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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
102/105

19 白馬の王子?

ジ・アークが艦首砲を放とうとしている。機体が限界に近づく中、コノエはただ1人でその砲撃を止める為に動く。

 ジ・アークは上空へと上がって、船首にエネルギーを集中させている。バッゲイアで一度見た、あの艦首砲を撃つ気だ。海面でも沢山のミルディア機を撃墜させた程の威力を、上空から真下になんてイカれている。どれだけの被害が出るのか分からない。


 だからって、諦めなんかしない。

 例えシナプスの両腕が使えなくても、この尾と脚があれば、何とでもなるんだ。


「ごめん、シナプス。あとちょっとだけ無茶するよ」


 時間切れの心配はない、D・Aシステムは常にフル稼働だけれど、当然そんな良いことばかりじゃない。


「つぅ……!!」


 痛みは数倍になって返ってくるし、疲労感や息苦しさまで出てくる。機体の限界は無くても、パイロットの方への負担が半端なくなる。それがこのシステム。だからどちらにしても、そう長時間は持たない。だから、これで決めないといけない!


 相手戦力の中枢、ジ・アークを墜とす。


『おやおや、どこを狙っているのですか? 私があなたをーーくっ?!』


 あぁ、あなたの相手もしたいけれど、それは別の人達に任せるしかない。

 そう、リッヒ・ヴァイツァーが急降下して来て、バルドザックの機体に攻撃してきたんだ。


『そこの機体。それは確実に戦力に勝るものだ。何故、我々の目を欺いて作れていたのかは後で尋問するにしてだ、先ずは捕らえさせて貰おうか。そちらの真意等はいらん。我々に対する侮辱なのだからな!』


『あ〜面倒くさいですねぇ。あなた達が現れてから、私もストレスが溜まっているのですよ。好きな景色を見られず、生温いドブ沼にでも浸かっているようなこの世界の様相に、吐き気をも通り越して鬱ですよ……』


『ならば勝手に自決でもすればどうだ? 貴様はそれすら反吐だろうがな』


『えぇ、そうですねぇ。ですから、一石どころか巨石でも投じないと、このストレスは解消されませんよぉ!!!! そこに応じてくれたのが、皮肉にも捨てられた国だというのは、なんともはやですが。今の私にとってはそれすらどうでも良いですよ。戦争出来れば何処にでも付きますよぉ!!!!』


『下の下のゲス野郎が。その声を私の耳に入れることすらおぞましいわ!』


『高尚なものですねぇ!! 天使様はぁ!!』


 どうやらバルドザックは、向こうに意識がいったみたいだ。いい具合に標的になってくれるなんて……いや、あのリッヒ・ヴァイツァーという機体だけは、他の天使の機体とは違って、羽の数が多い。その分、その羽からのビーム攻撃やビームシールドの展開等は群を抜いている。あの一機だけで、一個師団は叩けそうな程だよ。


 あと、多分気が付いているね。僕が、ジ・アークの砲撃を何とかしようとしているのが。

 それに賭けた? いや、あの人達は僕すらも下として捕まえようとするだろうし、そんな賭けなんてと思うけれど、もう今はこの状況に賭けるしかない。


「ふぅ、ふぅ……すぅぅ、はぁー」


 痛みを堪え、大きく息を吸い込み、そして吐き出し、キッと上空を睨む。

 シナプスをケモノ型にして、後ろ脚に力を入れる。腱が切れたような痛みが走ったけれど、知ったことか。


「あぁぁぁぁ!!!!」


 それから大きく後ろ脚で地面を蹴り、上空へと飛び上がると、尻尾のショットガンを撃ち、更に勢いをつける。


 当然それに気が付いたジ・アークの艦員が、オペレーターを通して全体に報告をしてくる。


『総員、その狐を止めろ!』


 その声はツグミじゃなかった。

 もちろん、他の奴がそれを変わっている可能性はあるし、あの中で捕まっているだけの可能性もある。アルフの事もあるし、だからってわけじゃない。


 流石に轟沈は無理。だからーー


「やぁぁぁぁ!!!!」 


 ケモノ型で口に予備のレーザーナイフを咥え、尾のショットガンで軌道を修正、ついでに相手機体の攻撃も避ける。

 ナイト・ユニットの補助機体、ソルジャー・ユニットはあの盾が無い。小型のレーザーライフルと、レーザーランスだけ、だから攻撃も単調だ。避けやすい。


 問題なのはビースト・ユニットの特殊部隊、あのRE・BEASTARだけど、どういう訳かここまで迫ってもまだ現れない。それならそれで良いけどね、そっちの都合なのだろうけれど……。


『コノエ・イーリア。貴様、この戦艦を落とす気か!』


 そして、僕が攻撃可能範囲に入った瞬間、スピーカーからジュイルの声が聞こえてくる。焦ってはいないけれど、これは予定外なのだろう。


「流石に落とせないよ。だからって、このままソレを撃たせる気はないよ。僕の大切な居場所も人も、何もかもを奪おうとするその砲撃だけは、やらせないよ」


 それから僕は、脚のホバーから可能な限りの風圧を出し、機体を縦にし、尾の表面にエネルギーの刃を纏わせ、それを太く長く、巨大なものにしていく。


『この艦には、まだアルフが乗っているぞ。良いのか? 殺してしまうぞ。もしくは見殺しか?』


「…………彼だけか。それなら良いや。僕も、短い間だったけれど、彼がどういう人かってのは分かる。こういう時、彼はこう言うよーー」


「構わずやれ」

『構わずやれ』


 向こうも同じように言ってきたよ。


『私の方が彼とは長い。腹立たしいものだ、こうも上手くいかないとなると、冷静さを失ってしまう。そして、失ってはいけないものまで失ってしまう』


 彼がどう言おうと、僕の中では彼は最悪なんだ。だから容赦なくーー


「はぁぁっ!!!! 切れろぉ!!」


 ジ・アークの左前方にある大きな翼を、一刀両断した。


『くっ!!!!』


 その瞬間から、戦艦内の緊急のブザーが鳴り響くのが聞こえてくる。


『普通に切れるものではないのだぞ! 宇宙を航行する翼だ。そう簡単に切れては困るからな。それなのに、それを叩き斬るとは……!!』


 あぁ、だけど。残ったエネルギーの大半を使ってしまった。それだけ大きく分厚い刃を作る必要があったんだ。


 ジ・アークは傾き、艦首は最早撃てない。いや、撃てるけれど危険過ぎる。この状態だと、その艦まで巻き込まれる可能性があるから。


「……着地、考えてなかった」


 ホバーの方すら停止して、当然ながらDEEPも、D・Aシステムも切れた。真っ逆さまに落ちてる。


『くぅ! 予備の浮力システムと本体のブースターを起動させろ! RE・BEASTARの到着は!?』


『それが、本国と連絡がつかず……どうなっているか不明です!』


『何だと!? どうなっている!!』


 向こうで何かあったのかな? やっぱりアルツェイトは1枚岩じゃない分、こういう事が発生しやすいみたいだ。流石にジュイルも焦りに焦っている。


 ついでに、僕の方はもう地面が間近だ。しかも、ユニット部隊が僕に標準を定めている。


 終わり……か。


 そう思うけれど、何故か恐怖や絶望とか、そういうものが湧いてこない。

 一度経験があるような、ないような……いや、経験していたら尚更じゃないかな?


 それなのに、どうして?


『……を!! 死なせはしない! 諦めるな コノエ・イーリア』


 すると、突然スピーカーから、別の男性の声が聞こえてきたけれど、それが誰かは直ぐに分かった。


 下のユニット機体が、黒い閃光の様なものに次々と撃破されていく。


「オル、グ……??」


『あぁ、来たぞ。コノエ。君らしくないな、そんな達観して死を受け入れるとは』


 いや、なんで……なんであなたが? こんな所に、ミルディアまで参戦したら、更にとんでもない事になるじゃないか!


「なんで来てるの!? あなたまで来たら、ミルディアが!!」


『い〜や。私は休暇中だ。ただ、その時偶々に戦闘を見つけ、これまた偶々に想いを寄せる人を見つけ、助け出す為に機体を使っただけだ。つまり、人命救助だ!』


 もうむちゃくちゃな理論だよ! そんなの通るわけがーー


『なるほど、それなら仕方ないですね』


 ーーって、通ってるし!


 例のリッヒ・ヴァイツァーから、シャイン中将の声が聞こえ、オルグの釈明を了承してきた。


『舐めないでください。黒い凶星に戦闘意思がないことはハッキリ分かります。それに彼の立場上、それ以上の事は出来ないでしょうからね』


 それから、オルグは軽く浮遊してから僕の機体をしっかりと掴み、静かに着地した。


『オルグ・バーシアス。あなたですか……あなたまで邪魔をしてくるならーー』


『おや? 見えていないのですか? 自分の現状が。流石のクズですね』


『くぅっ!』


 しかもよく見たら、リッヒ・ヴァイツァーがバルドザックの機体両腕を切り落としていた。


 えっ、強すぎる……。

艦首砲は止めた。バルドザックもシャインの攻撃で追い詰められる。戦いは終息へと向かっていく。


誰もが予想していない方向に。


次回 「20 お姉ちゃん」

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