前衛トーナメント開催 其の一
年末年始の繁忙期の最中、忙殺されかけてました。
そんなわけで、やっと新年一発目の更新っす。
本年も変わらず、この作品とお付き合いしてくださると幸いです。
『いよいよ、この日がやって来ました!それでは第一ブロックの出場選手の入場です!』
会場のアナウンスの声が響き、派手なファンファーレと共にアリーナ入り口から巨大な火柱が上がるド派手な演出。
私が会場に到着したのは、丁度新たにギフトを得た新一年生が各々の戦闘服と装備を身につけて登場するところだった。
シャオロンに貰ったVIP席の席番を確認しながら入場してくる選手を順番に映しているモニターをチェックする。
「あっ天満君!」
第一グループの一試合目の天満君が先頭に選手たちが整列して入場する。
アリーナの観客席の階段を登りながら、上部の冷暖房完備のVIPルームを見つける。
「おっ?アリス・リデルじゃないか」
VIPルームに入ると、突然声をかけてきたのは例の赤髪の女狐お姉さんだった。
「あっ銀子さん…ご無沙汰してます」
「よぉ、お嬢ちゃんの席ココだろ?」
座席を確認すると確かに銀子の隣の席だった。
ラウンジ付きのVIP席だけあって、銀子の座る革張りのソファのサイドテーブルにはチーズの盛り合わせとワインのグラスが並んでいる。
10席あるVIPルームの中央の席に立つ。
ここからは会場の全体が見下ろせれる。
「銀子さんもシャオロン講師にチケット取ってもらったんですか?」
「ん?まぁーな、学園の講師枠で何席か押さえてるって言ってたからな…、で、例の課題クリアできたのはお嬢ちゃん以外何人クリアしたんだい?」
「課題の事も知ってるんですか?」
「そりゃ、知ってるさ」
やっぱり講師に聞いてるんだよね?二人はどんな関係なんだろう、チョット気になるな…。
まさか付き合ってたり!?
ヤダ、銀子さんっておじさん好きなのかしら?
二人の関係をあれやこれやと一瞬で想像して、思わず赤面してしまい、変な事を考えてる事を悟られない様に誤魔化しながら質問の答えを返す。
「えっと、私の前に3人合格してます」
「嬢ちゃんと合わせて4人か…、まぁ毎年そんなもんだな、後衛なのに前に出ようってヤツはさ」
「そんなもん…なんですか?」
「まぁなぁ、だからこうして私がVIPルームでこうしてられるのさ」
猫みたいにグンっと全身で伸びをする。
「そもそも後衛が前に出るって事は、それだけ危ない事なんだ、持ってるギフト次第でやれる事が変わってくるしな」
「確かにヒーラーやサポート系のギフトの方は1人でエボに登るのは難しいですね」
「それな、でもまぁ、てっぺん目指すなら前後衛両方こなすのは必須だな…で、お嬢ちゃんは目指してるんだろ、上をさ」
銀子は挑戦的な笑みを見せながら、人差し指を上に向ける。
「当然です!」
私は肯定して、バフっとクッションの効いたソファに腰掛けた。
正直、今はそんな事はどうでもいいのだ。
「そんな事より…」
トーナメントが決まってからというもの、学校でも姿を見ていない友人達が気がかりでしかない。
安綱と病院から抜け出して行方不明の二夜君の姿はまだ確認できてない。
天満君は緊張してるっぽいけど、元気そうで良かった。
モニターには、緊張して生唾を飲み込んでキョロキョロしている天満の姿が映し出されている。
「天草のヤツは緊張しまくってんじゃん」
銀子は天満のガチガチの行進を見てケタケタと笑う。
そんな天満に続いて7人の選手が、等間隔で指定された場所に立つ。
その中に安綱もニヤくんの姿もない。
『あー、では、今回の大会について軽く説明させてくれ』
この言葉を合図に、カメラが会場のステージ中央に立っている二人のMCに画面が切り替わる。
『大会出場者は全員で二十四名!8人1グループのトーナメントを戦ってもらう』
スタジオ・ステアーズのジェームズとミサトが大会のルールを説明する。
『今、入場してもらったの第一試合を戦ってもらうAグループトーナメント枠の8人の選手たちだ』
会場の大型スクリーンにAグループのトーナメント表が映され、8枠に選手の名前が順番に表示される。
『でも、ジェームズそれだと二十四名3グループで決勝戦に3人勝ち上がる事になるわね?』
ミサトが可愛らしく首を傾げる。
スクリーンには同様の8枠のトーナメント表が表示される。
『そうなんだミサト、でも決勝は勝ち上がった3人がバトルロイヤルするわけじゃないんだな』
ジェームズが咳払いをした後に、大袈裟に腕を振りかぶる!
『闘技場オープン!』
ゴゴゴゴゴッ
ジェームズの合図で、会場を揺らしながらコロシアムの中に四つの闘技台が対戦する二人ずつを乗せて迫り上がった。
『トーナメントは、4試合同時に行う!まずはAグループ第一試合、次はBグループの第一試合で、Cグループ第一試合と続き』
『なるほど、そのあとは準々決勝、準決勝、決勝と試合が進むのね?で、さっきも言ったけど問題は勝ち上がった3人はどうなるのかな?』
『ふふん、勝ち上がった選手には特別な相手を用意した!そのシークレットゲストと3対1で戦ってもらい、その人物の総評価で3人の順位を付けてもらう!」
ザワザワとアリーナの会場がざわつく。
『えっと、誰ですか?そんな大役任されたのは?学生とは言え、勝ち上がって来るのは、近い将来AランクまたはSランク以上に名を連ねる猛者ばかりですよ?』
『ふははは、まだ内緒だ!だが誰も文句の付けようがない実力の持ち主だという事は明言しておこう!』
「むむむ、それはかなり楽しみですね!観客席の皆様目が離せないですよ!』
『と、言うわけで、レディース・アンド・ジェントルメン!お待たせしました!では第一試合を始める前に出場選手の紹介をしよう!第一闘技台は注目の狼男!ライカンスロープ!天草天満選手!』
おおーと会場から歓声が上がる。
『対戦相手は同様ライカンスロープの虎女キム・ヨンウ選手だ!』
おおおーと天満君より一際大きい歓声が上がる。
天満君よりキム・ヨンウの方が人気みたいだ。
『第一闘技台は優勝候補の二人の対決となりましたねー』
『くぅー、もったいないねぇ!こんな4試合混同の状態でこのカードは無いぜぇ、同時に試合やる他の6人が可哀想だろ?完全にモブ決定じゃんよ!』
『ジェームズそんなこと言っちゃダメよ!では、第二闘技台の選手の紹介しまね…』
「あんな…他の選手をモブ扱いするって、銀子さん酷いと思いませんか?」
ジェームズのものの言い方に、余りにも腹が立ったので、思わず隣で足を投げ出してモニターを興味無さそうに見つめていた銀子に、同意を求めてしまった。
「あぁ、ソレな!でも、嬢ちゃんのその物の言い方自体、他者を見下してねぇーか?気のせいかな、私はそう聞こえるんだが…その違うかい?」
「なっ!?」
予想外の反応で何も言えなくなる。
「自分はモブじゃない、自分は特別な人間だからそんな事言えるんだろ?」
「そんな事っ!…」
「あるよなぁ…良いんだよソレはあってる、お嬢ちゃんは特別さ、なんせステイツの秘密兵器だもんなぁ、特別も特別さ下の烏合の衆とは違うよなぁ」
なんでこの人はこんなに私に絡んでくるんだろ?凄く意地悪な笑みで見つめてくるから、私は無意識で思いっきり睨み返していた。
「他のみんなもギフトを得て、あそこに立ってるんですよ!それをモブ扱いするのが酷いって私は言ってるだけです!」
「けどよ、会場の観客を見ろよ、ライカンスロープの二人以外誰の一人にも歓声が上がってねぇーだろう?誰も賭けてないし応援もしていないってのが、現実だよなぁ、私も賭けてないし興味もない」
仲良しこよしじゃねぇーんだなエボも世界もよぉ…と銀子は呟く。
「そんな事はわかってます…よ」
こんな正論聞きたくない。
せめて学生の間だけでも《仲良しこよし》したって良いじゃないか…それぐらいの自由を謳歌したって良いと思う…。
「まぁ、見てろよ私の勘が当たればジェームズが言った意味がわかるさ」
「何ですか?意味って…」
『OK!ルールは単純だ!殺害無し、対戦相手が戦意喪失、または場外に落とせば勝敗は決まるってことで、んじゃ始めようか!カウントダウン始めるぜ!』
巨大モニターに5の表記からカウントダウンが始まる。
それぞれの闘技台の選手たちはファイティングポーズで相手を睨みながら構える。
『3、2、1…』
パァーパパーン!!
『試合開始です!』
アシスタントのミサトの合図で選手たちが一斉に戦闘態勢に入る。
巨大スクリーンに映し出された第一闘技台の天満君とヨンウも合図と同時に変身する。
サブのスクリーンでは他の闘技台の試合が分割で流されてるあたり、他の生徒たちは完全にモブ扱いだ。
賭けの人気が集中している二人に注目が集まるのは理解できるけど、他の生徒の扱いが正直、平等ではないと実感する。
同じ学校の生徒でも、この島では全て実力によって扱い方がこういう形で明らかにされていく。
だから当然、生徒同士で深い確執が生まれるのも無理がない。
皆、それを肌で感じているのだ。
入学の儀式で初めてエボに登った時、多くの生徒が学年主席の14歳に敵意を向けていたのもそれだ。
国籍も家柄も学歴もエボでは関係ない。
《強く》《優れた》ギフトを授かり、仲間と共に塔を探索し成果を持ち帰れば、誰もが一攫千金になり得るのがステアーズなのだ。
ある意味、平等じゃなくてここはあくまでも、公平なのだと改めて思い知らされた感覚だわ。
エボでは、日常の倫理観に縛られない規格外の者が《強者》となるケースが多い。
例えば、私の隣で足を投げ出しシートに深々と座っている9本尻尾の赤いキツネのお姉さんは、現役アイドル兼SSランカーという規格外の肩書を持っているのだ。
しかも、企業付きのステアーズではなく芸能事務所所属のままだ。
個人でSSランカーなんて他に聞いてこともない。
「お嬢ちゃん、しっかり試合見てろよ、韓国の虎女が動くぜ!」
私の視線を感じたのか、顎でモニターを指す。
『さぁ!巨躯の虎女が四つん這いになり、大口を開けたぁ!!』
『ワータイガーの先制攻撃を様子見か?咄嗟に距離を取って防御姿勢になるワーウルフ!』
ジェームズの興奮した実況が始まる。
『ワータイガーの口前に黒い光が球場に集結しているぞ!この黒い光は何だ!?なんかスッゲェ、ヤバい感じがするのは俺だけか?』
『イヤイヤ!ジェームズあれは絶対にヤバいヤツでしょ!』
ミサトもジェームズ同様に驚きを隠せない。
「へぇ〜、あの娘この短期間で裏返って暴走した時のあのヤバい黒い光線を操れる様になったんだな」
感心感心と頷く。
確かに、裏返りの暴走を経て、あの攻撃をもはや自分のものにしているなんて、驚異的なスピードで彼女は成長してる。
どこで?どんな特訓をしたのか?わからないけど、強力な技を我が物としている。
「あの黒い光は熱線と言うよりかは、振動や衝撃の波にイメージが近い。お嬢ちゃんが直撃なんかしようものなら、全身の骨が砕ける様なダメージを受けるのは必至だな」
「そんなことは知ってます、私も獣界門で体験しましたから」
私は取り敢えず肯定して、相槌をうった。
『ワータイガーから黒い光線がワーウルフに向かって放たれたぁ!!』
「天満君!」
私は思わず立ち上がり声を上げる。
ワーウルフは腕を交差して黒い光線を受け止める。
「オイオイ、アレの直撃に耐えられるかよ!天草天満!」
銀子も思わず立ち上がる。
しかし、黒い波は止まる事なく天満に向かって放出し続ける。
ガクガクと衝撃にワーウルフは体躯を揺らしながらジリジリと防御姿勢のまま後退する。
すると、痺れを切らしたワータイガーが光線を吐き出したまま立ち上がる。
『体勢を変えたワータイガー!ワーウルフをこのまま場外へ落とすか!?』
すると、突然、放射している黒い射線を大きく横なぎに軸をずらした。
「はっ?」
「なっ?」
思わず銀子と声が重なる。
天満に注がれていた黒い光線の奔流は軌道を大きく変えて、キム・ヨンウの視界に入ってる会場全ての闘技台で技を競い合っている選手たちに向けられた。
『なっ?なななななんとっ!キム・ヨンウ!突然の無差別攻撃開始だぁ!!』
黒い光線の射線上の観客席にパニックのウェーブが起こる。
混乱が広がり観客たちが悲鳴をあげて逃げ惑う。
『会場の皆様!落ち着いてください!観客席前面には特級結界師による防御結界が展開していますので、問題ありません!ご安心してご観覧お願いします!』
ミサトの言う通り、観客席には見えない壁がある様で、黒い光線の直撃を完全に遮断している。
が、当然、アリーナ内の闘技台にはそんなバリアは存在しないので、観客同様に逃げ惑う選手たちを次々と黒い光線は飲み込み、薙ぎ倒し、そして場外へと飛ばしていった。
「ギャハハ!あの娘やるじゃんか!」
隣で銀子は拍手喝采の大はしゃぎだ。
「アレ!良いんですか?他所の選手に攻撃なんて反則ですよ!」
「イヤ、反則じゃないさ、現に審判も委員会も止めに入ってないから…ジェームズも言ってたろ?ルールは単純、対戦相手を戦意喪失か場外に落としたヤツの勝ちって、さ」
クックックと楽しそうにほくそ笑む銀子。
「第一試合が事実上ブロック決勝戦にしちまったのさ、あの虎女…いいじゃねぇーか」
猛獣が獲物を見つけた様な表情で、銀子は舌舐めずりしてみせる。
『あははははは!まさかのキム・ヨンウの大暴れで!ブロック第一戦が決勝戦へと変わってしまったぁぁぁぁっ!!』
『耐えきったのは対戦相手の天草天満選手のみ!』
防御姿勢を解いて、ついに天満が動いた。
私はモニターに映る天満の瞳に強い意志を感じた。
彼、まだ勝負を諦めてない!
「行けぇー天満くん!!」
この作品を見つけてくれてありがとうございます。
そして、読んでくださってありがとうございます。
もし、続きが気になった方はブックマークお願いします。
広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




