表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 1
15/105

8 ミルディア皇国の内情

コノエ達は、一時の休息を楽しんでいた。


一方その頃、ミルディア皇国内では、ゲリラ部隊の対応である者が多忙に動いていた。

 壊滅したニューオーグの街から少し離れた、ある軍艦の中で、回収されたラフ・ティガーから降りるグランツを、オルグが向かえた。


「すまないね。私の機体が修理中なばかりに、君にゲリラ部隊掃討を任せて」


「おぉ、いやぁ~楽しかったぜぇ。あの2人が居たからな~」


「やっぱりか……」


 嫌な予感はしたものの、あの国はケモナーを良く軍に投入していた。よって、狐の子もまた戦場に出ることは分かっていたが、それでも本音は出て欲しくはなかった。


「とにかく、あの戦艦は領海を出て、アルツェイトの水上軍事基地に向かうはずだ。その前に落とし、あの機体を回収する! あの付近は岩礁が多い、そこで仕留めるぞ」


 それからオルグは、部下に指示を出し、艦内へと向かった。


「しっかしよぉ、イナンアは何考えてやがる? ここは中立国のバッゲイア諸島国の領土だろうが」


 身体をコキコキと鳴らし、戦闘をしたにしてはもの足りなさそうな様子のグランツが聞く。


「ここは複数の島からなる国だが、島の1つ1つには島主がいる。が、ニューオーグの街のあった場所は大陸の端だ。諸事情により、バッゲイアが領土を持つことにしたが……隣の国はーー」


「あ~イナンアと友好関係にある、ラリ国だっけか? な~るほどね~」


 色々とこの惑星の国にも、様々な問題があるようだが、どれも地球で繁栄していた頃と変わらない問題を抱えていた。


「アルツェイト国は、堂々とその近辺を通過していたが……あの国は八方美人だからな、ラリ国ともバッゲイアとも友好関係を結んでいるし、貿易も盛んに行われている。ただ今回の事で、ラリ国に何かを言われたかも知れないだろうが、そこは内で揉み消すだろう」


「あ~そういうの、俺はわっかんねぇ!」


 艦内に入り、その中の部屋の1つに入ると、そのままドカッとソファに座り、グランツは近くにあったグラスを取って、中に飲み物を注ぐと、それを飲み干した。


「グランツ。君はもう少し、政治やその辺りの事をーー」


「そういうのは、あんたに任せるわ。この身体になる前もあんたに仕えていたし、そういう細かいのも任せてたからな。あの国が滅んでからも、俺はあんたの侍従兵だぜ」


「それは助かるよ」


 その言葉に、オルグは少し苦笑いをし、グランツに感謝をした。

 そして、グランツは少し身を乗り出して、前から気になっていた事を聞いてきた。


「しっかしよぉ、滅ぼしてきた国に仕えるとか、本当に何を考えてんだ?」


 そう言われた後、オルグはサングラスを取り、その両の目を見せてきた。

 緑と金色のオッドアイの目は、その1つの左目の緑の目に、大きな火傷の跡があり、見えているようには見えなかった。


「滅ぼしたのは、ミルディアとアルツェイトだ。私は、この2つの国を今も許さない……が、それも戦争だ。私のいた国は、あり得ない計画を実施しようとしていたし、実際ある機体を確保しようと動いていた。だから、滅ぼされたのさ。これは、罪の跡だ」


「あ~わりぃ、そうだな。あれは……あの国が悪かったのかもな。でもよぉ、あそこまでーー」


「グランツ。言ったはずだ。戦争だとな」


 そう言ったオルグに、グランツはそれ以上言葉を出さなかった。


 艦はゆっくりと、沖へと進んでいく。


 ◇ ◇ ◇


 イナンアのゲリラ部隊による攻撃は、世界各地で激化の一途を辿る。


「ギルム様、今日はこの海域が……」


「ギルム様、今日はこの地域が……」


 毎日毎日部屋に来ては、その報告ばかり。ギルムは立派で高級な椅子に座りながら、指で机を鳴らしている。


「毎日さぁ~そればっかりかぁ!? たまには良いことでも報告しろよ~!! てめぇらは木偶の坊かぁ! あぁ?!」


 そして、机の上の書類をバッと払い除け、あからさまに不機嫌な態度でそう吐き捨てた。

 戦線は一向に良くならない。どころか、どういう訳かちょっかいを出す奴等が増える始末。


「あ~もう! この戦争で金儲けしている奴等が、裏でコソコソとぉ! ヒノモトも厄介なんだよ~あの2社、何だっけ? ロマンス社とか、花札社とか?」


「ロマノフ社と花鏡社です。まぁ、お互いに牽制しあっていますし、戦争中の今、とにかく急成長をしていますからねぇ」


「気に入らないねぇ~潰せないの?」


「そうはいっても、我が軍の機体は、その2社からでして……」


 そう言って、ギルムはあるカタログに目を落とす。机の上には、常にそのカタログが置いてある。この戦争で、ここの軍に使われている機体の8割方は、その2社の提供だ。

 自分としては、自らの力でシェアを伸ばせなかったのは痛い。だからこそーーだ。


「ちっ。機体で思い出した。新進気鋭のあの社からの、新機体の出来は?」


「ギルム様が創設した、ガンマ社ですね。新機体の方の量産の体制は整っています。それと例の3機、パイロットはどうします?」


 残り2割は、ギルムが創設した会社だった。だが、どれもこれも癖があり、戦地での活躍はあまり入っていない。


 そこで、ギルムはその状況を打開するため、新機体の開発と量産、更には今現在の技術を総動員した、とんでもない額がかかる機体の開発に着手していた。


「完成しそうか?」


「ギルム様が資金投入をしている為、予定より早めに」


「そうかそうか~パイロットはあの3人だ。そうだな~オルグの隊にでも入れてやれ」


「はっ」


 部下にそう言うと、ギルムは少し嬉しそうな表情を見せた。

 やっと、自分の時代が来るのだと、そう確信はしていた。残る問題はーー


「ギルムよ。……状況は?」


 朽ちる老体に鞭打って、片足を若干引きずりながらやって来た、この父親だけだった。


「父上。お身体が本調子ではないのですし、延命治療を受けられたとしても、それで既に体力がーー」


「それでも、お主に任すわけにはいかないのだ。全指揮は私だ。この、グェンヤーガ=シュバイツ=ギルノガンだ」


 過去の英雄も、老いには勝てなかった。それなら、とっとと引退してくれたら良いものを。

 自分の何がいけないのか? 自分の何が足りていないのか? ギルムはそれが謎でしかたがなかった。


「分かりました」


 それでもその威圧感だけは、幼い頃に感じた恐怖心を思い出させるには十分な程に、その身からほとばしっていた。


「ギルム。お主は機体の配備、隊の不足物資の補給手配。それと、現状から最適な作戦案を拾い、それを纏めて報告をしろ」


「はっ……」


 従わざるを得ない。そんな圧倒的な父のカリスマ性に、ギルムは妬みを持ち、更にはその地位に早く就きたいという願望が、彼を焦らせていた。


 そして、父を越えるという思いから、ある野望までその中に潜ませていた。


「ゲホゲホッ。……ふぅ。……イナンアの状況は?」


 時折見せる、病の影。

 それが早く牙を向けば良いのに、と思う。これが中々に最近の医療技術では難しい。一昔前なら恐らく生存率の低かったであろう、この病。


 肺癌。


 グェンヤーガ総督は、それを患っていた。にも関わらず、現状命に関わる状態ではない。

 それどころか、最近の若い者には、この癌に対する予防接種というものが義務化されている。細胞のエラーを極力押さえる、宇宙の旅路で見つかった、あるウイルスを弱らせたものだった。


 父はギリギリ世代ではなく、癌を患ってしまったが、最新の医療で命を落とすまでにはいかない状態まで、抑え込まれていた。


「技術の進歩も問題だねぇ、ったく……」


「聞こえているぞ。ギルム」


「すいませんねぇ~でも、総督の息子なんて、昔からこうでしょうが」


「そうだな。どこの国でも、息子は目の上のたんこぶだ。だから、私を越えたいなら、野心を燃やせ。足りぬわ」


「ちっ」


 どう足掻いても、自分のことはお見通しというような、そんな父の姿が気に入らなかった。

 ギルムは椅子から立ち上がり、自分の席の奥にある、更に立派で高級な机と椅子に向かう父を見て、舌打ちをしながらその部屋を出ていった。


「あぁ!! 越えてやるよ、父上!! ただし私は、新たな銀河の神になりますがね……くく、くくくく、あはははは!!!!」


 誰もいない廊下には、そんな歪なギルムの笑い声が響いた。

ミルディアの総督は、今だ健在。


そんな中、コノエは自分の生い立ちを思い返し、何か不自然な点と、謎の安心感をコート女医に感じていた。彼女は何者で、いったい何故自分をこんな姿にしたのか、疑問が沸いてきていた。


次回「9 休息中の戦士達」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ