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森の奥の小さな村の小さな出来事

作者: ゆーく




森の奥に隠れるように小さな村がある

時の流れに逆らうようにしてその村は昔から自分たちの力だけで暮らしていた


村の目眩しのためには1人の巫女が必要である

それに選ばれたのは1人の少女

遊びを見つけるのがとても上手なその少女は明日、巫女となる



儀式を控えた前夜

眠る少女の傍に1人の少年が居た

少女と張り合うように遊びを見つけては自慢げに輝いていた瞳で今は静かに眠る少女を見下ろしている


少女は起きていた

瞼を閉じて凪いだ気持ちで静寂の夜を感じていた


目を開けていなくても少女は見られていることがわかった

見慣れた少年の瞳が今どこを見ているか

少女がまだ幼かった頃から知っている


あ、今、触れようか悩んでる


少年の視線の意味を知っていても少女は瞼を上げない

暫くただ黙って見つめていた少年は結局何もせずに腰をあげた

そこで少女は目を瞑りながらソッと少年の衣服を掴む



今までそういう目で見たことはない

閉ざされた小さな村の少ない遊び相手

特別仲が良かったわけでもないし寧ろぶつかるほうが多かった



…それでも





「忘れてるよ…」


「な、おまえ起きてたのか」


「ねぇ、忘れてる」


「…何を」



動揺した少年はけれど少女の静かな雰囲気にのまれた

口を噤み静かに膝をつくと少女を覗き込む


少女は目を瞑ったまま「ねぇ」と囁いた

寝言かと考えた少年はその囁きを聞こうと少女の口元に耳を近づけるために顔を近付ける


そこで少女は目を開けた



暗闇の中では互いの姿を見ることができない



それでも…



微かな月光を含む瞳で少女は静かに少年を見つめ、

少年も太陽の下では強く光る眼差しで少女を見つめた



互いの瞳の中に自分の存在を確認して、



少女と少年は


静かに唇を合わせた









明日、少女は巫女となる




少女はもう

少年の元には戻ってこない









むかしむかしあるところにー


これはそんな言葉で始まる物語










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