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Key pers!!-キー・パーズ-  作者: 九木八郎
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解錠01、「ピーチ・ビーンのピクニック」

空を見上げるには眩しすぎる強い日差しが自分に注がれる、土曜の朝、家を出てから15分。

安いアパートが立ち並ぶことからその名前がついた「下宿通り」へとやって来る、別に引越し先を探しにやってきたわけでない、この閑散とした場所に私…ピーチ・ビーンはピクニックにやってきたのだ。


アパートの壁の影、細い道の端の端を注視しながら私は歩く、前から見ても後ろから見ても土曜の朝から

こんなことをやっている私は不審者だろうか変質者だろうか、そんなことを考えながら500mほどあるこの通りをじっくりと時間をかけて進んでいく。


「あ…」

今日のピクニックはじめての獲物を見つけ、声が情けなく漏れる。

かなり鍵山が掛けた5cm前後の小さな古ぼけたウォードキータイプだ、さて、この鍵はどんな力を持っているのだろうか手に取ると試したくでウズウズする。


鍵の使い方は、基本的にどれも大差あるものではなく、赤子でも出来るほど簡単なものだ。

鍵を手に持って、意識を集中すると人によって感覚は違うがこの私の場合鍵穴に鍵を刺し解錠した時の

浅い「カチッ」とした感覚が走り、鍵の能力が発動される。

ボウッと鍵が光る、この鍵の能力は"光を発すること"のようだ、使い道はあるがこの程度のものはしょっちゅう見つかる代物だ……でもこの古ぼけた見た目に何か遠慮というものを感じる、愛らしい気にいった!


私は光る(キー)をポケットに突っ込み、下宿通りを獲物を探しながら進み、ふと物思いに耽る。


- -

私、「ピーチ・ビーン」は地方都市のお金持ちの一族「ビーン家」の生まれ


私には2つ歳上の姉が一人、2つ歳下の妹が一人いる、姉はとても優秀で美しく優しく女性らしい素敵な人で、妹は私に似てちょっと他の人とズレているが人懐っこく愛らしい、両親はちょっと過保護な父と母は強しとはまさにこの人のことと言ったような勝ち気で活発な人。


広い庭、広い家、広い部屋で何不自由なく暮らせる家を15歳というまだ学校に通っていてもおかしくはない年齢で一人寂れた街で暮らしている私、私をこうしたのは10歳の夏の出来事、広い庭で日向ぼっこしていると頭の上に落ちてきた鍵だ。

両親や家に仕えるメイドたち、街行く人々、ちょっと大人に憧れているクラスの男子が使っている所を幾度となく見てきた鍵…鍵の成り立ちを知らなかった私は空から落ちてきた鍵について母や聡明な姉に聞いて回り「空からただ落ちてくる」という事を知り一つ、大きな夢を抱いた。


それは自分の力で、この不思議な力を持つ鍵を作ること


その日の午後から、私は図書館に通い本屋に通い、鍵の生成に関する記述がある文献を探し始めたが、

そんなものは存在しなかった


この世界の誰も鍵を自分で作ろうだなんて考えてすらいなかった、誰も成し遂げていないことを夢にした私は6歳にしてはかなり大人にその夢への道のりが長く険しい物だと理解していたはず

私は姉を抱き込み、父と母に頼み込んで当時通っていた街の学校を止めて"隣の隣の隣の街"で鍵の研究をしている「タカガキ教授」の元で勉強したいことを懇願し、少々突飛な話だったが熱意に押され両親は私の夢の援助をしてくれた。


私は6歳の冬から、親元を離れてツジドウ教授の元で鍵の勉強を始めた、ツジドウ教授は親元を離れて自分の元で住み込みで学びたいという10歳の少女相手に何の疑問も抱かず教鞭をとってくれた、教授はその世界では「超ぶっ飛んでるけど、超凄い!」という評価の人物で型破りな夢を抱いた私にお似合いな型破りな人物でタカガキ教授の元で年に数回の帰省はアレど、ロクに遊びもせずなんと5年もの歳月を過ごしたのである…。


その5年間で、私は鍵に関する膨大な知識をパンク寸前まで詰め込み1つの仮説を立てた

「鍵は約高度30km以上、この空の向こうで生まれているのでは?」

誰一人到達したことはないが存在する場所、空の向こうに、空から降り注ぐ鍵の秘密があるのではないかと私は考えたが…空の向こうへの生き方が分からない、空を飛べる飛行機や飛行船で行ける高度でないし

酸素が薄くなったりもするし…何より、高度20km以上の場所では鍵は機能を停止してしまう。


飛行機や飛行船の動力は鍵に頼っている物が殆どだ、ゆえに既存の方法ではどうやってもたどり着けない場所…それが空の向こう。


頭を幾ら捻っても、空の向こうへとたどり着く方法が思いつかない私にタカガキ教授は言う、

「ピーチはまだ若い、外で見識を広げるのが遠回りのようで夢の近道かもしれない」と。

タカガキ教授は身寄りのないの女性で、私を本当の娘のように扱ってくれて私も本当の家族のように接してきた…そんなもうひとりの母の言葉に従い、見識を広めるため今私は様々な依頼人と依頼に出会える

鍵使いになったのである。


= =


気づくと私は、下宿通りの端まで来ていた、無数に立ち並んだアパートたちの奥にあるのは大きなレンガの壁…その向こうには空や星について学んでいる「アナ天文学院」略して"アナ天"が存在する。

私がこの「シティ346」で鍵使いをしている理由はこのアナ天で天文学について学ぶためである、数少ない

天文学の学び舎の中でもトップクラスの設備を備えているアナ天で別段毎日仕事があるわけではない緩い

生活を送っている私は仕事が無ければ足繁く通い、講演聞いたり大量の文献を読み耽ったりしている。


この下宿通りで拾った大小様々な7つの鍵を、レンガの壁に持たれながら眺める


「今日は大量だねぇ、ピーチャン」

どこか気の抜けた声と少し遊び心を感じるあだ名で私を呼ぶ声がする

「おはようございます、ユーシーさん」

手元の鍵から顔を上げて、この街の誰よりも似合う前髪パッツン、役場に勤めていて私のお得意様でもあり借りている部屋のお隣さんでもある女性、ユーシー・ノースウォッチャーさんを見る。









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