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Re:call~異世界転生  作者: 漣恋
Re:call  エルフ戦争
12/12

「という訳で、お前らを鍛えに来たんだが・・・」

「ど、どう言う訳・・?」


 ヘンリエッタと別れ、直ぐにエルフの森にと向かったエルはまるで気にした素振りも無く結界を破り侵入していた。

 目の前に居る少女は、エルフの長であるバリエルの娘であるクロエルだ。腰辺りまである長い金髪。エメラルドグリーンの瞳はまるで、宝石のように綺麗でそれに合った顔立ちもまた、人形のように美しい。

 幼さの残る顔からは、想像出来ない年齢で聞いた話だと三桁は超えていると言うのだから信じられないのも無理は無い。


 この場――エルフの森の中心部にある川辺に集まっているのは、クロエル一人のみだ。というのも、クロエル一人育てれば、知識が浸透していくと思った為である。――決して面倒だから・・と言った理由ではない。



「あんたらエルフの事を姫さんに伝えたら、鍛えて来いってな」

「へ、へぇ・・・優しいのね、えーとヘンリエット様・・・?」

「ヘンリエッタ、だ。まぁ、確かに他国の連中よりは真剣に考えてくれているな」


 これが他国の人間だった場合。いや、クレイア国でもそうかもしれないが王族に知られたら間違えなく制圧命令が下るだろう。

 未知数の敵とは言え、実力行使に買って出るのだ。


 だから、エルフ達からして見れば今回は、幸いであるとも言えるのだ。



「それにしても・・エルフの森には高度な結界が張ってあったと思うんだけど、どうやって侵入してきたの?」


 エルが侵入してきたのは、今回が初めてではないが以前からも気になっていたことでもあった。それに、結界を張ってある理由として、一番は防衛の為、もう一つは濃度の濃い魔力から他種族を守る為でも合ったのだ。

 だから、平然と侵入し数時間も居座っているのは可笑しいのだ。


「確かに人間が張っている防壁の上位――いや、比べられない程の膜だったな。だが、広範囲に広げていたから所々弱い箇所が目立っていた。それを軽く魔法でも当ててやれば簡単に崩壊するぞ?」


 エルの言う通り、結界には所々弱い箇所があった。だが、それでも人間が採用している防壁よりか遥かに強度があったが、それを破壊した彼の実力が優れているからだろう。


 防壁のように結界もまた、複数人による作業にて完成する魔法なのだ。というのも、一人で出来ないことは無いが、それだと魔力量によって強度が左右される防御魔法は脆くなってしまう。その為、エルフの森に張られた結界もまた、複数人――エルフの民全員で魔力を注いだ結晶とも言える。


 エルが森に来る度、破壊された結界は彼の手によって更に頑丈な物に張り直されている。その点、エルフ達は感謝しているのだが、矢張り人間には超越した魔法である為警戒はされている。


「みんなで張ったんだけどね・・これ以上強化するのは無理じゃないかなぁ・・」

 エルからの指摘を受けたクロエルは、苦笑いを浮かべる。

 しかし、エルより優れた結界を張るのは魔力を人間の倍以上持つエルフならば本来容易いのだ。だが、幾ら魔力があるからと言って、それを高めないのであれば宝の持ち腐れもいい所だ。


「無理って事は無いな、何せ魔力ってのは鍛えればその努力分だけ力になる。無駄な事は一つもないんだぜ?」

「そ、そうなんだ」

 急に真剣な眼差しに変わったエルに戸惑いながらも、その言葉の意味を理解する。


「ともあれ、まずは基礎からだな」

「宜しくお願いします!」



*---*



 こうして、クロエルの魔法特訓が始まり早一ヶ月。彼女の魔法量はエルフ一の実力となり、成長の兆しが見えている頃であった。


「えーと、よく分からないんだけど・・?」

「相手の目だけを見るな、と言ったんだ」


 ある程度魔法を扱えるようになったクロエルは、今剣術の稽古を受けていた。流派に属さない我流の剣術だが、研究に研究を重ねた彼の技が詰まっている。

 彼女が両手に持っているのは、漆黒を思わせる短剣。柄から身までを黒で包み、赤い縦線が入っている物だ。エル曰く、遠い地の遺跡で見つけたと言っていた。


「他の人間がどうだか知らないが、俺だったらこのスタイルで構えるな」

 彼は柄を逆手に持ち、相手を威嚇するように立つ。それを真似て、クロエルも同じように構えた。


「こ、こう?」

 自信無さげな声を出すクロエルだが、驚くほど様になっていた。元々、身軽に動けるようにと考案した剣術である為、身体が小さく軽い彼女にとっては有利な技だ。


「そうだ。じゃあ、軽く組み手でもしてみるか」

 エルは練成魔法で新たに、短剣を作り上げると少し距離を離れた。

 動体視力や反射神経が人間と桁外れているエルフと言う種族は、本来人間であるエルに遅れをとる事は有り得ない。しかし、彼女は相手の目線で次の攻撃を予測し、行動している為フェイクを交えるとどうにも防ぎきれていない。


 それは一秒の遅れが命取りとなる、戦場では致命的である。それ故、エルからの特訓を日々受けているのだがどうにも上達しない。


「俺はいつでもいいぞ」

「――うん」

 刹那、身体強化を付与したクロエルの身体が一直線にエルの元に飛んでいく。常人には、見失うほどの速度で移動しているが、エルはしっかりと目に捉え動きを追っていた。

 

 クロエルは既にエルの数歩先まで迫っていた。空中で身体を半回転させ、その回転に乗ったまま切りかかる。金属が交わる音が、場に響き渡るが既にその場にエルは居ない。


 寸前で短剣を投げ、クロエルの得物とぶつけさせていたのだ。空中に浮遊した状態の彼女の背後に忍び寄り、回転に合わせ彼女の手を取り地面に叩き付けた。


 クロエルの腕を背中に回し、肩甲骨の中心部に押さえつけ無力化した。体重を利用し、逃れられない押さえを前にクロエルは内心舌を打った。


 完全に油断をしていた。エルが体術を扱える事は知っていたが、てっきり剣のみでの稽古とばかり思っていたのだ。無論、それは言い訳に過ぎない。稽古と言っても、相手を抹殺する意気で立ち合わなければ失礼に当たるし、実際を想定しての物だから、相手の全てを警戒しなければならなかったのだ。故に彼は言う。


「終わりか?」

 彼女の位置からでは、エルの顔は見えないがきっと嗤っているだろう、と予想した。事実、意地の悪い笑みを浮かべているのは言うまでもない。


 馬鹿正直に腕を抜こうとするが、痛みが増した為直ぐに力を抜く。腕の一本犠牲にすれば強引な抜きを可能とするが、実戦を想定すると治癒魔法を使う時間は無い。ただでさえ、苦手な回復だからクロエルは動けないで居た。


 そんな彼女の表情を見たエルは「ここまでか・・・」と内心呟いたが、その言葉は直ぐに撤回される事になった。

 クロエルの方を右目の魔眼で直視すると、黄金色の小さな粒が彼女の手に集中して集まっていた。


 直後、クロエルの身体を吹き飛ばすように荒風が吹き荒れる。重心を後ろにずらした事が幸いし、数メートル先まで吹き飛ばされたエルは空中で身体を回転させ、軽い足取りで着地をした。


「まさか、自分の身体ごと吹き飛ばすとはな。驚いた」

「そう・・?次は、剣を交えたいんだけど・・」

「良いだろう、行くぞ」


 即座に作り出した片刃の長い得物。今じゃ古代の遺産とも言われている刀と呼ばれていた刃物だ。木から練成された刀は、エルのスピードに乗りまるで風を引き裂くように距離を詰めていく。クロエルの正面に入った瞬間、身体強化を使い背後に回りこむ。死角からの一撃、しかし彼女は背中越しに短剣をクロスガードさせ、それを防いで見せた。


「エルって・・少し私のこと馬鹿にしてない?」

「今更かよ」

 分かりやすい攻撃に、頬を膨らませた。防ぐ事すら想定していたと察すると、敢えて彼が想像出来ない魔法を混じえた攻撃に変更する。


 剣先に魔力を集中させ、剣身に風を纏わせる。それを受けた刀は木っ端に変わり、風に乗せて消えていった。

 身体強化を重ね、爆発的に膨れ上がった筋力で移動し、エルの喉に短剣を寸止めする。勢い余って衝撃波を生み出した。


 その風圧で、エルフの民族衣装である、ドレスのような服のスカートが捲れ上がり、純白の下着が露になる。

「見えてるぞ」

 捲れあがったドレスに目線を向けると、クロエルの顔は耳の先まで真っ赤になり、慌てるように手で覆い隠した。


「――ななな、なッ!!」

「何だよそれ」

 真っ赤な顔で、鋭い目線を向けてくるクロエルに、気にした素振りもなく答えるエルだが、これはわざとやっているわけではない。女に慣れていると言う程でもないが、治安を乱す輩や犯罪者を相手してると、色仕掛けをしてくる者が稀にいるのだ。それを見慣れたせいか、布一つで彼の心が揺らぐ事は無いのだ。


 そんな欠陥をソフィア姫は、前々から危険視していたがそれもまた別の話だ。


「詰みだな」

 そう言い放った彼の手から伸びる木製の短剣は、クロエルの喉を捉えており、文字通りの詰みを取っていた。こんな状況で、続けている彼も少し可笑しいとは思うが、何度も言うがこれは実戦を想定したもの。例え裸体を晒そうとも、堂々と立ち向かわなければ死が待っているのだ。

 まぁ、それ以前に目を合わせた瞬間葬る事が出来ればそれに越した事は無いが、今の彼女にはそれだけの実力が無い。

(対人には難あり・・だな)

 そう評価を下すと、「長くなりそうだ」と頭を抱えるのであった。

エルフ戦は後三話くらいを予定しています。

それと、エルフ戦に入ってから文字のストックが切れている為、更新が速度が遅くなっております。出来るだけ、更新速度をあげて行きたいと思いますので、今後ともお付き合いください。


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