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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
100/105

17 甘さは捨てろ

守りたかった。守れなかった。自責の念も何もかも吹き飛ぶ程に、コノエは怒っている。ジ・アークに。


そして、一番最悪の戦闘が幕を開ける。

 燃える業火と巨大戦艦、そしてPNDの天使部隊。


 PNDの部隊は、戦争でもするのかってくらい、物凄い数の機体を投入してきた。この中で生き残るのは、至難の業だろう。

 しかも目の前には、機体の雰囲気も言葉遣いも様変わりしたレイラが立ち塞がる。サーリャの方はガイナバさんが相手をしているけれど、あの小さな機体でどこまでやれるんだろう?


『コノエ……!!』


「レイラた……いや、レイラさん。これは、本当にあなたが望んでやったのですか!?」


 以前の彼女なら、こんな非道な事をするなんて思えない。だから僕は、彼女に対してそう叫ぶ。


『そうだ。戦争を引き起こす不穏分子は、徹底的に潰す!』


「そう決まっていないのに、決めつけるんだね。だけど、あなた達はやりすぎた!」


 彼女が叫ぶと同時に、レーザーライフルで撃ってくる。それを僕は避け、同じように叫びながらレーザーライフルで反撃する。

 当然彼女も避けるけれど、その直後に上空から広範囲に渡って、ビーム兵器による攻撃が降り注いでくる。


「うわっと……!」


『くっ……!! こちらまで?!』


 そりゃ戦闘どころか、戦争にでも発展しかねない程の争いだからね、しかもそっちは巨大戦艦を持ち出している。


 恐らく制裁は、双方だろうね。


『この場での激しい戦闘を確認、何をしているアルツェイト!』


 凛とした声だけど、それでも威圧感満載の女性の声に、皆一瞬攻撃の手を止めた。ただ、直ぐにまた攻撃を再開しているけどね。


 そしてPND部隊の、天使みたいな機体の一体から放たれた女性の声に、ジ・アークのジュイルが返答する。


『お待ち下さい! 我々は、戦火を広げんとする不穏分子を片付ける為、やむを得ず部隊を投入しーー』


『民間人を犠牲にしてか? やはり貴様等は下だ。野蛮も野蛮。その巨大な戦艦も、何の為にここに持ってきている! その必要があるのか?!』


『それは、それだけ危険な存在がいるからです! 四皇機のレプリカとはいえ、その性能を宿し、その機能を存分に発揮させている、コノエ=イーリアという危険分子が!! ジ・アークでないと、そこまでの用意をしておかないと、倒せぬかもしれないのです!』


 なるほど。そうきたか。


 何でこんな危険をおかしてまで、ジ・アークを持って来たのか。

 僕を使って、その巨大戦艦の有用性でもアピールして、今後も安心して使っていこうとでも考えているのだろうね。


 逆に言うと、それだけ僕を過小評価せずにいる。それは僕にとって、動きづらいことにもなる。


 その通りにいけばーーだけどね。


『そこの狐の機体1機に対して用いる戦力ではないぞ。何を考えている、アルツェイト。そう考えると、この度の騒動も、お前等が率先しているのだろう!』


 アルツェイトは、PND部隊の事を過小評価し過ぎていないですか? まぁ、僕はそれどころじゃないんだけれどね。


『くっ! コノ……コノ、エぇ!!』


「レイラさん。正気に戻って下さい。いや、戻った所でもう……取り返しのつかないことになっている。だから、あなたが死んだとしてもいい! 僕は、僕の思うままに戦う!!」


 そう叫び、彼女の大型レーザーブレイドを尻尾で防ぎ、そこからショットガンで反撃をする。


『やってみろ!!』


 それを避けられても、また追撃でレーザーライフルを撃ち、脚に付いているレーザーソードで斬りつける。


 隙なんて見せないし、手も止めない。全力で、気力も体力も全て使い切るつもりで、彼女を倒すんだ。


『双方戦闘を止めろ! これ以上は強制執行で、両部隊を壊滅させるぞ!』


 天使の部隊も、それぞれに戦闘を止めさせようとしているけれど、ジ・アークからは戦闘停止の命令は出ない。


 それどころかーー


『ふぅ。まぁ、そうなるな。だからこそ……だよ。各員。これよりジ・アークは、不当な正義を掲げる偽天使共を打倒する。正念場だ。本当の正義の鉄槌を、あいつらにお見舞いしてやれぇ!!』


 と号令を掛け、騎士の様な機体とビースト・ユニット数十体以上が出撃、そしてPNDの部隊に攻撃を開始した。


 イカれている。今ここで……というか、ここまでを計算されていたのなら、僕達は完全に餌だ。


 本当ーー


「ふざけるな」


『なに……? がっ!?』


「ふざけるなふざけるな、ふざけるな!!」


 シナプスをヒト型に変形させ、レイラの機体に足蹴りをして吹き飛ばすと、レーザービームで足を撃ち抜いた。


『くそ……! 逆恨みか、コノエ!』


「意味が分からないよ。あなたが何で……いや、良い。普通じゃないあなたに、何を言ってもね。いったい何をされたのですか? アルフィング隊長は?」


『ふん。裏切り者同士通じ合うというのか。奴なら捕らえて牢に放り込まれている。艦長に任せているから、どうなっているかは知らんがな』


「……そう」


 僕は怒っている。怒っているはずなのに、冷静に頭が働く。身体も動く。何だろう、これは。怒りの使い方を分かっている、この感覚は……。


 そうだ。以前も、この身体になる前もーー


「……っ!?」


『手を止めてどうした?! コノエ!』


 昔の光景が頭に浮かんだ所で、ヒト型に変形したレイラの機体が、僕に向かって小型のレーザー銃を撃ってきた。その後に、腕に付いているレーザーソードで斬りつけてきている。


 僕も体勢を立て直した後、レイラのレーザーソードを、同じレーザーソードで受け止める。


『さっきは怒っていたようだったが? 情緒不安定か? キレがないな!』


「……怒っているよ。怒っている。だからって、怒りに任せて力を振りかざすのはーー違う!」


『なっ……に? ぐぁぁぁぁ!!!!』


 尾のショットガンは警戒していただろうけれど、甘いよ。だからこそ、普段とは違う撃ち方をしたんだ。

 尾の尖端をレイラに向け、側面にある銃口だけを動かして撃ったんだ。普段と違い、弾がバラけるのではなく、一点集中の強火力砲火。物凄い衝撃とともに機体が損壊し、レイラは吹っ飛んでいった。


 こんな使い方も思い出したんだ。シナプス。君と駆ったあの戦いを。


『PNDは、ジ・アークに戦力を集中させろ! 他は一旦捨て置け!』


 そして天使の部隊は、ジ・アークと戦闘を開始した。ガイナバさんは、サーリャを翻弄させているけれど、僕がレイラを吹き飛ばした事で、彼女もこっちを意識し始めている。

 と言っても、ガイナバさんの動きも凄い。ただ、あの機体では限界があるだろうし、手助けを……と思って動こうとしたら、ジ・アークから出撃したビースト・ユニットの部隊が、僕の目の前に着地した。


『レイラ隊長を凌ぐなんて! だが、我々は特殊な任務の為に鍛えられた精鋭! 貴様らとは違うぞ!』


 そう言いながら、ビースト・ユニットの部隊は僕を囲む。


 なるほど。レイラの部隊、つまり僕達の後釜。そんな言い方になるくらい、もうアルツェイトには思い入れもなくなったよ。


 うん、異常だったね。あなたの言う通りだったかも、オルグ。そんな所にしばらく身を寄せていたなんて。


 とはいえ、全員が全員じゃないだろうし、もちろんあそこで仲良くなった人達がいる。

 その人達まで同じとは限らないし、当然心配ではあるよ。レイラと同じ様な事をされていたら、僕の目の前に……いや、ツグミはきっと今も、ジ・アークに……あの戦艦の、オペレーターをしているだろう。


「…………」


 ああ、いけないな。そう考えたらジ・アークを落とせなくなってくる。だからって、負けるわけにはいかないし、手も抜くわけにはいかない。状況が分からないから、今はただ……情を、捨てないと!


『え? うわぁっ!?』


『ぎゃぁっ!!』


『ひ、ぁ……うぁぁぁぁ!!』


 機体の身を低く屈め、狐の如きしなやかさでレーザーソードを振るう。

 そして、僕を囲んでいた機体3体を切り裂き撃墜させる。当然、脱出させる前にコクピットごとね。


 甘さは捨てろ。


 戦場にはいらない!


『お、おのれ……コ、コノ……エ……ぐっ、ゲボ……』


 当然、元仲間だろうと。

甘さを捨て、敵機体を撃墜するコノエ。覚悟を決めた彼女を前に、ジ・アークのケモナー達はなす術なくやられていく。だが、あの男はまだ、苦痛を欲していた。


次回 「18 新たな死神」

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