表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 2
26/105

3 機転は予想外で

思いがけないチャオの変貌に、場を制せられてしまったコノエは、この状況を打開するため、DEEPを発動して動き出した。

 空中機雷を展開され、距離を取ってもビームバズーカと鉄球の餌食、近付いてもあり得ない動きと、太い両腕の超パワーで叩き潰される。近距離パワータイプタイプなのに、ちゃんと機体の特性を生かして、弱点を埋めている。


 だから僕も、新たなシナプスの武装で、突破してやる。


「先ずは機雷を」


 DEEPを発動していると、自分の通れる隙間が見えてくる。そこを縫うように移動し、肩に収納されている大型バルカン砲を展開し、片っ端から撃って爆破させる!


『ほぉ。しかし、機雷はまだまだ出せるぞ。そんなのではキリがない。それとも、そうやって近付くのか? 見えとるぞ。そこ!』


「おぉわっと!!」


 こっちの進行方向に、ビームバズーカを撃ち込んでこられた。経験と予測で、的確に僕の進行する方を読まれたのか。それなら、狐の俊敏さを体現しているこの機体の動きで!


『ほぉほぉ。俊敏に動きながら隙間を縫って、機雷を爆破。悪くないが、予測可能じゃ。右や左に跳んだ所で、可愛く跳び跳ねているだけじゃ。ほれ、そこ!』


「あわわわ!!!!」


 更に先読みされて、移動する前に既に撃ち込まれているし。そうなると、爆破する先に僕が飛び込む形になるから、余計に身動きが取れなくなる。

 ただまぁ、そうやってバンバン撃ってくれた方が、戦場を変える時間が縮まる。


『……あ~いかん。なるほど~考えたの。機雷の爆破時の煙と、こちらのビームバズーカの着弾時の土煙で、お主の姿が分かりにくくなっとる』


 そう。これなら、僕がどこに居るのかなんてーー


『そこじゃな』


「なぁんで分かるんだぁ!!」


 今は完全に姿を煙の中に隠して、コッソリと移動していたのに。めちゃくちゃ的確に鉄球を放り投げて来たよ!


『ほれほれ、そんなに機雷が嫌なら次々と片付けてやろう』


「ぎゃぁあああ!!!!」


 鉄球を振り回して、機雷を片っ端から爆破してきた!

 そうか。確かに、その方法もあった。僕は既に、機雷に囲まれているんだから、爆破して連鎖させていけば、確実に仕留められる。機雷に囲まれた瞬間には詰んでたんだ。


 ただまぁーー


『あん? 悲鳴の割には手応えがあるようには……なぬっ?!』


 機転って言うのは、自分の予想外の事から起きたりするんだよね。悲鳴は、機雷を受けた悲鳴じゃないんです。ごめんなさい。


 背中のランスバンカーとやらを、チャオの真上の岩目掛けて撃って、それを落としてやろうと思ったら、深く刺さっちゃってさ。しかも、抜こうとしたら間違えて、巻き取りのボタンを押しちゃったんだよ。


 よって、機体ごと高く浮き上がってしまって、チャオの真上にやって来ちゃいました。


『ほほぉ!? これはこれは、意外な事を! しかし、そこからどうするんじゃ!? 両腕とこの爪の餌食じゃぞ!』


「ぐぬぬぬぬ! それはこう、ヒト型に変形して引っこ抜いて、上から叩き切る!!」


 カッコ悪い宙吊りにされるより、颯爽と飛び降りて攻撃に転換した方が、奇襲っぽいよね。ってな訳で、ヒト型に変形して、腕に付いた電磁ブレードを展開し、手に持ち直して切りつけてみたけれど、爪であっさりと受け止められてしまったよ。


『で、ここからどうするんじゃ? この周りにはまた機雷を張り巡らせたし、鉄球も戻している。最早、完膚なきまでにーー』


「ところがどっこいなんだよ!」


 こっちは完全にゼロ距離。そうなると、この武装は最大の威力を発揮する!


『うん? あっ、しまった! 詰められたらいかんのじゃった! お主にはそれがある!』


「そう。尻尾のショットガンがね!」


 そして僕は、ショットガンを上から発射し、相手を地面に叩き付けた。


『ぐぬぅぅ!! 何て高威力……! しかし、まだ体勢を立て直せば!』


「させないっての!!」


 相手からほんの少し離れ、機雷に当たらないようにしながら、腰に巻き戻したジュナクトを、再度射出した。


『ぐぉっ!! しまっーー!!』


 それで相手のお腹を貫き、僕とチャオの機体をロープで繋いだ。となると、あとはもうこっちのもの。


 僕の、勝ちだ。


「そぉぉれぇぇい!!!!」


『にょぉわぁぁぁあ!!!!』


 繋いだ相手の機体を、両腕でしっかりと持ちながら引っ張って回し、遠心力を付けていき、グルグルと周りの機雷に当てながら振り回していく。


 機雷が全て爆破したら、あとはトドメに前方の岩に放り投げる!


『ぎゃわっ!?!?』


 流石にここまでしたらーー


『相手機体の行動不能を確認! 勝者、コノエ!』


「やったぁああ!!」


 どんな相手でも行動不能になるね。


 やった、勝てたよ。あの状況から何とか勝てた! まぁ、予定していた勝ち方とは違うんだけどね。予定では、頭上の岩を落として怯んだ隙に、距離を詰めてもう一度ジュナクトで、って思ったんだけど、まさかあんなに深く突き刺さるとは。予想外の威力だったよ。


『コノエが勝った!?』

『嘘だろう! 昼飯代がぁ!!』

『よっしゃぁ! 良くやったコノエちゃん!』


 だから、賭けてんじゃねぇよ。

 昼ご飯抜きは、相応の罰だ。勝った奴からも、何か頂かないとね。


 それはそうと、チャオの方が静かだ。ちょっとやり過ぎーー


『キュゥ……ウップ。ま、回され過ぎて、は、吐く。オロロロロ』


「わぁ!! 大丈夫!? チャオ! ちょっと皆、チャオを助けて上げて!」


 物凄くやり過ぎてしまった!

 慌ててシミュレーションから出て、急いでチャオの方に向かうけれど、皆ちょっと中に入るのをたじろいでいた。


 あぁ、うん。中が吐瀉物まみれだ。やらかした。だから、これはしょうがないんだ。助けて上げないと。僕のせいなんだから。


「コ、コノエ!? 君がしなくても!」

「うわっ、吐瀉物にまみれながらも、介抱して。女神だ……」


 いや、あの。自分のせいなんで。あぁ、こっちも吐きそう。ウップ……。


 ◇ ◇ ◇


「……うぅ~ん。はっ! あ、あれ? 私?」


 医務室に運び、しばらく様子を見ていたけれど、真っ青な顔から血の気が戻って、ようやく目を覚ましたよ。あぁ、良かった。


「チャオ、大丈夫? ごめんなさい。やり過ぎちゃった」


「あっ、そっか。私、負けたのね。ふん、まぁ良いわ。あんな機転に対抗するのは、ちょっと厳しかったわ。お陰で、尻尾のショットガンを失念しちゃったわ」


 元に戻ってる。この人、あんまり機体に乗せない方が良いんじゃないかなって思ってしまうな。


「言いたい事は分かってるわよ。機体に乗る度に、あんな性格になってちゃ、仲間との連携なんて取れないわよ」


「あ~」


 だから乗るのを嫌がっていたのか。そうなると、実践経験はあるんだろうけれど、部隊としては動けないから、基本的にこの基地の防衛の方に回っている感じだね。


 だけど、このままだとこの人の力を活用出来ないだろうし、う~ん。良いことはあると思うんだよ。


「でも、カッコ良かったし、何より敵に圧をかけられて、戦闘を有利に持っていけそうだけどね」


「……ほ、本当?」


 三角座りをしながら、チャオは少し照れ臭そうしながら聞いてきた。

 あれ? この子もしかして、褒められ慣れてない? やり過ぎたらマズいな。


「そういえば。私の服の着替えとか、誰が?」


「あ、僕がしました。僕がやらかしてしまったし、迷惑かけちゃったから」


「……ゲロまみれの私を?」


「だから、僕のせいだから。あ、それと! 裸は見てないからね! そこは目を反らしてやったから!」


 そうしないと「あなた男でしょ、変態!」って言われてひっぱたかれそう。と思っていたら、何故かチャオの目がキラキラと輝き出して、上気したような感じで、顔をこっちに近付けてきた。

 いや、待て。それを避けたかったんだ。それなのに、何でこの子はいちいち好意的に捉えていくんだ!


「ゲロまみれの私を介抱してくれて、しかも気にするなって。私よりも強いし、申し分ない」


「あ、あの。気が付いたなら僕はーー」


「待って!!」


「ほんぎゃぁ!?」


 尻尾は引っ張らないでくれるかな! そこは敏感だから、引っ張られたら痛いんだよ。しかもそのせいで、チャオが寝ている布団に引っ張りこまれちゃったよ。ヤバい、ヤバい! 逃げないと。


「やっぱり。私の男を見る目は間違っていなかった。婚期を逃していたのは、タイミングだったのね! コノエ。私みたいな、こんな子は嫌い?」


「ストップストップ! チャオさん! 目がハート! それと、一時の気の迷いだろうし、そもそも僕は女の子だよ!」


「男の子なんでしょ? しかも、男を好きにならないなら、私で問題ないでしょう?」


「うっぐ!! いや、でも、あのさ。女の子同士ってのは変わりなくてーー」


「なんなら、あなたが生やしたら良いのよ」


「生やせるの!? いやちょっと待って!」


 未来の技術っておっそろしい! 女の子同士でも関係ないってか?! それなら尚更この子から逃げないと。あっ、そういえばここにはコート先生も。


「さてと。私は研究に向かうから、ここは自由に使ってくれ」


「待ってコート先生! ちょっと助けーー」


「あ、なんならこれを張っていくからごゆっくり」


 追加戦闘を行っている僕達に向かって、コート先生は席を立ち、僕を見捨てようとしてきた。しかも、そう言って見せてきたボードには、こう書かれていた。


【医務室 現在使用中】


「使用中じゃねぇ!! 助けろぉ!!」


「はっはっはっ! ごゆっくり~」


「逃げるなぁ!!」


「あなたも逃げないでぇ!!」


 何なんだこの展開は。本当にまた男みたいな口調になっているし、身体に引っ張られていた精神が、また元に戻っちゃいましたよ。


 そこからこの子を振り払うのに、小一時間はかかりました。

どうにかチャオには勝てたものの、別の問題が発生し、コノエの周りはまた騒がしくなりそうだった。


しかしそんな時、ゲリラ部隊を率いるイナンアが、とんでもない事を仕掛けてくる。


次回 「4 イナンアの攻勢」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ