プロローグ -土曜の朝-
鍵呼ばれる「ソレ」は、ヒトの歴史が刻まれ始めた遠い昔からこの世界には存在した。
さまざまな形、大きさをした鍵は異なる世界の扉を開き、人智を超えた力をヒトに授ける
火を起こし、水を生み出し、風を操り、傷を癒やす…鍵の力は争いを生み、歴史を刻んだ。
ヒトはやがて鍵の力を一定の指向性と出力の調整を可能とする鍵を差しこめる鍵穴を持った物品「錠前」を作りだした、銃の錠前の鍵穴に火を起こす鍵を差し込めば放たれる弾丸は火の玉に変わり、無数の住宅を電線で繋ぎそこに錠前を繋ぎ、電気を発生させる鍵を差し込めば電線でつながった住宅に電気を繋げることも出来る。
鍵の力をコントロール出来るようにはなったものの、まだ肝心な所が解明されてはいない、それは鍵の作り方。
ヒトが作っていないならどこから鍵は、手に入るのか、それは簡単、鍵は空から降ってくる、世界では3分も外で歩けば鍵は落ちていて大量に持て余されている存在なのだ。
この物語は、鍵をヒトの手で初めて作り出した少女と仲間たちの物語…その一団の名前は「キー・パーズ」とやがて歴史に刻まれる。
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時はデストロ1754年/8月/15日(土)、午前6時14分12秒
私はベットから飛び起きる。
べつに遅刻して急いでるわけじゃない、ルーティーンだ、ベットからバタバタと飛び起きることで私は一日の初速を上げられるのだ。10mとドア1つの水場へ駆け出し、蛇口を大きく捻ると水がバシャバシャと蛇口から大量に流れ出す、私は両手で綺麗に掬い顔を洗い、タオルで顔を拭きながら、窓から差し込む朝日を浴びて実にさっぱり爽やかな朝の空気を感じる。
…あ、蛇口、蛇口…。
姿見の前に立ち、鏡面に映る身長161cmの自分を眺める。自分の服装/髪型にあまり自信と拘りが無い、夏でも冬でも短めのポニーテール前髪はやや左に垂らし、服は真っ白のYシャツにコバルトブルーのポケット付き膝丈フレアスカート。
街で見かける同年代同性の人々はもっと華やかでお洒落に見えてしまって仕方がないが…今はお洒落につぎ込むお金も時間もない、妙ちくりんな格好じゃなければそれでいいのだ。
友人特製の雨風に強いツヤツヤの光沢を持つショルダーバッグを肩に掛け、深呼吸してから、ハイカットのスニーカーを履いてドアを開き外へ踏み出す。
ここは「シティ346」私はそこに住む鍵使い名前は「ピーチ・ビーン」、今日は朝からピクニックだ。