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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 1
22/105

15 新たなケモナー

援軍とおぼしき男性は、ただの女たらしのヤバい奴だった。コノエにまで言い寄り、流石の彼女も彼からは距離を取ることにした。急所を蹴り上げて。

 それから更に数日程かけ、僕達はようやくアルツェイト国の水上軍事施設に到着した。施設とか言ったけれど、基地だこれ。とても広い洋上基地で、戦闘機の発着場が何レーンもあって、更にはレーダーの施設に大きな格納庫。機体の開発でもしているのか、中で何かを作っている建物もある。


 アークはその基地の中の、屋根の付いた戦艦用の格納庫に通された。戦艦自体が巨大だから、その格納庫も巨大だったよ。


 その後は、その基地の関係者達が慌ただしくしながらやって来て、怪我をした人達を基地内へと連れて行ったり、アークの被害状況を確認しようとしたりしていた。


 コルクも連れて行かれたけれど、とりあえず命に別状は無いし「なんであいつは歩いてるのよ!!」って叫びながら、車椅子に乗って連れて行かれた。あそこまで叫べているなら、回復も早そうだな。


「おぉ、ようこそ。バーモント艦長」


「レイドルド中将。すまんな、世話になる」


 そんな時、一人の男性がアークに近づき、艦長に挨拶をしてきた。バーモント艦長には負けるけれど、その人も髭を生やし、沢山の紋章を付けたマントを翻している。お腹はすごい出てるけどね。

 バーモント艦長のマントには付いてないけれど、そもそも艦の船長だし、階級はあまり関係ないのかもしれない。


「いやいや。昔あなたにお世話になったのです。これくらいはしないと。大将の座を蹴り、新型艦の艦長になられても、その威厳は変わらないですなぁ」


 これからは、艦長にはもっと敬った態度と言葉遣いをしないといけないか。まさか、そんなレベルの地位にまでいっていた人だったなんて。


「そちらの迷惑にはならん……が。先月の報告時より、状況が変わった」


「シナプス……ですか。まさか、起動させてこちらに来るとは思いませんでした。案では確か、そのまま気づかれなければ、あの場に保管。気づかれた場合は、囮を使ってこちらまで。でしたね」


「あぁ。しかしだ、敵にバレた上に、奪取されるところだったのだ」


「それを、彼女が? と、いったい何を?」


 とりあえず土下座だ。ジャパニーズDOGEZA。これは、僕が完全にやらかしている。

 予定にない状況であり、切り札的戦艦の予定外の損傷。僕が勝手にシナプスに乗って、動かしてしまったりしなければ。あんな所に逃げ込みさえしなければ。


「も、申し訳ありません。全て、僕の責任です。艦にここまでの損傷を与えたのも、敵兵に見つかってしまったからで……」


 とにかく平謝りをする僕に、艦長はゆっくりと近づいて来て、そのまま膝を折って僕に向かって手を伸ばしてきた。やっぱり怒られる。と思ったその時、艦長はゆっくりと僕の肩に手を置いた。


「君は。君の正義の心の下に、行動をしてくれた。結果として、機体も奪われず、犠牲も少なく、この基地へとやって来られたのだ。今までの君の行動は、軍としても評価されるべきものだ」


「その通りです。報告で聞いていますが、黒い凶星とミルディアの猛虎を退けたのでしょう? 表彰ものですよ。本来でしたらね」


 艦長に続いて、この基地のトップの人にまでそう言われた僕は、今までの緊張の糸が切れてしまって、思わず泣きそうになってしまった。そんなの、隊長とかコルクには見せられないよ。


「さて。艦の修理や機体の修理等、次の出発まではかなりの時間が必要になります。それまで、ゆっくりと休んでください。部屋を用意させます」


 その後、僕は基地の関係者の案内で、自分にあてがわれた部屋に向かった。


 ◇ ◇ ◇


 部屋に向かう間、この基地の中を案内された。と言っても、生活に必要な部分であって、あとはこの基地の人達が働いている場所だから、必要のある時以外は、邪魔をしないようにしないといけない。


「おぉ! 君が、あのシナプスに乗っていた人?!」


 そんな時、分厚いメガネをかけた男性が話しかけてきて、僕に詰め寄ってきた。なんですか、この人は。


「いやぁ。たったあれだけの武装で、良くまぁ黒い凶星や、あのミルディアの猛虎を退けたね!」


「え、でも、僕にはちょっとした事がーー」


「安心したまえ! 私が君のシナプスに、新たな武装を追加してあげるよ! 隠し武器も含め、期待してくれたまえ!」


「あたっ、あた!」


 聞いてないし、肩をバンバン叩かれて痛いし、なんだこの人は!? 武器とか、武装を開発している人なのか? それにしては、何だか騒がしい人だな。

 しかも、そのまま去って行ったよ。僕の言葉も聞かずに、本当に賑やかな人だよ。


「まぁ、悪い人じゃないからさ。信じて任せて良いと思う」


「あ、はぁ……」


 案内してくれている男の人も、どう説明したら良いのやらって顔をしている。それだけ、ちょっと変わった人らしい。


 それともう1人、チャイナ服でお団子ヘアーをして、腰までの長い三つ編みをした女の子が、ついさっきから着いて来ているんだけど、何の用だろう?


「あの? 何か?」


「……ふ~ん。弱そう。な~んだ、何かのまぐれなのね。良かった。貧弱~」


「はい? あ、いや……あのさ、初対面の人にそんな言葉はーー」


「チャオ! 君は相変わらず言葉が過ぎるぞ! 謝るんだ!」


「べ~っだ!」


 そのままあっかんべーをして走り去ってしまったよ。何なんだ、あの子は。


「すまないね。彼女は、チャオ=リー=ルーバル。隠しているけれど、彼女もケモナーなんだ」


「えっ?! どこに!?」


 尻尾と耳が無かったように思えるけれど、いったいどこにあったんだろう。


「彼女のはパンダさ」


「あ~」


 小さな耳は、さっきのお団子ヘアーの白い布の被せ物。あの中かな。尻尾は、服の中に隠せるレベルだし、そうしているのか。


 それにしても、僕に突っかかる理由はいったいどこに。


「彼女は、両親をミルディアの猛虎に殺されている。自身も、その時のキズで」


「……なるほど。分かりました」


 つまり、ミルディアの猛虎と戦い、それを退けた。要するに、勝ったような捉え方をしてもいい訳で、自分で復讐をしたい相手を、先に取られるかもしれない、そんな焦りから、僕に突っかかって来たのか。


「彼女も悪い子じゃない。仲良くして上げてくれると、嬉しいかな」


「はい、分かりました」


 とりあえずここは軍の基地だし、キッチリとしないといけない。だから、言葉遣いもちゃんとしないといけない。


「お? 案内はもう終わるか? あとは君の部屋だけだろう? ここからは、この私が案内しよう。なに、白馬に乗ったようなつもりで、気楽にーー」


「おっと、足がスベッチャッター」


「ふがぉ!!??」


 そんな時、先の廊下の陰から、アルフィングが出てきて、下手なウィンクとともにそんな事を言ってきた。

 だから、少しだけDEEPを発動し、片足を軸にして、右足で後ろ回し蹴りをかましておいた。


「……あっ、がっ、こ、これは……足が滑ったとかいうレベルじゃ……」


 壁にめり込んで鼻血を出している所を悪いけれど、僕はこの人が苦手だ。だから、とっとと離れないとな。


「ふふ。しかし、照れ隠しもまた可愛い」


「誰がだ!!」


「あぎゃぁああ!!」


 通りすぎる時に変な事を言うから、後ろ頭に跳び蹴りをしてしまったじゃないか! この人は何を考えているんだ。


「……嘘でしょう。アルフをやるなんて。やるわね」


「えっ?」


 さっきの子、まだ着いてきていたよ。気付かれたから、一度去るフリをして、また着いてきていたのか。


 いったい何で、そこまで僕に固執するんだよ。君の目的が良く分からないや。


「あ、あのさ。チャオちゃん、だっけ? 良かったら、部屋で話す?」


「……私、この身体になる前は、40手前だったのよね」


「……嘘っ!? 僕より上?!」


 ケモナーって、歳もある程度若く出来たりはするけれど、それは本人の希望が一番優遇されるらしい。だってそうしないと、新たな身体の年齢に引っ張られてしまって、精神まで若返っちゃうから。

 あんまり差があると、かえって混乱したりするから、そこまでの差はつけないようにしているみたいなんだけど、この子は明らかに大きく差が付けられている。いったい、なんで。


「良いわ。あなたの事を知らないとだしね。元男のあなたが、どこまで良い男だったのか。私の男を見る目は全く無かったのか、それを知らないとだしね」


「えっ、何で知ってるの?」


「あなたの事は、報告の内容で来る前から知らされているわ。基地の人は皆知ってる」


 それなのに僕は、必死になって女の子やろうとしていました。


 いや、だってさ。ツグミが「ここの基地の人達は、あなたが男って知らないから、女の子らしくしないと」って言ってたんだよ。


 ツグミには、後でちょっと事情を聞かないとね。

 そう考えながら、僕は部屋の方へと足早で向かいました。

ボロボロの状態で何とかたどり着いた水上基地。

そこで出迎えられたコノエは、予想外の歓迎を開けていた。ただ1人を除いては……。

そして、相も変わらずなアルフィングと共に食事をする事になったが、何やらきな臭い事を話し始めた。


次回 「16 きな臭い事」

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