7 シャワー中には定番である
DEEP同士の激突により、更なる激闘が予想されたが、相手に遊ばれていたのか、お互いに起動時間を越えてしまい、引き分けとなった。
一旦猛虎を退けるも、コノエ達に疲れは溜まっていた。
何とかあの地域から離脱する事が出来た僕達は、一旦休息をするため、数キロ先の海上にある、この軍の施設へと向かう事になった。
今回みたいな事があった場合、機体が少ないのでは話にならない。この戦艦の厳つさから、仕掛けてくる者は少ないのではと考えていたようだが、ちょっと見立てが甘かったみたいで、僕とあの機体があるという時点で、敵国にとってはこの戦艦は脅威となる。
そうなると、先の戦闘から、墜とすなら今だろうと、仕掛けてくる奴が後を立たなくなるかも知れない。
僕を一旦引き取った時点で、戦力を整えておく必要があった。けれど……。
「お前に、それだけの価値があるとは思えなかったのだ」
「ですよねぇ」
僕にそれだけの護衛がいるかどうか。という話でもあって、まぁ普通はいらないよね、って判断になる。こっそりと戦艦に匿った時点で、相手には気付かれにくかったはずだ。
ただ、あの街で会ってしまったんだ。敵国の部隊の隊長と、戦闘しか頭にないイカれたケモナーに。
そして、そんな僕達のいた街に、あの戦艦もあったとなると、そりゃバレる。それならいっその事と、艦長はあの時僕を出撃させた。となるとあとは。
「ここから先は、戦闘が激化するな。何せ、こんな戦艦だ。隠れて航行はできん。ただ、戦力を整えれば、一国を落とせる力があるのも、この戦艦の特徴だ。ということは?」
「その海上の軍事施設に着く前に、何としても……ですね」
「その通りだ。コルク」
更衣室で、レイラ教官とコルクがそう話す。
あと、2人はいそいそとボディスーツを脱ぎ、殆ど紐に近い下着姿になっている。本当、目のやり場に困る。
「何してるの? コノエ。次の戦闘まで間がないかも知れないのよ? 早くシャワーで汗を流してーー」
「いや、あのさ……だからさ、僕は男だってば!」
何回言わせれば気が済むんだろう。心は男のままだから、2人のそんな姿を見たら、動揺するに決まってるんだよ。
「まだそんな事を言うのか」
「やれやれ、仕方ないわねぇ~仕切りはあるんだから、私達が先に行くわ。それでいいでしょう?」
「あ、ありがとう……」
2人はそう言って、先にシャワーを浴びに行った。それなら、2人の姿を見ることはないから、まぁいいだろうけれど、自分の姿は見ないといけないんだよな。
「うっ……」
ボディスーツを脱ぎ、布面積の少ない、紐みたいな下着姿の自分の身体が、僕の目に映る。
正直言うと、男の時は女性とそういう関係になった事はない。だから、余計にドキドキしてしまうんだ。
白い肌に、スラッとした身体つき。指を這わすと、スルッとしていて柔らかな感触まで返ってくる。これが女性の身体なのかと眺めてしまうけれど、我に返った僕は恥ずかしくなって、急いで下着も脱いでタオルで隠し、シャワー室へ入った。
出来るだけ見ない、出来るだけ見ない。って言い聞かせながらだから、変な奴に思われてしまうよ。
「あら、しっかりと自分の身体確認した? それとコノエ。あなた男の時、女性経験無かったの?」
「ぶっ……! なんて事言うんだ、コルク!」
「良いじゃない。私は以前も女だったし、男が女性になるなんて、どんな感覚でどんな気持ちなのか、知りたいのよね~」
シャワーを浴びている2人の後ろを通ったら、コルクから飛んでもない事を言われてしまった。
さっきまでの事、見られていたんじゃないだろうか……そんな気になってしまうよ。
「何なら、私が相手してあげよっか?」
「結構です!」
何なんだこの子は、そんな事を簡単に言うなんて。しかも、今はシャワー中で、お互いに服を着ていないんだから、そういう発言は止めて欲しいよ。
「コルク。あんまりコノエをからかうな」
「はぁ~い」
コルクはしっかりしているのか、こうやってガス抜きしているのか……良く分からないな。とにかく、レイラ教官もいるんだから、そうそうおかしな事はしてこないだろう。
僕はそそくさと空いているシャワー室に向かい、真ん中だけの扉を開き、中に入った。
これ、両サイドには一応仕切りはあるけれど、それも上は空いているし、会話は出来るとは言うものの、見ようと思えば見れるよな。あと、扉は真ん中だけだから、胸とかお尻の近くも見えちゃうよ。
もういい、サッと浴びて、直ぐに戻ればいい。そう思ってタオルを取った僕は、まじまじと自分の身体を見てしまった。
今までもちょくちょく見てはいたけれど、変な気になりそうだから、極力見ないように努めていたんだ。
コルクが変な事言うから、ちょっと気になっちゃったじゃないか。
あの男も、僕の事を一目惚れしたって言うし、僕なんかのどこが……と思っていたけれど、確かに身体つきは、細すぎるわけもなく太すぎる事もなく、スラッとした肉付きに、筋肉が程よく付いていてイイ感じだ。訓練していたからかな。
胸も、ペッタンではなくてある程度あるし、綺麗にツンと上を向いているのも中々だ。
お尻も、訓練しているからしっかりと上を向いていて、垂れていない綺麗な形をしている。
「……僕がまだ男だったら、惚れてるな」
身体を触りながら、そうボソッと呟いているとーー
「なぁ~んだ。やっぱり興味あるんじゃない~」
「ふぬぉああ!!??」
扉の方からコルクが声をかけていて、何なら身を乗り出して扉から覗きこんでいた。
「いつから?! いつの間に!?」
「あなたが入って、身体を触りだしてからね~」
「ほぼ最初から!?」
そんな最初から見ていたなら、声をかけて欲しかったよ。恥ずかしい所を全部見られた! 最悪だ。
「別に、そういう意味ではーー」
「良いではないか。自分の身体を知り、興味があるなら実践あるのみで、理解を深めるのもまた、自信の表れにもなる。兵としても、より有力になる」
何だか、もう1人の声も聞こえたんだけれど……怖いから、コルクが話しかけてから後ろを向いてないんだけれど、これは確実に、レイラ教官まで……。
「なんなら、私も手取り足取りーー」
「もう良いです、もう良いですから。レイラ教官!」
この人までこんな事を言うとは思わなかったよ。思わず叫んでしまったし、2人の方を振り向いちゃったよ。
すりガラス越しだから、全部は分からなかったけれど、レイラ教官はやっぱり凄くスタイルが良い。胸も大きくて、腰もしっかりと括れていて、お尻も大きい。筋肉もしっかりとある。
コルクは……まぁ、あるのはあるけれど、僕ほどじゃなかった。あとは、モデル顔負けのスタイルはしているから、それはそれで魅力的だね。
「なにか言いたいわけ~?」
「いや、何でもない。良い身体つきしているよ」
「あっそ。それなら良いけど。というかコノエ、早く身体洗いなさいよ。これからの事で、レイラ隊長から話があるのよ」
「は~い。って、え? 隊長?」
コルクに言われて、慌ててシャワーに手をやったけれど、その後に言われた事で手を止めてしまった。
「あぁ、そうだ。コノエ=イーリア、コルク=パニーニャ。そして、この私レイラ=バルクウッドの3名で、隊として動く事になった。よって、私は隊長となるため、今後はそう呼ぶように。それと、2人にも一時的だが、階級が渡される事になる」
そうか……僕達は、隊として動く事になるのか。確かにその方が、これからは動きやすいだろうね。
「当然だけど、私が上よ。胸の大きさなんて関係ないからね」
「いや、それはそうだけど。胸関係ないし、僕達は同じ訓練兵だよ? そりゃ、成績の方は君が上だけど……」
「胸はあなたが上って言いたいの? 言うわね」
「そうは言ってない!」
ややこしい捉え方するな。この子は……。
「2人とも止めろ。どっちも同じ二等兵だ。一応、戦場に出て戦果は出したから、その位置だ。それと、胸なら私の方が上だ」
「さらっと参戦しないで下さい! 隊長!」
胸を張って威張っている場合じゃないんだよ。そんな事したら、コルクの嫉妬の視線がーー
「あ~お疲れ様です~とりあえず異常がないので、私も休憩がてらシャワーを頂きに~」
と、そんな事をしていたら、ツグミも入ってきたけれど……うん、まぁ……この子はね、揺れてるんだよ。効果音が付きそうな程に、揺れてるの。
「あっ、きゃぁ!?」
しかも、ドジっ子なのが素なのか、そのままツルッと滑って前に倒れたんだけれど、胸がクッションみたいになってさ、殆ど怪我も無かったみたいだ。膝は打ったみたいだけれど。
「いたたた……あ、胸大きくて良かった~肩凝って嫌だけれど、こういう時助かる~」
「へぇ~贅沢な悩みね~なってみたいわ~肩こり~」
「そうだなぁ」
ほら、2人の闘志に火を付けちゃったよ。
しかもその後、胸は大きさじゃないとか、2人が喧々囂々としていたけれど、そんなの放っといて僕はシャワーを浴びた。
一旦退いたグランツは、軍艦へと戻り状況を報告していた。一方で、ミルディア皇国ではゲリラ部隊の対応に追われていた。
次回「8 ミルディア皇国の内情」




