表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/81

限定解除

この作品を見つけてくれてありがとうございます。

楽しんでいただけたら幸いです。

外伝のEpisode0も掲載中ですので、そちらもお願いします。


「お前ら、あんまり俺のことリスペクトしてないからさ……特にアリス! お前な!」


 シャオロンは軽くストレッチをすると、アリスから刀を受け取り、持ち主のポニーテールの少女へと返す。


「イマイチ信用してないみたいだからな。ちょっと本気を出してやる。しっかり見ておけよ」


 刀を腰に戻したポニーテールの少女は、両足を広げ、静かに抜刀の構えに入る。


「怪我しても知らないからね、センセー」


「遠慮するな。――ついでに天草! お前も来い! 相手してやる!」


 突き出した手のひらで手招きし、眼鏡の青年を挑発するシャオロン。


「いいんすか? マジで行きますよ」


 青年は上着を脱ぎ捨て、獣化する。


 ――美しい黒毛のワーウルフ。


 前傾姿勢で、低く構えた。


「んじゃ、弁護士さん。審判よろしく!」


 ひらりと手を振り、シャオロン講師は私を指す。


「は、はい! それでは――はじめっ!」


 いきなり審判を任され、緊張で声が上ずった。


 


 私の合図と同時に飛び出したのは、ポニーテールの少女――渡辺安綱さん。


 赤星茜と堂々と渡り合っていた、S級のサムライガールだ。


 


 真剣で、生徒が教師に斬りかかる――島の外では明確な犯罪行為。


 だが、この島ではステアーズ同士の私闘は、両者の同意があればすべて自己責任とされる。


 


 アリスが収監されていた保安部も、日本の警察とは異なる治安組織だが、島内の犯罪の取り締まりを担っている。


 


 その保安部の駐車場で始まった私闘を、立番の隊員たちですら興味深そうに見つめていた。


 


 踏み込んだサムライガールの居合いは――三連撃。


 チン

 チン

 チン


 一撃ごとに、鋭く鯉口が鳴る。


 


 斬撃は――視えない。


 事務方の私に、追えるはずがない。


 耳に届くのは、ただ音だけ。


 


 狙いは、シャオロンの右腕。


 必中の三連撃が――


 右腕を三分割したように、視えた。


 


 バチッ――


 


 弾ける電流音。


 


 次の瞬間、再生した右腕が、納刀の隙を晒したサムライガールの顔面を掴み――


 そのまま、地面へと叩きつけた。


 


 ――刹那。


 


 彼女を庇うように、ワーウルフが飛び込む。


 下段回し蹴り。


 


 だがシャオロンは避けない。


 


 その蹴りを受ける瞬間、自らの下半身を稲妻へと変化させ――


 雷撃を、カウンターとして叩きつける。


 


 バチッ――バチィィン!


 


 電撃により、四つん這いの体勢で硬直するワーウルフ。


 


 シャオロンはそのまま放電する拳を振りかぶり――


 後頭部へ叩き込む。


 


 雷を纏った、渾身の一撃。


 


「グハッ!」


 


 感電したまま、完全に動きを止めるワーウルフ。


 


「……と、まぁ、こんなもんだ。どうだった、アリス?」


 


 太ももを軽く叩きながら、シャオロンは挑戦的な視線を向ける。


 


「今の……先生のやったことが、私にも出来るの?」


「お前の両親も到達できなかった境地だ。簡単じゃない……が、不可能じゃない」


 


「マジか!」


 


 何事もなかったかのように、ワーウルフが跳ね起きる。


 ゆっくりと人の姿へと戻りながら――


 


「ってことは、アリスがあれ出来るようになったら、俺たちと一緒にオーバー40のリザーブ枠、入れる可能性あるよな!?」


 


 天満君はメガネをかけ直し、期待に満ちた目で講師を見る。


 


「アンタ、一発でやられて何嬉しそうに言ってんのよ!」


「お前だって同じだろ! 安綱のほうが先だったろ!?」


 


 二人のやり取りは、まるで夫婦漫才のようだ。


 


「ねぇねぇ先生、俺とはやってくれないの?」


 銀髪の美少年が、悪戯っぽく笑う。


 


「ニヤ、お前とはやらねぇ。相性最悪だからな。――というか赤星帝との相性なんだけどよ」


 


 赤星帝。


 瞳術系ギフトの最高峰――原初のステアーズ。


 


「戦わないってのも、負けない秘訣だ。肉体の電気化を口頭で封じられたら終わりだからな。あと不意打ちにも弱い」


 


 自らの弱点すら、隠さず語る。


 その姿に、私は純粋な感嘆を覚えた。


 


「まぁね。一見して、いくつか攻略法は見えたけど……でもエボの中じゃ有効だと思うよ、それ」


 


 銀髪の少年が、不敵に笑う。


 赤星茜と渡り合った彼の言葉は、妙に重みがあった。


 


「これは“ギフトの過大解釈”として長く嫌厭されてきたが……俺たちエレメント系や、天満や安綱みたいな幻獣系には有効な強化法だ」


 


 それは十年ほど前から研究されてきた理論。


 


 たとえば――ライカンスロープ。


 《狼男》。


 


 進化の塔以前、実在を目にした者はほとんどいないはずだ。


 


 だが――誰もが知っている。


 


 映画。小説。ゲーム。アニメ。


 


 人々の認知が、“それ”を形作っている。


 


 つまり。


 


 天満君のギフト《ワーウルフ》も――


 周囲と本人の認識によって、定義されている。


 


 《狼男とはこういうものだ》


 


 その固定観念こそが、ギフトの枠を縛っている。


 


 ならば。


 


 《狼男》ではなく、《狼》へと拡張すればいい。


 


 それだけで、可能性は広がる。


 


 アリスも同じだ。


 


 《火使い》《風使いの娘》という認識が、彼女を縛っている。


 


 だがもし――


 


 己を《火》そのもの、《風》そのものと定義できれば。


 


 肉体という制約から解放される。


 


「言うは易く行うは難し、ってな。そんな簡単な話じゃない……が――」


 


 シャオロンは、アリスを真っ直ぐ見据える。


 


「そこで、アリスよ」


 


「な、なによ……?」


 


 一拍の静寂。


 


 そして――


 


「お前、俺の弟子になれ」

読んでくださってありがとうございます。続きが気になった方はブックマーク、広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ