とりあえず3年後
さて前世の記憶が戻ってもさして生活も変わらずに3年が経った
今日は8歳になった子どもたちが全員受けるという魔力探査の日である
「魔力探査ってなにするんだろうなぁ・・・・」
とちょっと不安げにぼやいてみると父がこう言う
「ん?不安なのか?ぶっちゃけ石版に手を置いて祈るだけだぞ」
「そんなかんたんなの?」
「あぁ、まぁ平民は魔力が無いか微量かどっちかだしな、あんまり不安にならずともいいさ何も変わらんよ」
とあっけらかんとした表情で言い切った。
それでいいのか父よ・・・と思わなくもないが魔力があるのは大抵貴族ばかりで平民からは極稀(それでも1万人に1人くらいの割合らしいが)だそうなので自分も期待しない・・・・・わけにはいかない。
なんせ記憶の中ある異世界転生もののネット小説では異世界転生に対して魔力だのと言ったある種の特典がつくのは日常茶飯事レベルで目にしていたのである
自分もその一人だという期待を抱くなという方が難しいのだ
それに記憶の中の自分はこういう世界に行きたいと願いながら魔法も魔力もない無情な世界で生きていたのだ、生まれ変わってこの世界に来て魔力がないでは可哀想ではないかと思うのは人として当然であろう・・・・・当然であると思いたい。
そんなこんなで村の協会である
どうやら今年受けるのは俺一人だけらしい・・・・・寂しくなんて無いんだから・・・・!
・・・・・・・・・・・やっぱり精神引っ張られてないかな?大丈夫かな・・・・?
というかこういうのって幼馴染とかいるもんじゃないのかな、今まで気にしてなかったけど。
それに勇者とか言われてとんでもない大役を押し付けられるのだけは勘弁である。
「今年はグレンだけか」
「はい、今年8歳になるのは僕だけです」
協会(なに教の教会ではなく協会である、でもなにを協力する会なのかは不明であるが孤児院も兼ねている)の司祭様から声をかけられ俺は背筋を伸ばす
「ではそこの石版に手のひらをつけ祈るのだ」
「はい」
と置かれた石版に手のひらをつく
石版は手のひらの形をしたくぼみとなんかよくわからない文字の羅列があった、日本語じゃないんかいと心のなかでツっこんだ俺は何一つ悪くないと思う。
さて心のなかでそんなツッコミをしている間に石版が光り始めた
祈らないといけないんだっけとか思いつつ何に祈るんだ・・・?と思いつつ形だけでも祈ってみると司祭が驚嘆し始めた
「前代未聞だ・・・・・」
はい?前代未聞・・・・?もしかしてなんかあったのかなと祈るふりをして閉じた目を開くと石版に刻まれた文字がすべて光っている
「眩しい・・・・」
思わずそう呟くと司祭が止めてきた
「もう良い、十分だ。平民からこれほどの魔力がある者が出るのは何年ぶりか・・・・・
領主様に伝えねばならぬ、家で沙汰を待つが良い」
「・・・・・・?はい、わかりました」
イマイチなにがあったのかは伝わらなかったが前代未聞ではあるらしい
転生特典は実在したことに満足して司祭に礼を言い俺は自宅へと戻った