噂の生徒会長
お父さんに負けてからもずっと一人で[聖拳]をひたすらプレイした。
明日も学校があるのを忘れて、外が明るくなるまでプレイしていた。
気付くともう学校の登校時間になっていた。
慌てて制服を着て家を出る。
家を出ると丁度、渚沙も登校する頃だった。
「渚沙、おはよう」
「謙、おはよう」
渚沙も少し慌てた様子だった。
一緒に登校する事になった。
「謙、目の下にクマができてるよ」
「昨日、渚沙に負けた後にお父さんにも負けて悔しくてずっと[聖拳]をしてたんだよ」
渚沙は嬉しそうな顔で言った。
「またゲームを始めてくれたんだね」
「もう誰にも負けたくないからね」
またゲームをやろうと思えたのは渚沙が誘ってくれたからだ。
だが渚沙には恥ずかしくて言えないし、プロゲーマーになりたい事も内緒にした。
色々と話し合っていると学校に着いた。
渚沙とは別のクラスで僕は自分のクラスの教室に向かう。
教室に入ると、もう一人の幼馴染みの東野翔太が話しかけてくる。
「おはよう、昨日は渚沙とゲームしたらしいな」
「な……何で知ってるんだよ?」
「昨日の夜に渚沙から電話がかかってきて、謙とゲームしたって嬉しそうに言ってたよ」
「そうなんだ、昨日は[聖拳]をやったんだ、負けちゃったけどね」
翔太は驚いていた。
「謙が[聖拳]で負けるなんてな」
僕が10年前に[Numbers fight]で優勝したのを知っている数少ない友人だ。
立ち話をしてるとチャイムが鳴った。
急いで僕は席に着いた。
ホームルームが始まり、10分程で終わり一限目の授業が始まる。
僕は殆どの授業で[聖拳]の事を考えていたが、昨日は特に寝てないので思わず寝てしまった。
チャイムが鳴り、昼休みになった。
昼ご飯はいつも翔太と渚沙の3人で屋上で食べていた。
いつもは素っ気ない話ばかりだったが今日は殆どゲームの話だった。
すると翔太が今思い出したみたいに言い出す。
「そういや、山田さんが[Greattime]って大会で優勝したらしいよ」
山田さんとは僕の高校の生徒会長で凄く真面目な人だ。
ゲームをする様な人だとは思ってなくて少々驚いた。
渚沙は不思議そうに質問する。
「その[Great time]って大会は凄い大会なの?」
僕は知っていたので答えた。
「[Great time]は日本でTOP10に入るぐらい大きな[聖拳]の大会だよ。参加プレイヤーも1000人は超える」
渚沙は驚いていた。
それはそうだろう。
山田生徒会長がゲームをしてるのも知らなかったし、大規模大会で優勝だなんて正直僕も驚いた。
話し合っていると予鈴が鳴る。
僕達は急いで各自の教室に戻り、昼からの授業が始まる。
僕は昼からの授業も寝て過ごしてしまった。
学校が終わるチャイムが鳴り家に帰ろうとしていた。
勿論帰ったら[聖拳]をする予定だ。
翔太はサッカー部だからゲームはできないし、今日は仕方なく一人でゲームをする事にした。
門を出ようとすると渚沙と生徒会長の山田さんが話し合っていた。
渚沙に声をかけようか迷ったが渚沙が困ってそうな顔をしていたので話しかける事にする。
すると渚沙は戸惑った顔で言う。
「謙…どうしよう……生徒会長の山田さんと[聖拳]で対戦する事になっちゃった。」
こうして渚沙は山田生徒会長と[聖拳]で闘う事になってしまった。