表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 2
25/105

2 女帝チャオ

新しいシナプスの武装を試すため、チャオに一緒にシミュレーションをやろうと誘うが、チャオはあまり乗り気ではない様子だった。

 チャオを引きずって、シミュレーションにやって来た僕は、新しい武装を追加で入力された、シナプスのデータを確認し、シミュレーション用の丸い匿体のような機械に入った。


 そこは、ビースト・ユニットのコクピット内を再現されていて、ケモナーはこれでシミュレーション訓練をする。それ以外の人は別にあるから、同じVR内で訓練をする事になるんだ。


 だから、ここの基地の人達も、僕達の訓練に参加出来るんだけど……。


「あの、何で他の人は来ないの?」


 何故か、チャオと一対一での訓練になってしまっていた。


「いやぁ……だってなぁ」

「チャオだしなぁ」

「まぁ、油断はしないでくれよ」

「あと、ビックリしないでくれ」


 なんだか、各々不安になるような事を言ってくるんだけど。

 チャオは渋々中に入っていったから、特に問題はないと思うけどな。


 それから、周りをぐるりと囲ったディスプレイの画面が変わり、荒野のような風景が映し出された。

 僕は新しいシナプスに乗っていて、重さや稼働の仕方も細かく入力されていて、良く再現されている。つまり、背中に新たな武装の重さと感覚もあるわけだ。あと、いくつか収納された武装もあるね。これは後々使っていこう。


 とにかく今は、この背中の大きな槍の使い勝手だ。


「あれ? チャオは?」


 準備が出来たから、チャオを迎え撃とうと思ったけれど、そもそも周りに居ない。いったいどこに?

 このシミュレーションは、割りと近くに現れるようになっているから、居ないのはおかしいぞ。何か不具合でもーー


『あ~はっはっは!! あれだけ逃げるチャンスを与えたのに、それでも我に挑もうとは、片腹いたいわ!』


 と思っていたら、上から声が聞こえた。急いで見上げると、高い岩の上からチャオの機体が見下ろしていた。

 パンダの形をした、ちょっとずんぐりとしたビースト・ユニットだけれど、何故か背中に鉄球が装備され、しかも打ち出せるようになっていた。


『この「マオ・グオワン」に、安易に挑もうとしたこと、後悔するがいいわ!!』


「待って待って。え? なにそのテンション」


 いつもよりも更にテンションが高く、むちゃくちゃ高圧的な態度なんだけど。


『なに、だと? これが我の本気の姿という事よ!! 覚悟ぉお!!』


「おぉわっ!!」


 そう叫ぶと、チャオはそこから飛び降りて、その背中の鉄球を打ち出し、僕を叩き潰そうとしてきた。というかここの基地の人って、背中に何か乗せがちだね。


「ちょいちょい! チャオさん! テンションテンション! 戻して!」


 地面にめり込んだはずの鉄球を、軽々と巻き取り、そのままぶん回し始めたものだから、僕はその場をホバーしながら移動し、身を屈めたり跳んだりと、ひたすら回避に専念せざるを得なくなった。


 そんな時、アルフィングから通信が入った。


『あ~無駄だぞ、コノエ。チャオはビースト・ユニットに乗ると、性格が変貌するんだ。そうだな~さながら、女帝のよう……かな?』


「止めてよ!!」


『いやぁ~窮地に陥った時の、君の対応と行動力を見たくてね。そうなったチャオは、完膚なきまでに相手を打ちのめし、圧倒的に完勝するか、徹底的にやられて完敗するかしないと、そこから降りないからな』


「尚更止めて!!」


 そんな厄介な性格だから、シミュレーションをしたくなかったのか。あの理由はとりあえず言っただけで、本当の理由はこれだったんだ!


『チャオに』

『俺もチャオにだな』

『大穴でコノエ』

『いやいや、やっぱチャオだ』


「賭けてんじゃねぇ!!!!」


 しかもその通信から、周りの人達の声も聞こえたけれど、最悪な事に、このシミュレーション戦闘を対象に、賭けを始めやがった。

 だから誰も参加しなかったのか! 思わず男の時みたいに叫んじゃったよ。ありがとう、少し男に戻れたかも。


『ほれほれ、どうしたのじゃ!? 逃げてばかりか?!』


「また口調変わってる~!」


『おぉ、早いな。女帝50%程度か?』


「なんだそれ?!」


 女帝モードにも程度があるのかよ。厄介な性格どころの話じゃない。この人は、戦場に出したらいけない気がする。


『いやぁ、チャオがそこまで気になっているとは思わなかったな~どうせならって感じで、一気にギアを上げてるな』


「うわっ! たっ、ひぇぇぇ!!」


 むちゃくちゃに鉄球ぶん回してくるわ、肩に付いたビーム砲をぶっ放してくるわで、僕はひたすらに避けまくっている。攻撃の隙なんてありゃしない!


「このっ!!」


 だからって、やられっぱなしなのもマズいから、後ろを向いて避けた瞬間に、尻尾を伸ばし、そのショットガンで相手に攻撃を仕掛けてみた。がーー


「えっ、いない?!」


 何故か相手の姿が消えていた。


『甘いわ!!』


「ぐへっ!?」


 相手機を探す前に、上からの攻撃で思い切り叩きつけられてしまった。パワータイプなのは嘘じゃなかった。

 僕の攻撃を飛び上がって避けて、その太い両腕で上から叩きつけたのか。


『この槍、距離がないと意味ないのぉ』


「くっそ!!」


 とりあえず尻尾で振り払って、上に乗られた相手を退かすけれど、こういうパワータイプとは距離を取らないとーー


「ぶはっ!?」


 と思って離れたら、何かに当たって爆発した!?


『おいおい、我から離れるな。今からて~ってい的に、いたぶってやるんじゃからなぁ』


「……うぅ。え? 何この丸いの? ぎゃん!?」


 体勢を立て直して、相手を見据えたけれど、目の前に白くて丸いのが飛んでいた。何かなと思ったら、それが爆発して、僕の機体に相当なダメージを与えてきた。これってまさか、機雷?! いやいや、空中に設置するなんて、そんな事ってあるの?


 良くみたら、この機雷はチャオの機体の尻尾で、ポンポン出しては、新たな尻尾が生えてるんだ。いやいや、怖い怖い。


『もうここは、我の処刑場兼調教場じゃ。良いか、コノエ。お主はこの我が、たっ~ぷりと可愛がってやるわ』


「キャラが全然違う」


 こんなのは聞いてないし、言ってほしかったよ。そうしたら、チャオとシミュレーションなんて、って考えていたら、お友達になんかなれないし、仲間として連携も取れない。だから皆黙っていたし、僕の事を計るために、敢えてこのチャオと戦わせたか。


『いけぇ!! チャオ! やってしまぇ!!』

『やはり強いな、女帝チャオは!』

『コノエ!! 俺はお前に賭けてるんだ! たてぇ!』


 だからって、賭けるのは良くないと思います。そこは注意した方が良いだろうな。後で艦長にーー


『ふむ。それなら私はコノエに。何せ、アークを守り通した実績がある』


『それじゃあ、俺もバーモント艦長に乗せてもらおうか』


「艦長!? アルフィング!?」


 上官であるはずのあなた達まで賭けに参加してどうするんだ!! なんなんだ、ここは!?


『わはははは!! ここはどんな事でも、遊戯の心を忘れん! 戯れよ、戯れ。さて、お主はこの状況をどう突破してくれるんじゃ?』


「くっそ~」


 周りは空中機雷。距離を開けてもビームバズーカ砲。詰めようとしても鉄球と、破壊力抜群の爪と両腕で圧倒してくる。

 しかもチャオは、ヒト型のモードに切り替え、両腕の爪から更にビームの刃を伸ばし、破壊力を上げてきた。


 これを攻略するには、先ずはこの周りの機雷を何とかしないとだ。こうも囲まれたら、身動きが取れない。シナプスの武装で、この機雷を一掃できる方法は、1つだけならある。


 だけど、失敗したら僕の負けだ。


「ふぅ……」


 そして僕は深呼吸をし、DEEPを発動。機体のオーバーブーストは起動しないよう、自身の感情を出来るだけ押さえていく。ただ、この高揚は止められないな。


 うん、楽しいね。

思いがけないチャオの変貌に、完全に場を制せられてしまった。


しかし、コノエには突破口があるようで。


次回 「3 機転は予想外で」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ