第5話 牢獄の果てで
日向は買取屋から出た瞬間に逮捕された。
どうやらこの町では下着姿でうろついてはいけないらしい。
牢獄に押し込められ刑の執行を待っている。
日向「下着で歩いて何が悪いと言うんだ!」
日向「僕は誰にも迷惑をかけていないぞ!」ぎゃーぎゃー
ミルラ「はぁ…ちょっと静かにしてくれる?」
日向「大体俺は異世界からやってきたんだぞ
もっと丁重に扱ってくれてもいいじゃないか」
ミルラ「また言ってるよ…」
日向「何故信じない!? あの服をみろ! ハンカチをみろ! 眼鏡を見ろ!
あんな代物が他のどこで手に入ると言うんだ!?」
ミルラ「そんなの知らないわ」
日向「僕は一体どうなってしまうんだ…?」
ミルラ「死刑かなぁ」
日向「え? なんで? 下着で歩いただけだぞ!?」
ミルラ「アンタさ、逮捕される時に大暴れしたじゃん
しかも牢獄に入れられたら連日そうやって訳の分からない事言ってる」
日向「そ、それは…」
ミルラ「だから、アンタは結構重めの罪状が付いちゃった
でもこれは自業自得なのよ?」
日向「た、助けてくれ!」
ミルラ「うーん、それは無理かなぁ
大体私にそんな権限ないしね」
日向「ぼ、僕と君との仲じゃないか!」
ミルラ「はぁ…私が好きでアンタの見張りなんしてると思ってるの?」
日向「ち、違うのか!?」
ミルラ「あったりまえでしょ! 他に仕事がないからよ!!」
日向「どうしてもダメなのか…?」
ミルラ「…まあね」
日向「そっか、残念だ」
この夜、日向は処刑された…。
※「あらあら、しんじゃいましたね?」
日向「う、ううーん」
※「あれ? 私の声が聞こえないんですか?」
※「もしもーし、もしもーし、私の声がー聞こえますかー?」
日向「う、うう…な、なんだ?」
※「あー、良かった、聞こえてるじゃないですか」
※「聞こえてるなら、もっとちゃんとしっかり返事してくださいよ」
日向「と言うか、あんたは誰なんだ?」
※「あれあれ? 忘れちゃったんですか?」
※「まったくもー、ダメな頭ですね!」ぷんぷん
※「しょーがないですね、ちょっとヒントです」
日向「ヒ、ヒント…?」
※「私は偉いんです、偉い神様なんですよ」
偉い神「ふふふ、どうですか? 驚きましたか?」
日向「ヒントとは一体なんだったのか…」
偉い神「もー、そんな事ばっかり言ってると…」
日向「と、頭部を見ながら言うことではないだろう!?」
日向「な、なんか凄いデジャブが…」
日向「って思い出した! 偉い神だ! 僕を異世界に送り込んだ!」
偉い神「ぴんぽーん、大正解 すごいぞ!」
日向「それより全く転生してないのはどういうことだ!」
偉い神「え?」
日向「転生なんだからもっと美形にしてくれ!」
日向「あともっと若返らせてくれ!」
日向「あとあと凄い能力もつけてくれ!」
それからそれから…
偉い神「あー、何か勘違いしちゃってますね」
日向「えっ?」
偉い神「いいですか? 転生と言うのは楽に強くなれるって意味ではないのです」
偉い神「容姿や年齢が理想的なものになったり、すごい能力がつくことでもないのです」
日向「くっ…」
偉い神「転生と言うのは再度努力するチャンスが与えられた状態なのです」
偉い神「えへへ、なんか私すっごく神様っぽくないですか? すごくない?」
偉い神「ふっふっふー、なんなら崇め奉ってもいいんですよー?」
日向「そ、そんな事よりも僕は能力が欲しい! 美形になりたい!
そして何よりも若返りたい! 頼む、たのむ…お、お願いだぁ…」
偉い神「うーん、そんなにその容姿が嫌いなんですか?」
日向「あ、当たり前じゃないか! 汚れた肌、禿げあがった頭、ぶよぶよの腹!
こんな容姿じゃ、誰からも好かれる訳ないじゃないか!」
偉い神「私は好きですよ?」にっこり
日向「えっ…」ぽっ…
偉い神「まあ、冗談はこれくらいにして」
日向「じょ、冗談だったの!?」
偉い神「それにしても貴方、変わりましたね」
日向「え…?」
偉い神「あんなに無気力だったのに、ちゃんと欲望を言える様になったじゃないですか」
偉い神「えらい、えらい」なでなで
日向「そう言えば…何故なんだろう?」
偉い神「それは勿論、種族が人から神へ変化したからですよ」
偉い神「気が付きました?」
日向「全然知らなかった…」
偉い神「ち・な・みに神様には色々と特権があって…」
日向「ぼ、僕はやはり神だったのか…!
ふっとぽろっと口にしたけど、やっぱり神になっていたのか!」
偉い神「もしもーし、私の声が聞こえてますかー?」
日向「ハーハッハハハ! 勝てる! 勝てるぞー!
僕は神になったのだ! 僕は無敵だ! 誰にも負けないぞー!」
偉い神「まあ、でもしんじゃったんですけどね」
日向「な、なんだとー? 神は…しぬのか?」
偉い神「そりゃあ、しにますよ 神だって生物ですからね
ころっといきますよ、あ、お餅には注意してくださいね、一口食べただけでしにます」
日向「神ってそんなに弱かったの!?」
偉い神「弱いとはなんですか! 弱いとは!」ぷんぷん
日向「そんな信じてた神が弱かったなんて…」
偉い神「あのですねー、神は弱くなんかないんですよ?」
日向「そうなの?」
偉い神「そうです! 信仰心さえ集まれば何だって出来ます!」
日向「そ、そうだったのか!」
偉い神「ですです、だから信仰心を沢山集めるんですよ
わかりましたかー?」
日向「おう! 要するに信仰心をじゃんじゃん集めればいいんだな!」
偉い神「ぐっとです! それじゃあ」
日向「それで、信仰心はどうやって…」
偉い神「願いをちょっとだけ叶えてあげますから今度は死なないでくださいね」
偉い神「それじゃあ、頑張って信仰心を集めてきてくださいねー」ふふふ
日向が言い終わらないうちに日向の意識は途絶えた…。