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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 1
23/105

16 きな臭い事

何とか水上基地にたどり着き、艦の修理とクルーの治療を受けることになった。そしてその基地には、新たなケモナーも居て、更に賑やかになりそうだった。

 あれから、新しいケモナーの人もやっとどこかに行き、自分の部屋で休息を取っていたけれど、死ぬかもしれなかった今日の戦いを思い出して、ベッドの上で1人身震いしてしまった。


 強くならないといけない。


 そもそも、シナプスの武装が少ないのも問題だった。何か色々と改良をされるようだけど、今は身体を休めるのが大事だ。そう思った所で、盛大にお腹の音が鳴った。こっちが先か。


「んしょ、食堂」


 食堂の位置も案内された。とりあえず、腹ごしらえをしないといけない。

 そう言えば軍服のままだったから、まともな服にした方が思ったけれど、基地内だし、一応このままの方が良いか。女子はスカートなんだけれど、流石に抵抗があったから、ハーフパンツみたいなズボンにしてもらったよ。色々あるね、この世界の軍の服って。


 そして、部屋から出て食堂に向かう間、やたらと視線を感じた。ヒソヒソと話し声も聞こえていた。

 だいたい女性の人達が、僕を見ながらヒソヒソと話している感じだね。男性もチラチラと見ているな。ただ、男性はだいたい顔とか足とか、胸の方に視線がいっているな。分かるもんだな、こういうのって。


「あの、コノエさん?」


「え? あ、はい」


 そう思っていたら、その女性の1人が僕に話しかけてきた。

 軍事基地とはいえ、女性だっている。女性にしか出来ない事もあるだろうしね。


「あなたが、黒い凶星とミルディアの猛虎を退けたって、本当ですか?」


「えっと。退けたって言うか、隊長達と協力してだけど」


「ミルディアの猛虎は、1人で戦って退けたって」


「いや、あれは……相手が遊んでたし」


「きゃ~! 本当なの!? 凄い! 握手して下さい! あっ、写真も!」


「えっ? えっ!?」


 何故か興奮しちゃって、アイドル並みの対応をされてしまってるよ!? どういうことかな? なんであいつを退けただけで、こんな事に。


「ズルいズルい! 私も!」


「ちょっとこら、女ども! コノエちゃんは疲れているし、お腹も空いて食堂に向かっているんだぞ! コノエちゃん。ここは俺が案内を」


「おい待て! しれっとなにエスコートしようとしてんだ! コノエちゃん、俺とーー!」


 待て待て待て待て。なんじゃこりゃ! 僕は男だってのに、何でこんなにキャーキャー騒がれないといけないんだ。


 正直に言うと、こんなの初めてだから、頭が若干パニックだ!


 そんな時、更に厄介な男が現れた。


「こらこら。レディに対して、そんな下心丸出しで近づくな。エスコートするなら、しっかりと目線を合わして提案するんだ。ということで、ここは1つ俺がーー」


「ご遠慮します」


 膝を折って低くして、視線を僕に合わせて手を伸ばしてくるとか、どこの貴族様でしょうか。その前に、顎の無精髭のせいで、割りとそれも台無しだよな。


「ふっ、流石になかなか落ちないな」


「だから、僕は男だっての!」


 男に女扱いされても気色悪いんだよ。そりゃ、今は女だけどな。その前に、こいつにはレイラ隊長が居たはずだ。


「あのさ。それとあなたには、レイラ隊長が居るでしょう? そっちのお見舞いは?」


「松葉杖を放り投げられた。いやはや、あの気の強さも魅力だが、もう少し可愛い気のあるところも見たいものだ」


 僕はそんな隊長を見たことあるけれど、言わない方が良いな。こいつには尚更言ってはいけない。あとで確実に始末されるだろう。


 そしてアルフィングは、そのまま嫌がる僕の後ろを食堂まで着いてきた。


 ◇ ◇ ◇


 それから食堂に着いた僕は、空いている席に適当に座った。

 相変わらず、着いたらヒソヒソ声とか、僕への視線が凄かったよ。


 そして、アルフィングも僕の真正面に座った。これも振り切れなかったよ。


「アルフィングさん。別に真正面に座らなくても……」


「アルフで良い。ここのオススメを教えて上げようと思ってね」


「しれっとデートに持ち込んできてません?」


 この人は警戒しておかないと、恐ろしい事になりそうだ。とにかく、オススメとやらを教えてもらって、早く食べて戻ろう。


「黒い凶星。ミルディアの猛虎。この2人と戦って生還した君から見て、あの2人の弱点等はありそうかな?」


「本題はそれ? それなら、最初から言ってくれたら良いのに。と言っても、僕も訓練兵上がりだから、そこまでは見抜けていないかもだよ」


「いやいや、デートの口実さ。こうすれば、多少はーー」


 メニュー表を見ながら睨んでおくよ。本当、この人はダメだ。

 機体操縦の腕は確かに凄いけれど、人としてはちょっとなぁ。


「オススメは、丼物さ。ヒノモトからの料理人でね、ソバとかウドンとやらもあるぞ」


「マジで!?」


 洋物ばかりかと思ったら、意外や意外、和食がこんな所で食べられるとは。それなら、懐かしの味を食べてみたいところだ。


「丼物というのは、なかなかに旨くて好評だ。ただ、ウドンはともかくソバはちょっとな、香りが苦手な人が多い」


「それが良いのに! それじゃあ、僕はその蕎麦! あ、天ぷらあるじゃん! えび天で!」


「ふふ、可愛いな。君は」


 しまった……懐かしのメニューに心踊って、こいつの前であられもない姿を晒してしまった。

 テンションを落としてみたものの、もうダメか。というか、周りの人達もホッコリしているのはどういうことだ!?


「流石は、遥か遠い地球。ニホンジンの『DEEP計画 適正者』だ」


「それって、どういう?」


「私と食事デートをしてくれたら、教えて上げよう」


「……分かった」


 何か重要な事を、この人は知っていそうだ。

 それなら、食事デートくらい痛くない。僕の身に何が起こったのか、それを知らないと。


 ◇ ◇ ◇


 しばらくして、僕の前に暖かい蕎麦が出され、アルフィングの前には丼物が出された。親子丼みたいだな、確かにそれも美味しそうだ。


「ウドンもソバも、低価格で保存も良いときた。ただ、口に合う合わないは人によるらしくて、特にソバはーー」


 そんな事を言う前に、お腹が空いた僕は、蕎麦を思い切り啜りながら食べたが、そう言えば海外の人とかは、この啜るという行為が下品ってなっていたのを思い出した。そもそも、麺類は音を出して食べてはいけないマナーがあるんだ。

 蕎麦は、啜って音を立てて食べるのがマナーなんだけれど、そこは文化の違いだから、受け入れ難いよな。アルフィングも含め、周りの人が目を点にさせているよ。

 ただ、例の料理人の人だけは親指を立て「その通りだ!」と言わんばかりの顔をしていたよ。

 ということは、口伝やら何やらでこの伝統は伝わっているんだ。


「ごめん。下品だった? だけど、この日本発祥の蕎麦はね、こうやって啜る事で、蕎麦実の香りを鼻に通して、香りも楽しみながら食べるのがマナーなんだ」


「ほぉ……なるほど。いや、そりゃ驚いたけれど。食べ方というのが存在したわけか。香りを楽しむのか、ふむ。今度試してみるか」


「あ、でも。やったことない人がやると、上手くいかないよ。これ、コツがあるから」


 そう言ったら、そこに居た全員が、僕が蕎麦を啜るのをガン見するようになりました。食べ辛いわ。


「あのさ、アルフ。さっき言っていた、DEEP計画って?」


 食べるのに集中出来ないから、一旦気を反らす為に、さっき言われたDEEP計画の事を聞いてみた。


「ん? あぁ。将来的に『四皇機』の再現機に乗って、この戦争を終結に向かわせる者を産み出す計画だ。その為に、地球から何人か持って来た、冷凍保存された者達、その中でもケモナーの種として選んだ者達を、無理矢理な方法でこの国に連れて来て、DEEP保有のケモナーとさせたのさ」


 無理矢理な方法とやらに引っ掛かるけれど、アルフィングがそれを言うと、周りの人達が「なんて事を言うんだ」って目をした。解釈違いがあるみたい。


「アルフィングさん。あれは別に、無理矢理という事では。ちゃんと地球連邦議会から許可はーー」


「賄賂でだけどな」


「陰謀論ですよ。我が国がそんな事を……」


「さてさて、どうだか。確かな証拠はないが、限りなく黒に近い発言と、関係者の話しもある」


「だからそれも、反国主義の奴等に買収されて」


 何だか嫌な空気になってきたので、僕は今度はわざとらしく蕎麦を大きく啜った。その瞬間、シンと静まり返ったけれど、まぁ良いや。


「ご飯は美味しく食べよう。そんなギスギスしていたら、何も美味しく食べられないよ」


「確かにな。悪かった」


「いえ、こちらこそ……」


 やれやれ、お互い謝って何とかなったか。どうやらこの国の人達は、一枚岩ではなさそうだ。

自身に起きた事、DEEP計画の事など、何やら不可解なものが沢山あるが、一先ずは休息に勤める事にした。


次回 新章「1 シナプスの新武装」

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