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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 3
42/105

3 戦火に巻き込まれた街

隠れ家は既にもぬけの殻だった。見たことのない機体もあったようだが、迷彩のようなもので逃げられてしまった。しかし今度は、別の街が変な部隊に襲われていると通信が入る。コノエ達は急いでそちらへと向かった。

 水上基地に居たアルフィングにチャオとも合流し、襲撃されているというルールシーグの隣街に向かった僕達は、そこで悲惨な状態を目にしてしまった。


『くそっ。容赦無く皆殺しにする気か! イナンアは何を考えている!』


『ここは確か、各国に輸出している武器工場があったな。戦略的に要所ではあるだろうが……ここの武器はイナンアも使うはず。となると、占領する気だな』


 アルフィングの怒鳴り声に、レイラ隊長が冷静に返した。

 それぞれの国家の武器弾薬を削り、自分達の武器弾薬は安定させる。なるほど。そうなると占領するのが一番だね。


 燃え盛る街の中で、煤汚れたハコ機がレーザーマシンガンを撃ち放ち、街の人達を次々と殺している。


『この様子だと、工場の護衛についている傭兵もやられているか? とにかく各個撃破しつつ、街の住人の避難誘導! コルク、君は避難誘導優先だ。いいな』


『くっ、うっ……わ、私だって出来るわよ。戦える。もう、逃げない!』


 レイラ隊長が指示の後、またトラウマが出そうになっていたコルクに話しかけるけれど、彼女は僕達にそう返してきた。これは彼女の問題ではあるけれど、同じ仲間なんだ。無理はさせないようにしないと。


 とりあえず、近くに居たハコ機数体から、レイラ隊長とアルフィングがライフルを撃ち、戦闘不能にさせる。その後にトドメを刺して大破。それを繰り返していく。


『ちっ! アルツェイト国が。あの腐った国の犬どもが! 沈め!』


「おっと……!」


 それはいったいどういう事なんだろう。腐った国? アルツェイト国が? うん。今はそれよりも戦闘だね。


 ケモノ型で戦っているけれど、場合によってはヒト型の方が良いかもしれない。ただ、足元には気を付けないと、逃げている住人がいる。


 相手のマシンガンの射程圏から避けて、腕にあるレーザーブレードで、相手の足を斬って転倒させた僕は、続いて中口径のレーザーライフルで、相手の動力部を撃ち抜いた。爆発はするけれど、その直前に緊急脱出装置が作動するから、パイロットは助かる訳なんだ。レイラ隊長もアルフィングも、容赦なくコクピットを狙っているけどね。


 イナンアという組織的な纏まりをされているとは言え、ゲリラはゲリラだし、補給もままならないんだろうね。使いふるされた、ミルディアンのハコ機ばかりが目立つよ。その武装も一昔前の物らしくて、それよれも高性能な武装をインプットしたシミュレーターで、毎日のように訓練していたから、流石の僕でも難なく倒せるようになったよ。


『ぐぁっ!! くそぉ!!』


「ふぅ。あと何機?」


 数体の相手ハコ機を倒し、そこから更に縫うように走り抜け、その先のハコ機も足蹴で倒し、動力を撃ち抜いた僕は、辺りを見渡して戦況を確認する。

 チャオも次々と倒しているし、コルクもちょっと離れた崖の上から、新たな武装のスナイパーライフルで次々と倒している。


 ただ、それでもまだ数十機は居るね。


『ふはははは!! この女帝たる私に逆らえるとでもーー』


『チャオ。右』


『うぉっと!! 危ないではないか!!』


 本当に危なかったよ。コルクの指摘で、横からチャオの機体に斬りかかっていたハコ機を、何とかその爪で両断したけれど、ちょっと掠めていたよね。そのモード、多人数戦では不利そうかも。

 僕と一緒に訓練していて、弱点を補いつつあるけれど、あの変貌する性格がねぇ。


『それにしても、統率が取れているようで、若干乱れがあるな。何だこれは?』


 2~3体更に撃破した後、レイラ隊長がそう言った。


 だけど次の瞬間、そのレイラ隊長に向かって、1本の槍の様な物が飛んで来た。


『ん? くっ!?』


「レイラ隊長、大丈夫ですか!?」


『大丈夫だ! それより、何処からだ! コルク!』


『わ、分からない。何も無い所から放たれた!』


『なにぃ?!』


 尾でその槍の様の物を弾いたレイラ隊長は、崖の上からスコープで戦場を見ているコルクに話しかけるけれど、コルクは意外な答えを言ってきたね。


 何も無い所からだって? それってつまり……。


「かなり性能の良い迷彩? コルクがルールシーグの街で見たって言う、死神みたいな奴?」


『そうだとしたら厄介だね。仕方ない。レイラ、君は僕の後ろに。皆も、出来たら僕の後ろに居てくれないか。ちょっと広範囲を焼き尽くしてみよう』


 そう言うとアルフィングは、腕に付けたシールドを構え直し、縁を更に広げるように展開すると、そこから高熱が発生しているようにして、空間がユラユラと揺らめき始めた。


 広範囲って……街の人達がまだ避難中だよ。


「アルフ。まだ街の人達がーー」


『大丈夫だ。こっち方面に住人は居ない、逆方向に避難している。更に、私のこの盾は特別だ。だから大丈夫。どちらにせよ、もうこの辺りで生きている住民は居ない』


「あっ……」


 ゲリラ達に家ごと潰されている。あとは、逃げる最中にやられている。道にその住人達の無惨な亡骸が転がっていた。許される事じゃないよ。こんな事……。


『さ~て。姿を見せて貰おうかな、死神さん。ヒート・バーン!!』


 そうアルフィングが叫ぶと、展開した盾から強力な熱が放射される。そして、それが前方を一気に包み込むと、色んな物が燃えたり溶けたりし出した。

 スッゴい熱量だ……100℃とかそんなレベルじゃないだろう、これ。それを可能に出来る技術が、アルフィングの機体にはあるって事か。ただ、遺体は残してほしかったな。ちゃんと埋葬して上げたかった。


 そんな僕の考えでも読んだのか、アルフィングが僕に対して秘匿回線で話しかけてきた。


『安心するんだ。これは無機物の一部を熱するだけで、人間や生物は熱する事が出来ない。それが、遺体でもだ』


「えぇ……そんな事が可能なーー」


『可能な恒星がこの銀河で見つかっている。物凄く熱を発するのに、私達の体には何の影響も与えないという、変わった恒星がね。私のこの盾は、その恒星のエネルギーを利用させて貰っているのさ』


「なるほど。だけど、機体はその熱で爆発するだろうし……」


『そうだ。だから、かなり強力で使い勝手の良い武器となる訳だ』


 逃げ遅れた人達がいても、これなら大丈夫だって事か。それならそれで先に言っておいて欲しかったよ。無駄に心配してしまった。


 そんな話が終わると、アルフィングの熱線の範囲からギリギリ外れた所で、何かが歪んだ様な、そんな感じで空間がグニャリと変形した。


『あ~ぶないあぶない。やれやれ、どうなっているんですか? こんな事は聞いていませんよ。フィルド中尉。あ、元でしたね』


『ふん。兵器工場は押さえた。あとはそいつらだけだったが、予想外の武器を持っていたな。そのせいで、お前の機体の特殊迷彩の機能がやられたか』


『それと、武器も私の好みではない。もっとこう、パイロットだけを苦しませるようなーー』


『そんな特殊な武器は無いわ。全く。ゲルシド将軍に気に入られたから、一時的に雇っているだけだ。忘れるなよ!』


『こわいこわい。そんな女性はモテないですよ』


 迷彩を解いて現れたのは、ただの普通のハコ機だったけれど、付いている武装が少し特殊だった。

 槍の様な物は見えないから、何処かに収納している状態かな。あとは、先の尖った鋭利な武装がいくつかあるだけ。銃の様な物が無い。


 それと、その兵器工場があるであろう先から現れたのは、ハコ機じゃなくてもっととんでもない機体だった。


『私はとうに女を捨てている。私はモノノフだ!!』


 甲冑と兜を装着した、見た目は完全に侍のような格好をした機体。そしてそこから、女性の声が響いてきた。


 モノノフ……つまり武士ですか。それにしては、その武装がちょっとあり得ない。

 腰に2つの刀を携えているけれど、1つは普通のサイズの刀だ。だけど、もう1つは刀身が長い、野太刀と呼ばれる物だった。もしかして、それ2つ同時に使うんじゃないよね? 二刀流にしても、長さが違うとバランスも変わる。使いにくいと思うんだけど……。


 とにかく、敵主力機体が出た時点で、僕達の作戦内容も変わってしまう。勝てるかな……アレに。

武器工場を奪還する為、戦闘を始めたコノエ達。順調に倒していくが、主力と思われる2体の機体が立ち塞がった。その内の1体は新型のようで、しかも中の女性パイロットは、自分の事をモノノフと言ってくる。

普通の刀と野太刀を巧みにつかってくるが、コノエの知るものとは違っていた。古い映画記録から、武士の生き様に感銘を受けた彼女は、見よう見まねでその戦いを再現しようとしていたのだ。


次回 「4 モノノフ」

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