶測で物事を言うな」


 僕達が駄弁っているホールに、レイラ隊長がやって来て、そんな事を言ってきた。


「ケモナーとは違う生物の力を宿した者。そもそも、これらの施術を確定させたのは、Dr.G・Gという者だが、提唱したのは別の者だ。それこそ、間にどれだけの人物が関わっているか分からん。その真偽も定かではない。しかも、彼等の居る国々はここから何百キロと離れている。こんな所の戦争など、参加しようとはしないだろう」


 そう言うけれど、いきなり戦況が変化する事は、戦争では良くあることだから、決めつけるのはーー


「あぁ、そうだっけ? あの水門って、まだ閉じてるの?」


「当然だろう。コルク。つい先月も、水門が閉ざされている事は確認している」


「ビックホール・オーシャン。と呼ばれている場所だな。確かに、あそこの水門は閉じているままだ。中の奴等は出て来られない」


 また新たな地形の名前が出て来たよ。

 隊長が答えた後に、アルフィングが説明するようにやって来た。


 まぁ、また僕が何の事か分からない顔をしていたからかな? 説明ありがとうございます。というか、それで気になるのが。


「広いの? というか、閉じてるって……」


「あぁ、半径だけでも数百キロ。かなり巨大で丸い海だ。周りの陸地と島々の並びが、円の外側の様に囲っている為に、まるでそこだけ陸地をポッカリと抜かれた様になっている場所だ。アングラー達は、そこに住んでいる」


「へぇ……」


 それはそれで、空から見たら絶景っぽそうだね。


「あいつらは、この星の海洋権を全てこちらに譲渡しろと、そう言い出して来たんだ」


「えぇ?!」


 そんな事したら、漁業も難しくなるだろうし、海を渡るにもその人達の許可が必要になってくるだろうね。


 実質、世界の実権を握るような行為じゃん。


「そこで、あいつらの居る海洋の回りをグルっと囲うようにして、強固な水門と高い壁を設置したのだ。様々な犠牲を出したがね……」


「なるほど。その水門とかを開ける扉は……」


「1ヵ所だけだ」


 そこを見張っていれば、そいつらが出て来るのが一発で分かるのか。


「しかも、外側からしか開けられない。実質監禁というか、閉じ込めたというか。そうせざるを得なかったんだ」


「話し合いは?」


「現在も続いている」


 何というか、ややこしい事になっている星だな。


 ビーストマンが元々の原住民というのも驚いたけれど、そんな奴等も居るなんて。というかーー


「人間に、そんな生物の力を与えようなんて、どんなぶっ飛んだ科学者なんだよ……」


「提唱者の顔は知らないが、その名は有名だ」


「へぇ」


「スズハラ=トーコと言うらしい」


「……っ!?!?」


 何て? スズハラ、鈴原?! しかもその名前は……母さんーー


「いっ……つぅ!!!!」


「どうした、コノエ!」


 その名前を聞いた瞬間に、凄い頭痛に襲われた。あまりにもキツいから、思わずその場に座り込んでしまうくらい。


【どうしてですか!? 何故こんな事を!!】


【何故? 分からないのか? 適正があるからだ】


【だからってーー】


【そうしないと、この子は生きられない。未来に託すだけでは足りない。それでは、この子が死んでしまう】


【死に逆らうなんて……】


【人類がそれに逆らったらいけないのか? 必ず死なないといけないのか? 私はふざけるな(ノー)と言いたい】


【未来に何かあったら】


【そうならないようにするさ。私がね。愛する()()の為なら……この身を悪魔に売ろうとも、悪しき魔王になろうとも構わない】


「ーーエ……コノ……」


「コノエ!!!!」


「うわっはぁ!! あ? はぁ、はぁ……」


 何だか、良く分からない会話が頭に流れて……いや、思い出してしまって。いつも、両親が居る研究室をコッソリと覗いて、盗み聞きしていた時の?

 好奇心でちょくちょく覗いてはいたけれど、あの会話は母さんと助手さんのだったかな?


 そう考えていたら、皆が一切に僕の顔を覗き込んでいた。


「急にしゃがみこんで、視点が合わないものだから焦ったわよ!」


「あ、ごめん……コルク。心配してくれて」


「だ、誰が心配なんか……! あなたは戦力の1人よ! 居なくなられたら私の負担がねぇ!」


 この子のツンデレはまぁ良いとして、コート女医に聞かなきゃ。


「……コノエ、大丈夫なのか? 一応見て貰えよ」


「はい。分かりました。ちょっと、コート女医の所に……」


「あぁ、うん。うん?」


 あ、レイラ隊長も流石に気付いたみたい。というか、何で今まで皆は疑問に思わなかったのだろう。

 そういう機械でも使われてた? いや、そんな素振りは無かったけどなぁ。


「ちょっと待て。コート女医……スズハラ=トーコ……え? いやいや、偶々だろう」


「偶々だったら良いけどね、アルフ」


 とにかく、皆の目が点になって、頭がグルグルになっている間に聞きに行こう。これは聞いた方が早いよ。

 コート女医は、自分の母親かも知れない。


 その可能性が浮上し、コノエはコート女医の部屋へと向かった。そこで見たものは、想像通りのものと、そして忘れたいたもう1人の家族の事だった。


次話「2 僕の母さん」

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