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バカマンモス大学 純文学研究会  作者: はるあき
入学編
1/10

つり橋(1)


 俺は純文学が好きだ。


 小学校の授業で夏目漱石の「こころ」を読んで、人の善と悪の二面性を知り心を揺さぶられた。正義のヒーローに憧れていた単純な子供だった俺は、人間のこころがこんなにも複雑で、自分勝手だとは思っていなかったのだ。

 それからというもの、俺は人間観察をするのが好きになり、何より純文学を読むのが好きになった。

 太宰治、夏目漱石、三島由紀夫。

 有名な作家の作品は全て読んだ。

 小学生の頃から高校を卒業するまで、一日の大半の時間を読書に費やした。


 楽しかった。

 周りの同級生が缶蹴りやテレビゲームをしている横で、ひたすら本を読み続けていた小学生時代。周りがスポーツに恋愛にと青春している横で、本を読み倒していた中学生時代。周りが男子校特有のノリで騒ぎ、他校との合コンに精を出している横で、本を読み漁っていた高校時代。純文学を読む俺が一番人生を楽しんでいると思っていた。

 そこになんの不満もなかった。


 しかし、高校三年生になった時、俺に一つの欲が出てきた。

 名作の感想を言い合いたい。

 自分の好きな作品を読み解き、共に研究する同志がほしい。

 そんな気持ちが現れたのだ。


 だが今の時代、純文学を読んでいる同級生など居なかった。

 いや、同級生に限らず、大人でもなかなか居ないだろう。

 近年、純文学作品の発行部数は右肩下がりに落ちている。

 なぜだ?こんなにも面白いのに。


 そこで俺は、純文学研究会を立ち上げようと決意した。研究会を作れば、純文学が好きな人が寄ってくるはずだと思ったからだ。

 しかし、その決意も虚しく研究会は設立できなかった。

 研究会の設立には三名以上の会員が必要で、俺は1人しか集められなかったのだ。その1人も仲が良いから参加してくれただけで、純文学が好きなわけではなかった。

 俺は純文学のあまりの人気の少なさに驚愕した。

 何でこれほど面白い物語が読まれていないんだと。


 だが、純文学作品を読んでいる人は必ずどこかにいるはずなのだ。

 発行部数が落ちているといえど、純文学雑誌の発行部数は1万部を超えている。日本全体を探せば、少なくとも1万人はいるはずなのだ。


 そこで俺は高校で研究会を設立するのを諦め、大学に望みを託すことにした。

 大学なら、高校よりも人が多い。マイナーなサークルも多いと聞く。純文学研究会を設立することだって可能なはず。

 俺は念入りに大学を調査し、なるべく人数が多く、サークルの数も多い大学を調べた。


 そして見つけた。

 その名も東京ケルビン千葉大学。

 東京にあるんだか千葉にあるんだか分からない名前だが、この大学のキャンパスは神奈川県にある。そんなバカみたいな名前に引き寄せられる様に、バカな学生が集まる大学だ。

 なにせ、創立者のケルビン・ムーアがとにかくビックなマンモス大学を創りたいという理念のもと、願書を出せば無条件で合格というトリッキーな合格基準を設定したせいで、日本中の馬鹿が集まったのだ。

 大学の偏差値は40を下回り、ついたあだ名は「バカマンモス大学」。

 在籍者数は50万人を超え、サークルの数も1000以上ある。


 ここなら、純文学研究会を設立できるはず。いや、出来るに違いない。


 俺はそんな希望を持ってバカマンモス大学へ願書を提出した。


〜この物語は、純文学研究会の設立を目論む主人公と少し変わった同級生達との交流を描いた純文学作品である〜




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