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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE 1
10/105

3 邂逅

女の子らしくされてしまったコノエは、それでも自分は男なんだと言い聞かせ、コルクと街を歩いていた。しかし、そこに不審な男性が2人の後をつけていて……。

 僕達は適当な店を選び、その中に入ってカウンター席に座り、メニュー表を受け取ると、同じく後ろから入って来たサングラスの男性を意識しながら、メニュー表を立て、その中で隠れながらヒソヒソと話をする。


「あんまり怪しい行動してもだし、ここからは普通にするわよ」


「分かってるよ。ただ、相手にもバレているなら、何でこっちに来ないの?」


「さぁねぇ、何か探っているような、そんな感じね~」


 一体何を探っているのやら、良く分からないんだけれど、他国の軍人とかだとしたら、ケモナーである僕達を処分する為、人通りの少ない所に行くのを待っている……のかも知れない。それなら、食べ終えたらそそくさと艦に戻った方が良い。


 ただあの艦も、レイラ教官の休暇に伴って、僕の居た施設の近くの軍事施設で、長期メンテナンスをしていたようで、長い間動いていなかったし、武装はともかく、機体に関してはほぼ用意していなかったみたいだ。そうなると、増援もそんなに期待出来ないな。


 しかも、そんな時に先日の襲撃があり、艦長の独断によって、あの艦を動かしたようだ。

 更にあの場所も、どうやら非戦闘地域だったらしく、ここ最近は穏やかだったようだ。


 僕の知らないところで、色々と不穏な動きが起こっているみたいだ。

 どちらが先に先手を打つか、そんな探りあいが起こっているのなら、僕はとんだとばっちりを受けたことになるし、こんな時代に蘇生されてしまっていい迷惑だよ。


 自分の生きる意味、目的。それを与えてくれるとはいえ、こんなギスギスピリピリしたのじゃなく……って、戦争なんてどの時代でもこんな感じだったのかも。


「はぁ……」


「で、な~にため息ついてるのよ? 嫌なら軍辞める?」


「いやいや、やりますやります」


「全くもう。元男なら、もっとしっかりしなさいよ!」


「は~い」


 そうはいっても、これは誰だって緊張するし、胃も痛くなるよ。と思っていたら、まさかの僕の横からその男性が話しかけてきた。


「失礼。良ければ、ここは奢らせて貰えないか?」


「はい!?」


「えっ?!」


 2人してそんな声を上げてもおかしくないくらい、意外な事を言ってきたんだ。


 奢る? 何で?! いったいどういう意図でそんなことを……しかも、初対面の女性にとかあり得ないよ。


「あぁ、いや失礼。ついね……そちらの、狐のお嬢さんが気になってしまってね。2人ともケモナーで、軍の関係者なのも分かっているし、私にも気付いていたね?」


「…………」


「…………」


 それに対して変な受け答えをするのもだし、予想外の接触だったから、とりあえずは無言で頷くしかなかった。


 その後男性は、僕達の隣の席に座り、店員に注文を頼んでいた。


「何がいい?」


「……この、ニューシチルパスタ」


「……ふぅ、私はビッグビックバーガー」


 なんかメニューからして良く分からないけれど、写真を見るとシーフードパスタっぽかったから、それにした。コルクのも、結構大きめのハンバーガーだったよ。


 それから、サングラスの男性が注文をすると、再びこちらを見て言ってきた。


「緊張するのも仕方ないが、ここで騒ぎを起こしても、誰も何も得しない。先ずは、私の話を聞いて欲しい」


 淡々と話す男性に、僕達は警戒しながら聞いている。けれど、僕だけはこいつの声に聞き覚えがあった。どこだったか……本当につい最近で、と思ったところで思い出した。


 こいつ、2週間前に襲撃して来た、あの黒いハコ機に乗っていたパイロットの声とソックリだ。いや、本人か? こんな所で会うなんて……どうしたら。


 ◇ ◇ ◇


 食事が出され、僕達は緊張しながらそれを食べる。

 サングラスの男性の方は、コーヒーにサンドイッチみたいなものだけれど、間に挟んであるのが中々に美味しそうなカツだったよ。


「ここは海沿いで、海の幸が豊富だが、一方で丘の方は放牧等も盛んでね。肉等も、美味なものが多い。そうだな、小さなボートで優雅に2人で……というのも悪くない」


「はぁ、なるほど……」


 そして何故か、コルクじゃなくて僕にばかり話しかけてくる。何でだ……やっぱり、こいつも気付いているのか? だから、こんなにも……。


「君は、人間だった頃はどういう?」


「あ~男性でして。地球……って言っても分からないかな? 遥か昔に、そこで亡くなったけれど、今の時代にケモナーとして蘇生されました」


「地球? なるほど、またここから遠い……そうか。そこから遺体を運ばれて、処置をされたのか。どうやら違うようだな」


「違う? いったい何が……?」


 コーヒーを一口飲み、どこか安心したような、困惑もしているような表情を見せた男性は、意外な事を粒やいてきた。


「それで分かったよ。例の『DEEP計画』の犠牲者か。あの計画は、施設ごと私達が破壊したのだが、逃げ延びた者がいたのだな。先の戦闘も、これで納得がいった。可哀想に」


 可哀想? それは、いったい何の基準で語っているんだ。僕にとってはどれもピンと来ないし、悲観もしていないよ。


「あのさ。可哀想ってのは、悲観している人だけに言ってくれる? 僕は悲観もしていない」


 幸い、横のコルクには聞こえていない。というか、バーガー食べるのに必死で、こっちの事は気にしてもいない。

 おいおい、何でそんなの頼んだんだ? 緊張していたから、適当なものでも選んじゃったのか……頼むから、こっちにも意識を向けてくれ。「こんなはずじゃ……」って言いながら、口の周りをベチャベチャにするなよ。待てよ、その手があったか。


「あ~もう、コルク。口の周りベチャベチャだよ」


「むぅ、あっ……ごめんなさい」


 やっと気がついたか……口元をナプキン拭いてやったら、今の状況を思い出して、サングラスの男性を睨み付け始めたよ。でもな、まだそこまで険悪じゃないから。


「ふっ、そういうところもソックリだな。目付きは違うが、私の亡きフィアンセにソックリだ。思わず声をかけてしまって、申し訳ない」


 そういう理由だったのか。それでも、こうやって声をかけて、色々と僕の事情まで聞いて、いったい何が狙いでーー


「だから、君を保護したかった。私は君に一目惚れをしてしまった。更には、例の計画の犠牲者ときたものだ。なおさら、私達の所で保護をしたい」


 それが、狙いか。

 僕を保護する。つまりそれは、あの機体ごと僕を手に入れるつもりだ。一目惚れだとか言って、そんなのでは、今時の乙女でもときめかないだろうに。僕は男だから、そんな言葉は寒気がするだけだ。


「悪いけれど、僕は男だったんだよ。そんな言葉、寒気がするだけだ。あなたは同性愛の気でもあるの?」


「いやいや、今の君は女の子だ。女の子として生まれ変わっている。それなら、何の問題もなかろう。それとね、私は君とは戦いたくないんだ。またあの機体に乗るのなら、私と敵対することになる。それだけはーー」


 そこまで聞いた僕は、咄嗟にホルスターから銃を取り出し、セーフティを外して撃鉄を引いた。そのままサングラスの男性に突き付けるけど、相手は微動だにしない。


「浅いし若い。やはり君は、戦うべきではない。それは、人の命を奪うものだ。君に、その覚悟があるのかね? 手が震えているぞ」


「……うっ」


 確かに、どうしてここで銃なんかと思ったけれど、とにかく捕まえるなり倒すなりしないとーーって思ってしまった。だってこいつが、ほんの一瞬、僅かにだけれど、僕に殺気を放ってきたからだ。無意識に、銃を向けてしまったよ。


「何しているのよ、コノエ。それ、片付けなさい。あなたもね」


「いやはや、お連れは気付いていたか。君は、気付かない程に動揺したのかね?」


「えっ……?」


 良く見ると、サングラスの男性も、体の反対側、僕からは良く見えない所から、銃を構えて銃口をこちらに向けていた。


「この子は、まだ軍に入るかどうかも決まっていない。とりあえず訓練はしているけれど、まだ日は浅いのよ。護身用で持たされているだけ。あなたも、軍の関係者なのは分かったし、その子が気になるのは分かったけれど、争い事はここでは止めましょう」


「ふむ……なるほど。それならなおさら、君はあの機体に乗るべきではないな。次、戦場で君と出会ったら、私は容赦なく君を殺す。例え一目惚れだろうと、私はただの一介の兵士に過ぎない。分かったら、軍からは離れるんだ」


 そう言った後、店の中に入ってきた大柄な男性が、サングラスの男性を見つけると声をかけてきた。


「お~少佐。もういいか?」


「あぁ、もういいよ。見張りをありがとう、グランツ君」


 良く見ると、そいつもケモナーだった。

 虎の尻尾に虎の耳。ガタイの良さからして、相当強そうだぞ。


「んぁ? ケモナー2人か? へぇ、良いもん見つけたな、少佐」


「いやぁ、保護出来なかったよ。戦場で会うかも知れない。その時は、君の前にも現れるかもね」


「お? マジか? いやぁ、そりゃ~楽しみだ」


 何なんだこいつは……あからさまに、戦いたくてウズウズしている。自分にはそれしかないっていう感じで、あんまり近付きたくない雰囲気まである。


「あとそうだ。少佐。近くに潜伏している部隊を見つけたぜ。ゲリラっぽい」


「なに? そうか……ここも、か。君達も、早く戻りたまえ。ここは戦場になる」


「え?」


 だけどそれだけ言うと、サングラスの男性は足早にその場を立ち去っていった。僕に盛大なしこりを残していってね。


 その後しばらくしてから、外からの爆発音と衝撃が店内に響き渡った。

ゲリラ部隊がやって来ていると聞き、急いで艦に戻った2人は、早速艦長から出撃を言い渡される。ただ、教官からは待機するよう言われたコノエだったが、艦長からは意外な言葉が……。


次回「4 ゲリラ部隊急襲」

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