恋文
あなたに宛てて 手紙を 書いています
たいせつな用件が あるものですから
どうしても あなたに 伝えなければならない
大切なことが
ぼくは
ぼくは あなたが
あなたのことが
ぼくの胸のどこかには
ちいさな穴が あいていて
ふきぬける すきま風
ひゅうひゅうと 音をたて
さみしげな音をたてる その穴を
ぼくは ふさいでしまいたいのです
そして あなたは
あなたこそが
あなたはまるで ぼくが あの日無くしてしまった欠片
陽の光を受けて きらきら光っていた 欠片
ぼくの胸の穴を よろこびという名の光でいっぱいに満たす 欠片なのです
あなたを見ていると
半月が時満ちて 満月になるように
ぼくの魂は
おおきく まあるく ふくらんでゆきます
そうして この世でおよそ考えうるなかで 最高の
完璧なる 形になるのです
この世界に あなたがいる
それだけで
雨上がり 全てがあんなにも 清浄な輝きに満ちるように
ぼくの世界が 煌めきはじめるのです
強く 力強く
あの 緑の葉をいっぱいにつけた樹々
まるで子供の手のように 無垢なる樹々の枝々が
空に向かって伸びゆくように
あなたの微笑みが ぼくの胸に広がり 青々とした葉をつけるのです
あなたは こんなぼくを 笑うでしょうか
ぼくはかつて 考えていました
愛とは なにか
愛するとは どうすれば よいのか
ですが わかったのです
わかってしまったのです
ただその存在を 感じればよいのだと
あなたのことを 考えています
それしか 考えられません
情けないことに
あなたの望むこと あなたのしあわせ
あなたに関することすべて
ぼくは あなたが 必要です
ともに いてほしいのです
あなたの存在を 傍で 感じていたいのです
すべてを忘れて
あなたという名の海で 溺れ死んでしまいたい
世界の全てに背を向けて
遠き彼岸の彼方へと 旅立っても構わない
あなたさえいれば
あなたがいれば ぼくは それでいいのですから
ぼくは 祈るでしょう
あなたのために
ぼくは 泣くでしょう
あなたのことで
ぼくは 歌いましょう
あなたの歌を
ぼくは 微笑みましょう
あなたに
あなただけに
あなたのとなりを 歩きましょう ゆっくりと
あなたは ぼくの 愛するひと ではなく
愛 そのもの なのです
あなたの存在こそが 愛そのもの なのです
分かって もらえるでしょうか
ああ
あなたなくしてぼくは
どうして 生きましょう
ああ ですが
決して届くことない この手紙は
綺麗な瓶につめて 海へと 流しましょう
出せないこの手紙を
ぼくの 消えない 想いとともに