10 変形合体!!
遂に戦闘が開始され、ミルディアを迎え撃つコノエ達だったが、相手機の威力によって、ほぼ半数近くが撃破され、戦場が火の海と化してしまった。完全に相手に押されるなか、コノエ達に突破口はあるのか。
ミルディアの新機体によって、戦場は完全に相手のペースだ。ゲリラ兵達が突っ込んでも、あの機体差では手も足も出ていない。
「このっ!」
僕達は、襲って来るミルディアのハコ機を倒しているけれど、全く状況が良くならない。アルフの方も、オルグとガチ勝負しているし、そっちの決着が着かないと、こっちも動けない。それと、猛虎の方も気になる。
オルグがいる以上、猛虎もいるはずなんだ。今は見えないけれど、どこかにいるはずだ。
『そこの狐ちゃん~♪ ケモナーでしょ? さっき、ギャルって言っていなかった? もしかして、ギャル語分かるのぉ?』
そんな時、相手の新型機の、戦車みたいな方が僕の方にやって来て、興奮気味で聞いてきた。
ギャル語って、その言い方はなんだろうな、太古に使われなくなった、古代の言語のような言い方だな。
そりゃ5000万年経っているし、ギャルというのが存在しなくなっているなら、その言葉も消えていくか。若い子達の言葉遣いも、今の地球がどうなっているか分からない以上、知りようもないしな。
ただ、この星でも若い子達はいるだろうし、そっちで独自の流行語とかないのかな?
「あのさ、そっちにも若い子達はいるでしょう? そういう子達が使っているようなやつだよ」
『マジで?! ニャンザァルとかそういうのと同じなの?!』
「ごめん! そっちの方が分かんない!」
今のはそっちの流行語か?! よく分からないわ。
とにかく、相手は敵なんだから、こんな風に話している場合じゃない。ロングレンジライフルをこっちに向けているしね。
『もっと教えてよ~!』
「今戦闘中だし、殺し合いの最中だろ!」
『え~? 殺し合い? そうなの? ドキドキ出来ればなぁんでも良いじゃんね~♪』
「はっ?」
え、なんだこの子。感情が飛んでいるというか、今の発言は普通じゃないぞ。
『それじゃあ、君に勝てば教えてくれる?』
「いや、勝つってのは僕を殺すって事じゃ」
『あ~そだね~それじゃ良いや~殺しちゃえ~!』
「はっ?!」
そう言った瞬間、相手がその長いライフルの銃口を横に振り抜き、僕の機体の横っ面を殴りにかかってきた。とっさに飛び退いたけれど、何て使い方をするんだろう。
「結局こうなるんだよね。うわっ!! もう、危ないなぁ!」
上にも新機体の戦闘機みたいな奴がいるし、そいつが先に攻撃を仕掛けてきたよ。対地ミサイルが着弾して、地面を抉るような爆発が起こった。
「チャオ! 協力して、このデカブツ倒すよ!」
『それは良いが、どうやってじゃ!?』
チャオの方も、一応空中機雷を展開してくれている。ただ、バレバレだから敵が近付かないだけになってるよ。
『くらえ!』
それでも、相手のハコ機の兵も手練れだから、機雷の隙間を縫って、こちらに攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!!」
それを、レーザーライフルで足と腕を狙い、貫通させて行動不能にさせ、また次の敵を狙う。
『それそれ~♪』
何てしていたら、相手のデカい戦車のやつに狙われてしまう。それを避けても、空から、更に後ろのデカいやつからも攻撃が飛んでくる。
『八方塞がりも、ここまで来るとじゃなぁ。どうするんじゃ?』
「うぅ、ジュナクトのタイミング次第では突破出来るけど、タイミングがなぁ!」
そればかりは経験だ。僕にはまだそれがない。だから、誰かに指示されないと。
『それならコノエ。戦車タイプの向こうの奴を狙って、ジュナクトを打て。あいつを狙うのが一番だ』
「えっ? あ~なるほど!」
オルグと戦いながらも、こっちを見ていたとは。戦闘経験値なら、アルフもオルグと並ぶくらいに凄い。
そうか。確かに後ろのデカい奴は、腕から熱線撃ってるだけで、動きが遅い。ゲリラ兵やラリ国の兵も気付いていて、あいつを狙っているけれど、だいたい上を飛ぶ戦闘機タイプの奴が補助して、狙ってくる奴を落としているだけだ。
それなら、これを使って一気に詰めて、あいつだけでも仕留めたら、だいぶ戦局が変わりそうだ。
「よ~し」
『補助してやる。外すなよ』
ミルディアのハコ機の攻撃を避けながら、向かい撃ちながら、僕はジュナクトを機動させ、狙いを付ける。
『こいつ、何かする気だ!』
『止めろ!!』
「うおっと!!」
流石に気付くか、ビームライフルで撃ってくる撃ってくる。ただ、それは何とか避けているし、チャオの展開している機雷に当たって、そこで先に爆発して霧散しているんだよ。意外とこの機雷って、そんな使い方も出来たんだ。
『我の旦那に手を出すな!』
『うわぁぁ!』
『あぎゃっ!!』
それと後は、鉄球と爪の攻撃で敵をぺしゃんこに押し潰していた。怖いな、このモードのチャオは。
もう旦那とかさ、色々と突っ込みたいのは後にしよう。
「よし、見えた! そこだ!!」
そんな事をしている内に、何とか敵の隙を突き、ジュナクトを発射させ、戦車みたいなやつの上空を抜き、その後ろのデカいやつ目掛けて飛ばした。
『ん? なるほど。これは珍しい武器だが、流石に当たらないぞ』
だいぶ勢いを付けたつもりが、相手に躱されてしまって、後ろの建物に刺さってしまった。が、それはそれで問題ない。
『なにっ!?』
『おぉぉ~! なにそれ~!? マジヤバじゃん~!!』
巻き取って自分の機体を引っ張り、一気に突っ込むだけだ。
『マズい! 近付かれ過ぎた! こっちの補佐も出来ねぇ!』
『こっちも、マジやばたにえん! 攻撃しても、ジェドルに当たる~』
その通り。このまま相手の腕の片方を落としてしまえば、あとはどうとでもなりそうだよ。だから僕は、腕のブレードを展開し、逆刃にした状態で斬り込むけれど、ここからあり得ない展開になった。
『それなら。来い、ルド!』
『ちっ、しゃぁねぇな!』
何と、空を飛んでいた戦闘機のような機体の方が、デカい機体の方へと飛んで来て、いきなりその形を変えてきた。
まるで、骨組みのような形で開いていき、外側を囲うようにしてピッタリと組み合っていく。
おいおい、まさかだけどこの機体。合体出来るのか!?
『レジェンダーとジェッターの合体により、俺のレジェンダーは空を飛ぶ!』
「げっ!?」
空を飛んでいた、その戦闘機のような機体の翼を、レジェンダーとかいうデカい機体の方に、合体して引っ付けたのか。それで空陸両用にするなんて。
空を飛ばれてしまって、僕の機体はそのまま目の前の建物に突っ込んでしまった。
『はいは~い! ついでに私も~! アゲアゲレボリューションでいくよぉ!!』
えっ、嫌な予感。と思っていたら、戦車のような機体の奴も、骨組みのように開けていき、空を飛ぶレジェンダーとかいうやつの、更に外側を囲うように合体した。
さっきのジェッターとかいうのが、腰から下に引っ付き、翼をその辺りに展開させ、戦車のやつ、確かレダークとかいうのが、腰から上に引っ付いて、ロングレンジライフルを肩に取り付けた。
もう、これはあれだ。4人乗りから5人乗りの、合体巨大ロボの流れだ!
『これが俺達の、変形合体戦闘機人、Z・O・X!! ここからは、ただの殺戮ショーとなるぞ! 覚悟しろ!!』
やっべぇ。あっちの方が主人公っぽい。なんて思っている場合じゃない。
『おい、オルグとやら。あのイカれているぶっ飛んだ機体はなんだ!?』
この展開に、流石のアルフもちょっと慌てている。
『ふふ。騎士の君を慌てさせる事が出来たのだから、それだけでも収穫だな。あれは、ガンマ社の新機体だ』
『ガンマ社だと! お前、それは大丈夫なのか?』
『言いたい事は分かるが、命令だからな。それに、戦局はもはや決した。ゲリラの大半はあの機体にやられ、ラリ国の機体も手をこまねている。さて、君達はどうするんだ? 義理立てはまだなのかな?』
『くっ』
う~ん。確かにもう、戦局は決まってしまっているように見える。ただ、この橋を取られる訳にはいかないんだ。それと、まだ戦闘を諦めていない奴がいたよ。
ジュナクトによる作戦が失敗して、相手の合体中に建物に激突した僕は、その建物の屋根に移ったんだけど、その時に、合体した機体の足元を、黒い影が横切ったんだ。
あいつだ。
真っ黒のライオン。獣人、ビーストマンと呼ばれていた、あの男だ。
コノエのジュナクトにより、事態は好転するかと思いきや、大きな相手機はまさかの合体をして、更にとんでもない攻撃を仕掛けてきた。
ラリ国の軍も、イナンアのゲリラ部隊もほぼ壊滅。そんな中、ビースドットの黒いライオンの機体が、相手機に接近していた。
次回 「11 異常なパイロット」




