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決戦の行方

猛暑の中、上がる電気代に頭を抱えながらもエアコンの効いた部屋で執筆しています。

オシャレなカフェで書いたりしてみたいと思いながら、家から出ないで終わる休日。


というわけで、決勝戦もいよいよクライマックスです。


 大口真神は、遥か昔から土着信仰の神の一柱として地域で代々祀られてきた神狼だ。


 我が天草家の家系は平安の時代から、この神狼と大昔からある盟約を結んでいて、我が家の家長のみがこの神狼を使役してその能力を借りうけ、人々を襲う化け物退治を代々生業としてきた一族だった。


 親父の代で19代目だった様な気がする。

 必然的に俺は20代目となるわけだが…。


 元々、裏稼業で決して歴史の表舞台に出る様な家柄では無かったわけだが、親父の代でまさかの宇宙から塔が落ちてきて、物事の事象が大きく変わってしまった。


 日本政府から正式に塔の第二次調査隊の一員として、自衛隊の調査隊に参加要請があり、親父はこの調査隊に参加したのがきっかけでステアーズとなる。


 この第二次調査隊に選抜されたメンバーというのが、自衛官以外は今まで決して表に出なかった、いわゆる裏稼業のしかもオカルト色の強いメンバーが集められていたそうで、自称ではあるが本物の退魔師、陰陽師、霊能力に超能力者が参加した。

 そして親父たちは無事にフロア10へ辿り着き、獣界門をくぐりライカンスロープのギフトを得て現在に至るわけだが、もう、今となっては古参のステアーズのひとりとなってしまったわけで…。

 現在は学園の講師という立場だ。


 後にステアーズ法が制定され、ライセンス制の導入に伴い、ギフトという人類が新たに手にした能力が世界に公になり、大口真神の存在もギフトの一端として《フェンリル》の愛称で、ステアーズやそのファンに認知されている様になっている。


 まぁ、そんなわけで、俺は現在そのフェンリルこと大口真神に丸呑みされた状態なので、放っておけばものの数分で消化されて、霊子体となってこの白狼の栄養になってしまう状態なわけで…。


 以前にも、この大口真神を継承する際の山籠りの最中に、これと全く同じような事に陥って、まぁ、ヘマして喰われてしまったのだ。

 この白狼の腹の中から脱出する為に、俺はやむなく親父に禁止されていたワーウルフに変身して、体内から腹を突き破って外に出ようと試みた。


 こうして爪を突き立て、突き出した両手を開いて外に出ようと上半身を外に出した途端。

 空気が抜ける風船の様に、白狼の内部から大量の霊気の噴出と共に、5メートルを超える巨躯はワーウルフに変身した俺がすっぽりと収まる毛皮に変化する。


「コレが、《魔狼牙装》! 狼の皮を被った狼男ってやつさっ!」


 神狼って、どんな身体してるんだ! っとツッコミを入れたくなるが、神格化した獣が現世で受肉しているだけの状態なので、どんな理屈でこうなったのか、さっぱりわからない…。

 

 ただ、あの日以来この形態を大口真神がえらく気に入ったようで、あの特訓の後、大口真神を召喚する度に隙を見せようものなら、直ぐに俺を丸呑みしようとするのが少々めんどくさい。

 だが、効果は俺の見立てではSSSランカーが相手でも引けを取らない圧倒的なスピードとパワーは唯一無二の技だといえる。


 しかし、大口真神が飽きた瞬間、この形態は強制解除されてしまうというとんでもない弱点を抱えている。

 当面はコイツを退屈させない戦術の組み立てが必須の、まだまだ未完成な技ではあるのだが…。

 破壊力がありすぎるので生身の人間相手には決して使ってはいけない技でもある。


 死なない相手なら容赦なくこの力を振るわけで、遠慮なく行かせてもらう。

 

「おおぉぉぉぉっ! 天満かっけぇぇ! 」


 ニヤは大はしゃぎで変装した俺の姿を見て大興奮だ。

「お前も奥の手出すんじゃ無かったんかい! 」

「二人の邪魔はしないよ〜天満お先にどうぞ」

「何がお先にどうぞ…だよ」


 茜は変身した安綱の相手で手一杯の様子で、コチラに対する警戒は薄くなってる。

「んじゃ、二番手行ってくる」

俺は上顎から伸びた20センチ程の2本の牙を力一杯生き抜く。

 そして、鮮血が流れて急速に回復していく歯茎に両手にしたククリナイフの柄を強引に歯茎へ捩じ込む。

 先端がくの字に曲がったダマスカスのこのナイフの柄の部分は、狼男になった俺の牙を削り出した特別な品だ。

 そして、これが本来のこのナイフの正式の使い方なのである。

 ワーウルフの肉体が自身のDNAを察知して、自分の牙として肉体にナイフの柄を取り込む。


 かつて絶滅した、サーベルタイガーの様な風貌のワーウルフの完成だ。


「天満ヤバいって! カッコ良すぎて俺失神しちゃうよぉ! 」


 頼むから、お前は黙って失神でもなんでもやっててくれ。

 

パンッ


 一歩目からトップスピードに乗り、爆発的な加速で砲弾の如く回転しながら茜を狙う。

 安綱の攻撃をいなしながら、デス・サイズを振るっていた茜は迫り来る狼の砲弾を避けられず、大鎌を握る右腕の肘から先が爆散する。


 デス・サイズが宙を舞う。


 一瞬の隙をついて、安綱が横薙一閃。

 茜は後方にジャンプして避けたが腹部が大きく裂け、腸の一部が飛び出す。

「っく!浅い」

 さらに安綱は後方に逃げた茜を追撃、脳天から正中線を真っ二つにする程の斬撃。

 茜は右に避け、真っ二つは免れたものの左腕を肩から切り落とされる。

 左肩から鮮血がドバっと流れ、顔に血で張り付いた髪を嬉しそうに顔を横に振り、それを振り払う。

「参ったね、ここまで私を追い詰めるとは…」

 鮮血を吐露し、両腕を失ってもなお闘志を剥き出しのまま茜は笑む。

 次の瞬間…。

 再び飛来した狼の砲弾が彼女を襲った。

 両腕を失った茜の胴体が爆発し、千切れるように上半身が中を舞う。


「勝った!」そう思った矢先…。

 安綱が膝から崩れて倒れる。


 先ほど斬撃で切り落とされた左腕がいつの間に再生して安綱の肩を掴んでいた。

 なんという回復スピード!

 3度目のエナジー・ドレイン。

「天満ぁ!左!」

 ニヤの叫び声で咄嗟に左を向くと、爆速で再生した茜が左腕だけで跳躍して、爆散した右手が高速で再生しながら俺に向かって伸びる。

「うげぇ!捕まる!」

 治癒の再生速度だけでも驚愕ものだというのに、生きた蛇のように伸びるスピードは尋常じゃない。

 大口真神を着込んだ俺のスピードを遥かに凌ぐ速度で俺の喉元を掴む。

「うがっ!」

 掴んだ刹那、上半身だけの茜は狂気の笑みを見せたまま、大口真神の霊気と俺の魂を瞬く間に吸い込んだ。


 暗転…。



「……えっと」

 人の姿に戻った俺はジト顔で体操座りしている安綱を見て、俺たちが負けたのだと気がついた。

「暴走しないで済んで良かったな」

「良くないわよ!私アンタより先にやられたのよ…アンタより序列が下とか…意味わからないんだけど」

「俺は序列とかはあんまり興味無いけどな…競うのは強さでなくてどれだけ登ったか…だろ? ステアーズってのはさ」

 講師たちにおんぶに抱っこで、フロア10ってのがステアーズとしての俺たちの記録だ。

 

「…に、してもさ、なんでニヤくんは捕まらないのよ」

「強くなったのは俺たちだけじゃないって事だろうなぁ」

 差がますます開いた気がする。

 

 俺たちが負わせた傷の痕など微塵も残さず、完全復活した茜が大鎌を振るいながらニヤを追い詰める。

 俺たちがやったのは赤星茜の戦闘服をビリビリに破って破壊しただけって事なのかも…。


「跪け! 」

 ニヤの《皇帝の瞳》が紅く光る。

 しかし、茜の勢いは止まらない。


「ちょっと! ニヤ君の皇帝の瞳が効いてない!? 」

「おいおい嘘だろ?! さっきまで有効だったよな? 」

 ニヤが茜の伸びる腕を避けるが、その動きを読まれたのか、茜の回し蹴りで派手にすっ飛ばされる。


「私が誰の娘か知ってるよね? もう瞳は私には効かないわ」

 不敵に笑む茜。


「ふふん、やっと邪魔がなくなったし…今から全力でその瞳の奪還させてもらうとしましょう」


 ゲームは終わりだと言わんばかりに赤星茜の全身から黒々とした蜃気楼の如く殺意が揺らめいた。



この作品を見つけてくれてありがとうございます。

そして、読んでくださってありがとうございます。

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