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私のカレはお父さん  作者: 烏川 ハル


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前編「デート」

   

「竜司のこと、これから『お父さん』って呼んでいい?」

 彼にそう言ってみたのは、ポカポカ陽気の日曜日、きれいな池のある公園を歩いている時だった。

 せっかく付き合い始めたのだから恋人に相応しい愛称を、という話題で出てきた言葉だったが、彼はそれを笑い飛ばす。

「なんでだよ。そういうのは、結婚して子供が出来てからの呼び方だろ。いくら何でも気が早すぎる」

 いや、むしろ気が早いのは竜司の方だろう。まだ私たちは高校生なのに、結婚なんて単語を口にするとは……。それに子供が出来る云々も、遠い未来の話だ。まだキスまでの関係であり、その先に進もうとしない二人なのだから。

 そんなことを考えてしまうが、あえて口には出さずに、

「そうかなあ。いいと思ったんだけど……」

 唇に指を当てながら、小さく首を傾ける私。

 無意識のうちによくやってしまう仕草だが、彼には、これがあざとく見えるらしい。前にそう言っていたし、今も何だか複雑な表情を浮かべている。

「可愛いらしい顔を作ってもダメだぞ。……というより、そんなのしか思いつかないなら、この話はナシだ。今まで通り『竜司』『真奈美』でいいじゃないか」

「うーん……。確かに呼び方なんて、無理して決めるものじゃなくて、自然に変わるものかもね」

 というわけで、この件は保留になったのだが。

 彼と手を繋ぎながら、ふと考えてしまう。

 なぜ私は竜司を『お父さん』と呼ぼうと思ったのだろう、と。


 私の父が亡くなったのは、十年以上も昔。まだ私が小さい頃だった。

 物心がつく前、とまでは言わないが、それでも幼かったので、あまり父のことは覚えていない。ただ、よくおんぶしてもらった、という記憶だけはあり、父の背中は温かくて大きかった、という印象が残っている。

 竜司は特に大柄というわけではないが、彼を後ろから見る度に、なぜか父のことが頭に浮かんでくるのだった。


 いや、そもそも。

 もしかしたら、私が竜司と付き合い始めたのは、彼を父と重ね合わせているからなのかもしれない。

 高校生にもなって恥ずかしい話だが、どうも『恋心』というものがよくわからないのだ。彼に対する気持ちも、本当に恋愛感情なのか、あるいは異性の親友に対するものなのか、はっきりしないのだった。

   

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