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GALAXIES BEAST  作者: yukke
PROLOGUE
2/105

2 動かせない

突然、狐娘美少女にされた鈴原は、女医からビースト・ユニットに乗るようにと言われ、自分の存在価値を見いだせなかった彼は、それを与えてくれた事に少し感謝をし、機体に乗る事にしたのだがーー

 何はともあれ、あの変なロボットに乗ることになった僕だけど、そもそも女の子にする必要はどこにと思ったら「一番適応したから」という理由だったよ。


 ケモナーになる人の中には、こうして性別が逆になる人もいるって聞いたが、逆になったらそれはそれで大変なんだ。

 トイレとか風呂とか、色々と違うからさ、教えて貰いながら日々を過ごし、何とか慣れ……ないんだよな。僕は男だっていう感覚が強いから。


 あと、歳も若い身体になったから、その辺りもしばらくしたら引っ張られていくそうだ。


 そんな訳で、何とか普通の生活も出来るようになり、訓練兵として訓練施設に入れられる事になった。


 最初は、例のロボット「ビースト・ユニット」を動かす為の座学。

 部分名称、パイロットの整備の必要性等、正直何回頭から煙出したかも分からないや。


 学校とは違い、クラスメイトと仲良く……なんてものはない。あるならーー


「あら、ごめんなさい。尻尾が引っ掛かっちゃった~」


「ふぎゃっ!? 何するんだ! コルク!」


「なに? あなたの尻尾が長いのが悪いんじゃない。それと、居眠り」


「うぐ……」


 地味な嫌がらせ。


 居眠りしていたのは間違いない。座学がつまらないというか、昔からこういうのは苦手で、眠たくなるんだよ。


 ちなみに、この子は「コルク=パニーニャ」と言う名前で、猫のケモナーだ。

 薄いブルーの毛色にツインテールという、猫キャラ定番の髪型で、ちょっと当たりが強い子だけど、色々と賢くて、小テストはいっつも満点だ。


 そんな子が、何で僕につっかかってくるのかは分からない。何か気に入らなかったんだろう。


 ここはそうやって、皆で切磋琢磨して訓練兵として腕を磨く場所。だから、教えるのは教官で、その厳しさときたら……。


「貴様等! 遊んでいる暇があれば、電動超力学の単語でも覚えてろ! というかだ、コノエ!」


「うっ……」


「お前はまた赤点だ。やる気あるのか?!」


「……すみません」


 この通り、お墨付きだよ。

 今呼ばれた名前は、この身体での僕の名前。あの女医さんが付けてくれた「コノエ=イーリア」だ。


 そして、僕に怒鳴り付けたのが教官の「レイラ=バルクウッド」だ。

 そんな教官からの怒号のせいで、教室からはクスクスとした笑い声が飛んでくる。


 こんな所に来てまで、また勉強とは……そもそも、分からない単語が多すぎる。先ずそこからなんだよな……。


 このレイラという教官は、狼女のケモナーで、ツリ目の威圧感ある雰囲気なんだけど、シルバーの長髪に、女性なら誰もが羨む程の、かなりスタイルの良い身体をしているんだ。密かに狙っている男性訓練兵も居るとか……。


「全く……そんなのでは、明日の実技は到底参加出来んな」


「うへぇ……」


「ただそれでも、戦闘が出来る者はいる。頭脳が足りんからといって、長々と講義させている時間はない。だからーー叩き込め」


 もうむちゃくちゃだ。今は戦争中なんだか知らないが、兵力不足で、優秀なケモナーが欲しいようだ。

 上からの圧力もあって、かなりのスパルタ指導になっているけれど、そもそもケモナーは人間よりも体力が少し多い。多少の無茶も、何とかなってしまうんだ。


 というわけで、僕だけドッサリと課題を出されたのは、言うまでもなかった。


 ◇ ◇ ◇


 翌日のお昼過ぎ

 ボディスーツに着替え、校庭に集まった僕達は、ついつい言葉を失い、目の前にズラッと並ぶ、壮観なビースト・ユニットを眺めていた。


 訓練用とあって、シンプルなデザインで、特徴の無い統一された形をしているけれど、一応耳の形でどんな獣かは分かる。


 ちなみに僕は、大量に出された課題を何とか片付けました。ギリギリだったよ……。


「さて、訓練用とはいえ、武装はされている。たった3つだがな。今日は動かすだけだ。武器のロックは解除するなよ」


 3つ? あぁ、肩の辺りにある大きめのレーザーライフルと、両腕に取り付けられた小型のナイフか。といっても、人の身長と変わらないくらいはある。

 あとは尻尾だ。これには種類があるみたいだけど、訓練用はせいぜい叩くくらいかな。


 そもそもこれは、だいたい2階建てくらいの高さで、それほど大きいというわけでもない。あのガ○ダムよりも小さいな。


「乗り込み方については、教本でやった通りだ。先ずは、自分と同じ獣のユニットに乗り込め」


 ということは、僕は狐型か。


 言われた通り、数体ある狐型のユニットまで行き、渡されたチップを胸元に付け、ユニットと自身を先ずは認証させ、乗り込めるようにする。

 認証されると、ユニットが更に身体を下げ、伏せのような体制になった。そして胸の部分が開き、そこから乗り込めるんだ。


「よっと……うわぁ」


 中は色々な機器があり、全て教本に書かれている通りだ。


「えっと、先ずは……」


 目の前に、シートがある。

 でもそれは、例のロボ物であるようなものではなく、どちらかというと大型バイクに乗るような、そんな座席シートがあった。つまり、この状態からだと跨いで乗るんだ。


「よいしょっ」


 映像とか、そういうのも見たから、実物を見た凄さというか、これがそうなんだっていう高揚さはある。ただ、今は鬼教官が睨んでいるから、手早くやらないと。遅すぎたら怒号が飛ぶ。


 あとは自分の尻尾と、シートよりも後部に取り付けられている、テールプラグを繋ぎ、同期をすれば完了ということだ。


 この同期は、ケモナーにしか出来ない事で、このユニットを更に細かく、しなやかに動かす事が出来るようになる。


「えっと……この大きなスイッチで同期か」


 大型バイクに股がっているような感じだから、必然的に尻尾は上に上がる。つまり、プラグに繋ぎやすいようになるんだけれど、嫌な予感がするよ。


 スイッチを押すと同時に、機械の駆動音がコクピット内に響く。

 そして、後ろからプラグが伸びてきて、僕の尻尾を包むようにして繋がった。


「んっ……」


 尻尾はちょっと敏感なんだ。こんなので繋いだとなると、そりゃ妙な感覚が襲ってくるんであってーー


『同期開始』


 ーーって、僕は男だから変な声は出さないけどね。出したら、艶やかな女の子の声だもん。耐えられないよ……。


 とにかく、目の前のモニターにはそんな文字が表示される。同期は直ぐ。恐らく、全身にユニットの大きさの感覚がーー


『同期に失敗しました。再度実行しますか?』


「えっ?」


 待って待って、同期に失敗するとかあるの?


 いや、あったか……機体の不備とか、点検ミスとか、そんなのが原因で起こるらしい。とりあえず言わないと。


「すいません、教官。同期失敗しましたけど」


「なに? おい、整備班。たかが訓練用だからって、サボったか?」


「えぇ~? ちょっと勘弁して下さいよ~こちとら毎日しっかりと見てますよ!」


 つなぎ服を着た人が慌ててやってきたけれど、同期に失敗するなんてあり得ないって顔をしている。

 この整備班の人達は、獣の耳も尻尾もない。普通の人達なんだよ。普通の人もいるんだって思ったけれど、人と獣の混ざり者が僕達だから、いるのは当然だった。


 そんな事を考えていたら、整備の人達がこの機体を調べ、そしてーー


「やっぱり異常はないです。君、ちょっと別の機体に移ってくれないか?」


「はい……」


 そう言われ、隣の別の狐型ユニットに乗り、同じように起動させ、同期をしてみた……が。


『同期に失敗しました』


 やっぱり出てきたのはその文だった。


「…………」


 レイラ教官は呆れると言うよりも、驚いたような表情をしていたけれど、僕としてはそんな事よりも、この身体で、この世界で生きていく事が出来ないんじゃないかって、そんな心配の方が出てきてしまったよ。


 ここを追い出されたらどうしよう……。

同期が出来ず、訓練用ビースト・ユニットを動かす事が出来なかった。

しかし、意気消沈する彼(彼女)に、レイラ教官がある事を伝えてくる……が、その直後に突然の爆発音が響き渡り、敵機体が姿を見せた。


次回「3 襲撃」

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、動かすことができないというか、起動出来ないの方が正しくね? 車でいうとハンドルを握るどころか車のドアが開けられない感じ?
2021/12/16 16:41 退会済み
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