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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 2
31/105

8 落とし前

コノエ達に本国から来た指示は、メールコンを占拠した部隊と合流し、ミルディアを迎え撃てというものだった。

先に手を出され、こちらの部隊を壊滅させられた以上、そんな勝手が通るものかと、アルフィングと共に、コノエは相手国との話し合いの場につくことにした。

 メールコン大海橋の上にある街。僕達は今その中の、ある建物の中に来ている。

 話し合いに応じる準備として、僕は渡された服に着替える。チャオもいつものチャイナ服に着替えて、ラフな格好になったアルフと共にやって来た。もちろん、いつ襲われてもいいように武器は隠し持って、だけど。武器のチェックをされたらどうするんだって話だ。


 しかし、街の方は特に混乱もなく、皆穏やかに過ごしていたな。とても戦いが起こったとは思えない。むしろ、日常茶飯事なのかな。


 建物の前では、ゲリラ兵がアサルト銃を構えていたけれど、特に僕達に警戒なく、鼻で笑うような感じだったけれども、入れと言って通された。


「ここまでは順調か。さて、何が出るやら。2人とも、俺から離れるなよ」


「はいはい」


「分かってるわ。コノエにしっかりと引っ付いておく」


 チャオの安定の発言には反応しないでおくよ。緊張はしているけれど、無駄に緊張しても良くないって事なんだろうな。


 そして階段の前にいたゲリラ兵から、ここを上がるように言われ、扉の前にまたゲリラ兵が居て、入るようにジェスチャーされる。


 いよいよ、この中にゲリラ兵のトップか、それに連なる者が出てくる。いったいどんな奴なのか、しっかり拝んでやらないと。


 アルフが扉を開け、先に入る。それに、僕達も続く。


「やぁ。ようこそ」


 広めの部屋に入るとそこには中年の男性が立ち、柔和な笑みを浮かべていた。見た感じ戦場に出るようなタイプじゃなさそうだ。優しそうな顔付きに、年季の入った軍服を着ているよ。という事は、ラリ国側の人か。その紋章も入ってるし、間違いない。


 それじゃあ、その後ろの獣はなんだ?


 真っ黒なたてがみで、ライオンのようだ。いや、黒いライオンだよ。それなのに、立っていて腕組みをしている。まるで人間、獣人って言ったらいいのかな? そんな感じだ。いったい、何者なんだよ。


「……なるほど。合点がいった。何故、ラリ国とゲリラ兵がメールコンを占拠出来たのか。ビースドットの兵がいたのか」


「流石は知っているか。彼はゴルドバン。ビースドットの兵だ。そして私は、ラリ国の国軍大佐カッツァー=ノイルだ。よろしく」


 そう言って、カッツァー大佐はアルフに向かって握手を求めてきた。それを、アルフは冷静に受けた。


「どうも。アルツェイトの自衛軍、アルフィング=ヤーバインだ」


 アルツェイトは軍というより、その前に自衛が付く。それは聞かされていたよ、専守防衛が基本だというのも。だから今までも、こちらから仕掛けた事はない。今回のも、先に向こうから仕掛けてきていたから、奪還に動いただけだ。自衛の為に。


 そして、カッツァー大佐が席に案内すると、アルフはそこに静かに座る。ちなみに、結構大きな円卓のような机だったから、僕達もアルフの横に座った。

 あの黒いライオンみたいな人は、カッツァー大佐の後ろに付いて、座らなかったよ。ただ、僕を睨み付けながら鼻をヒクヒクさせているから、ちょっと怖いな。


「……深い、獣の血の匂い。DEEPの力」


「ほぉ、そちらの狐のお嬢さんは、DEEP所有者か。なるほど、警戒はしているということか」


 早速バレた!!


 何て鼻の良さだよ。それがあいつらの力? より獣に近いケモナーか何かなのか? どちらにしても、僕の事が速攻でバレたよ。いったいどうするんだよ? と、アルフを見たけれど、アルフは一切表情を変えずに切り返した。


「いやはや、流石はビースドットの獣人。いや、ビーストマンでしたね。しかし、先に手を出されたのは我々の方だ。警戒の1つや2つ、しても当然でしょう? それに、こちらの隊もやられている。その落とし前についても、聞かなければならないからね」


「確かにその通りだ。いや、すまなかった。とはいかないだろうから、準備はさせた。そこの窓から見えるかい?」


 カッツァー大佐は、窓の方を見るよう言ってくる。外に何があるんだ? と思っていたら、その先には倉庫みたいなものがあって、その中でゲリラ兵達が騒いでいた。


「あれが何か?」


「少し待て」


 すると、カッツァー大佐が指を鳴らし、更にこの部屋に誰かを呼んできた。

 しばらくして入ってきたのは、バンダナを巻いた年老いた男性。だけど、その目は鋭く、射殺されそうな眼力があった。こいつもまた何者だよ。


「なっ、まさか。ラリ国から追い出された、元国軍総司令、ゲルシド?! イナンアのゲリラ兵は、まさか!」


「いや。あれはただ、たむろっていたのを私が纏めただけに過ぎん。その思想の下、好きにさせているだけで、私がトップというわけではない。否、トップはいないというべきだな。だから、これも問題はない」


 その人がそう言うと、カッツァー大佐が通信機を取り出し、そこに向けて何かを指示した。


「やれ」


 その瞬間、ゲリラ兵がいた倉庫が爆発した。中にいた人達ごと。


「なっ!!!!」


 あまりの展開に、僕の方が追い付けず、思わず席を立って叫んでしまった。

 しかし、アルフにとってはこれも当たり前の世界なのか、訝しむ顔をしながら、カッツァー大佐に話しかけた。


「あれが、落とし前を付けるということか?」


「その通りだ。事前に知らせず、そちらの隊を壊滅させたのはすまなかった。友好国ではあるまじき事だ。私はそう指示をしなかったが、ゲリラ兵は一枚岩ではないため、彼の指示もあいつらには届かなかったようだ。よって、そちらの隊を壊滅させてしまった。あの倉庫に居たのは、その時の隊の奴等だ。これで、落とし前とさせてくれないか?」


 アッサリと人を殺しながら。まるで、人の命すらも交渉の材料みたいになっているじゃないか。

 そんなので、殺された人達が浮かばれる訳ではないのに。いや、分からないけれど、そういうものなのか? でも、やっぱり異常だ。


「落ち着いて、コノエ。こういう交渉って、そう良くある事でもないから」


 そっか。そりゃそうだよな。ただ、そんな事を平気で仕掛けてくるのは、人として何かが壊れている。


「納得されないか? だが、ここで私達に協力し、ミルディアを退ければ、このメールコンは我々のものになる。そうなると、より円滑な貿易と、関税等の軽減も可能になるが?」


「そりゃ、本当にそうなればな。ミルディアは、舐めない方が良い」


「それはこちらもそう思っているさ。何せ、あのミルディアだ。油断はしない」


「その割には、兵力をアッサリと削ったが?」


「その分、君達が活躍してくれると助かる」


 こりゃダメだ。平行線だぞ。何か策があるのかと、ボロを出させようとしても出てこない。

 あのゲリラ兵を纏めているという男性が来てから、この部屋の空気がガラッと変わった。完全に、相手のペースだ。あと、黒いライオンの方はずっと僕を睨んでいるんだけど。


「分かった。一旦こちらが折れよう。……つっても、俺達は基地から派遣されただけで、現場の判断に任せると言われているだけだ。これがアルツェイトの総意だとは、思わないでくれ。そして分かっていると思うが、専守防衛の国ということも、重ねて言っておく」


 そう言うと、アルフは僕達に目配せをし、一旦ここから退出する、と伝えて来た。確かに、色々と分が悪い。ここまでぶっ飛んでいる奴等だとは思わなかったよ。


 僕達は席を立ち、そのまま部屋を出ようとする。


「あぁ、それはしっかりと分かっている。君達が八方美人なのも、何もかもね。そちらこそ、余計な事はしないように。くれぐれもあの巨大な戦艦を、こちらに動かさないようにな。基地に置いたまま、動かすな。ずっとだ」


「それはまた、別の問題だ。俺達の更に上に、話してくれねぇか?」


 アークの事まで知っていたか。あんな巨大な戦艦だ。そりゃ当然だな。変な攻防が見えたけれど、相手もそれ以上は無理だと分かり、僕達を部屋から退出させてくれた。


 そして部屋を出た瞬間、どっと疲れが襲ってきたよ。まだ街を出ていないから、気を抜いたらダメなんだけど、あの黒いライオンにずっと睨まれていたんだから、気疲れだってするよ。


 なんであいつは、ずっと僕を睨んでいたんだよ。

落とし前はつけられた。とはいえは、完全に納得出来るものではない。ここから先は、国の上同士の話し合い次第だろう。

今は、共通の敵とされたミルディアを迎え撃つのが、最善の策でしかなった。


しかし、ミルディア側は飛んでもない機体を用意し、こちらに牙を向いてくる。


次回 「9 ミルディアの新機体」

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