転校生と俺の過去
日常…そんなごくごく普通で、ほとんど誰でも手に入る普通で、平凡で、平均で、平等で、そして退屈なものが俺の中から無くなってしまったのは、いつからだっただろう……
この物語はそんなごくごく普通の日常が普通じゃなくなった1人の男の話
キーンコーンカーンコーン
いつもの時間、朝の始業のチャイムがいつものようになっているそして俺はいつも…
ここは月並町平和的で平凡な町だ、町人同士顔見知りが多くまるで大きな家族のような町だ
「すぅ〜…すぅ〜…」
「おい、東山?お前はいい加減に朝から眠るのをやめてくれないか?」
寝ていた
「…すんません先生、先生の邪魔はしないのでどうぞ、HR始めてください…」
そして、また眠りにつく…が
「そうゆう問題じゃ!ないんだよ!」
当然、起こされる
俺は『東山 和樹』ごくごく普通の高校2年生だ、趣味・特技は特になく、母親と父親がいない事を除けばただの平凡な高校生だ
「ったくよぉ、ガキ共のために稼いでて疲れてるのは分かるよ?だけどな、せめて授業中くらいは起きとけよな」
そう、俺はガキ共のために金を稼いでいる
俺には5人の弟妹がいて
そいつらのためにバイトを掛け持ちして稼いでいるんだ
先生が連絡事項を言ってHRは終わった
「いやぁ〜、今日も花ちゃんのげんこつは凄かったねぇ〜」
こいつは『田村 俊之』俺の腐れ縁のアホだ、そしてこいつのいった花ちゃんってのは、さっきの先生で『花澤 奏』先生、年齢不明(聞いたら殺される)独身の女教師だ
「うっさい…眠りたいんだ…どっか行け…」
「へいへい、どっかいきますよぉ〜…ととと、そうだった、はいこれ」
そういうと俊之は1通の封筒を渡してきた、
「なんだ?こないだ貸した金か?倍金ちゃんと入れてるよな?」
「違う違う、金はまだちょっと…じゃなくて!早く!」
「ったく、早く返せよな…っと、なんだこれ?」
俊之が渡してきた封筒はピンク色でハートのシールで封のされた、いかにもラブレターだった
「え〜、なになに?『話したい事があります、今日の放課後、三階の空き教室まで来てください 2-C 中村 夏希』はぁ〜…俊之、今年で何通目だ?お前が橋渡しになってるの?まだ春だってのに」
俺は何故かよくラブレターを貰う、自分では自覚がないが俊之曰く、校内じゃ知らない人はいないらしい
「うわぁ〜…ラブレター貰ってそんなに冷たい反応するのは世界中でお前だけだろうよ…」
昔は、ベタに靴箱に入ってたりしたが、今では俺が靴箱に『靴取るのの邪魔なんで入れないでください』という貼り紙をしているから、みな俊之を橋渡しに使って渡してくる
「つか、お前も何気、女子と仲いいよな」
こいつがよく女子と会話しているのを見るが
「ん?まぁ確かに仲いいけどだいたい会話の内容はお前の事だよ?」
とゆう事らしい
「はぁ…俊之、今日もバイトだから、断ってきてくれ…俺は寝る、おやすみ…」
「ちょっ!待って待って!寝ちゃダメ!」
俊之の言葉は眠りに入った俺には届かなかった…
昼休み、俺は腹の虫に叩き起こされた、
「おーい、和樹、飯くおうぜ♪」
弁当箱を揺らしながら俊之が向かってくる
「それじゃ、いただき…」
「ちょっと待ちなさいよぉ!私を忘れて食べようったって、そうは行かないわよ!」
いってなかったが俺にはもう一人幼なじみがいる、それがこいつ『中野 由佳』家が隣同士で、たまにガキ共の世話を見てもらっている
「由佳ちゃん、いっつも俺らと食ってるけど?友達居ないの〜?ちょっと心配になって来たよ?」
「黙れ!ユキ!最初の頃は食べてたわよ!でもずっとカズの事を聞かれて食事に集中出来ないのよ!」
悪いな、俺のせいで…
そう思いつつ俺は飯を食っていた
すると、由佳が
「カズ、あんたまたラブレター貰ったんでしょ?そろそろ誰かと付き合ってラブレターが来ない状態を作ったりしたら?この際身近な娘とか…」
「由佳ちゃん、それ自分の事いってる?」
「ば!バカか!そ!そんなわけないでしょ!わ!私はただ!そろそろカズも恋愛くらいしたらどうかって、いっただけよ!」
何故か由佳は顔を赤面しつつ言葉を発した、
そんなに俺が嫌か…
「恋愛かぁ〜…考えた事もなかったなぁ〜」
ガキ共の事もあるし、バイトだってあるし、何より金がかかる…
「まぁ、しなくていいか、めんどいし、時間もないし」
「まぁ、和樹ならそうゆうよな」
俊之が笑いながら反応した
「ご馳走様、それじゃ、おやすみ…」
飯を食ったら速眠りにつく、
これが俺の日常だ
午後の授業は寝過ごし
そして放課後になり、俺は夕飯の食材を買って家に帰った
「お兄ちゃんお帰り」
「ただいま、これ、頼まれたやつ、あってるよな?」
「うん、あってるよ、いつもありがとうね」
「お!兄ちゃんおかえり!なぁなぁ!今日は何時に帰ってくるんだ?」
「9時くらいかな」
「分かった!帰ってきたらまた今度こそ、兄ちゃんに勝ってやる!」
「兄さん、今日学校で出たところが少しわからないので、帰ってきたら教えてください」
「分かった、任せとけ」
「にぃにぃ、今日も絵本読んでね?」
「わかってる、だから帰ってる来るまでに読んで欲しい絵本考えとけよ」
「うん!」
これが帰宅時の恒例行事である
「今日は…火曜か」
「兄貴、今日コンビニの日だよね?プリン買ってきて」
「わかったよ、お前も受験勉強しっかりな」
そう言い残し、俺はバイト先へ向かった
「店長、こんちわっす」
「おぉ、カズ、来て早々わりぃが、前陳頼むわ」
「わかりました、いらっしゃいませ!」
「あら、カズ君、こんにちは」
「こんちわっす、田中のおばさん、今日は何を買いに?」
こんな感じていつもバイトをしている
「いやぁ〜カズが居てくれるといつも助かるぜ!こりゃ、バイト代も弾まねぇとなぁ?」
「あざぁっす、じゃあガキ共待ってるんで、お疲れっす」
「おう!気ィつけて帰れよ!」
「うっす!」
「ただいま、ミサ、飯頼む」
「お疲れ様、ご飯ならもう温めて置いてるよ」
「カズお疲れ、タカのゲーム相手の事は、私がやっておくから、ミキの勉強、付き合って上げていいよ…ってやったなぁ〜?」
「由佳来てたのか、まぁサンキュ」
そして、飯を食って、風呂から上がると、
「兄貴ぃ、プリンはぁ〜?」
「うわっ!?なんだ、トモか、びっくりした、冷蔵庫入れてるよ」
「っしゃ!兄貴愛してるよ!」
「はいはい、んじゃ、ミキやるか」
「はい、兄さん、ここなんですが…」
「それじゃ、タカも寝たし、私帰るね、ばいばい」
「おう、サンキュ、そこはなここをこうして……」
「にぃにぃ、これ読んで?」
「これか、ハナは本当にこれ好きだなぁ〜」
「うん!にぃにぃが読んでくれるから、い〜ぱい!い〜ぱい!大好きだよ!」
「そうか、そうかハナはいい娘だなぁ〜」
「えへへ!」
次の日
「和樹〜!聞いたか!今日転校生が来るってよ!それも!飛びっきり美人!!」
「うるせぇ…起こすな…どうでもいい…」
朝っぱらから俊之の声が頭に響き目が覚める
「いやいや!いいじゃん!可愛いらしいし!」
これまためんどそうだな
「はいはい、席につけぇ、そして田村はそのうるさい口を閉じろ」
どうやら、花ちゃんはさっきの話を聴いてたらしい
「花ちゃんひどいよぉ〜、ほら、そんなにひどいことゆうから男の人もにげちゃうんだぞぉ〜」
あ、こいつ死んだわ…
花ちゃんは独身彼氏なしとかなり特殊ステータスの持ち主で、何でも同級生の式に呼ばれた数は手だけでは足りないとの事
「おい、田村お前後で生徒指導室な?覚悟してろよ」
こころなしか花ちゃんの後ろにどす黒いオーラが見えた気がした、俊之よ、南無南無
「それはそれとして、今日は転校生を紹介する、入れ」
1人の少女が教室に入ってきた
その容姿は、千の人を魅了しそうな銀色の髪、守って上げないと今にも折れて倒れてしまいそうな華奢な身体、そして見てると引きずり込まれそうなとても澄んだ広い海の様な、蒼く澄んだ瞳
「こんにちは、愛鈴です、髙岸愛鈴です」
「はい、お前ら仲良くしろよ、特に東山、隣の席だから」
は?
「よろしく」
まじかよ
「ねぇねぇ!愛鈴ちゃんはどこから来たの?」
「好みの男性は?」
「家はどこなの?」
「今日一緒にお昼食べない?」
「アリスちゃん綺麗、どうやったらそんな身体維持できるの?」
まぁ、当然の転校生、それも飛びっきり美人と来た、ならばこの伝統行事、質問攻めは当然あるとは思ってたが…
「寝れねぇ…外の風に当たるか…」
そして俺は席をたった、当然隣で急に立ったので、転校生の周りの人がこっちを見てきたが気にせず教室を出た
「あ、和樹!俺も行く!」
などと言いながら俊之がついてくる
「……。」
「なになに?和樹?うるさくて寝れないから席を立った的な?」
ニヤニヤしててうざい…
「俊之、奢ってやるから飲み物買ってきてくれ」
「え!?まじで!?やったぁー!行ってくる!」
これで静かになるな、俺は気持ちのいい風に吹かれ寝そべる…すると
「あ、あの」
真上から声が聴こえ目を開くとそこには例の転校生がいた
「ん?なんだ、面倒事以外ならなんでも聞いてやる」
「いや、あの、その、よろしく!」
そうゆうと転校生は走って帰っていった
「なんなんだ?」
そして俺も教室へ帰った
(何か忘れてるような…ま、いいか、さて一限は…)
「おーい!和樹買ってきたぜ!ってあれ?和樹?」
「おい誰か、田村探してこい」
俊之すまん、一限花ちゃんだった
そして放課後
「んじゃ先帰るわじゃあな」
「おう気おつけろよ!って、今日は八百屋の日か、後で買いに行くわ!」
「わぁった」
そして家に着くと
「んぁ?あぁカズちゃんだぁ〜♪カズちゃんチュー♪」
「んぁ!?酒臭!?つか寄るな!」
「うえぇ〜ん!カズちゃんが冷たいよぉ〜!ミサちゃん慰めてぇ〜えへへへ♪」
「はぁ、瑞さん帰ってから用事聴きますんで、ミサ、瑞さん頼んだわ」
「う、うん頑張って」
「あ、カァ〜ズゥちゃ〜ん!!」
さっきのは『登野盛 瑞姫』母さんの妹、つまり叔母である、両親が他界してから俺ら兄弟を引き取ってくれたが、この人は仕事で世界中を飛び回って、帰ってくる度厄介事を運んでくるから困り者だ
バイトを終え帰宅準備をしていると
「カズ、これミサちゃんにプレゼントだ!持ってけ!」
「悪いっすよ、こんな立派な野菜貰えませんよ」
「馬鹿ゆうなオメェ!立派つっても、売れ残りだし、俺とおめぇの仲だ!遠慮せずほら、とっとと持ってけ」
八百屋のオジサンの説得に負け、とても立派な野菜を大量にもらった
「ミサ、これ八百屋のオッチャンからプレゼントだとよ」
家に帰りミサに八百屋での出来事を話した
「そんな、こんなにいっぱい、今度お礼に行かなきゃ」
「そうだな、オッチャンのためにもこれでうまい飯作ってくれよな」
そんな事を話していると
「カズちゃん、ちょっといい?」
そういいながら瑞さんが奥の部屋からひょっこり出てきた、と言うか酔いは覚めてるようだ
「カズちゃん今回の仕事中にね、天凪町で仕事してる時のことなんだけどね」
天凪町とは、ここ月並町とは違い、金持ちや、有権者達が住んでいるいわゆる、政治の中心の様な街だ
「そこで拾ったものを預かって欲しいの」
「いや、そんなにひょいひょい拾ってくんなよ、んで?その預かって欲しいのってなに?服?開運グッズ?」
「ウフフ、素直なカズちゃんは大好きよ」
そんなことを言いつつ瑞さんは部屋を出ていくと数秒後に見をぼえしかない女子を連れてきて
「この娘♪」
「は?転校生じゃねぇか!瑞さん!いくら家の稼ぎが少ないからって天凪の娘を誘拐したのか!?」
そこにいたのは今日転校してきて、クラスを騒がせた超美人転校生髙岸愛鈴その人だった
「?」
「はぁ〜…」
昨日のはどう言うことだ……
『まぁ♪2人は知り合い?なら、話がはやいわ♪』
『嘘つけ!瑞さんがあの学校に入れたんだろ!偶然じゃねぇ、必然だろ!』
『何のことなぁ〜♪とりあえず、愛鈴ちゃんの事は任せたからね♪私はぁ、仕事中なので、じゃぁ〜ねぇ〜』
『あ!逃げんな!』
『そのかわり家に入れてたお金、今までの倍!入れとくから、よろしく〜♪』
「はぁ〜……」
「どうした和樹?お前が寝てないだなんて」
「どうせ、瑞さんがまた厄介事運んできたんでしょ?なに?話して見なさいよ」
そんな話をしていると
「ごめんなさい、私のせいで」
隣の転校生が声をかけてきた
「いや、お前のせいじゃねぇよ、気にすんな」
俺はそんな事を言いつつ昨日の出来事を話した
「はぁ!?え?じゃあ、愛鈴ちゃんとカズがど!どどどどど!同せ…!?」
由佳は慌てて口を閉じると、小さな声で
「やっぱ、秘密にした方がいいわよね?」
「あぁ悪いな」
「あんたが謝る事はないわ、悪いのは厄介事しか運んでこない瑞さんの方よ!」
「迷惑、だよね東山君」
俯いた表情で転校生が俺にゆった
「あぁ、それなんだが、お前の居候することはもう仕方ねぇよ、瑞さんあぁゆうとこだけ頑固だし、だだ家は全員東山だ、それぞれ下の名前で呼んでくれ」
俺がそうゆうと転校生は少し驚いた顔をしたと思ったらニコッと笑って
「わかった、カズくん」
その笑顔は万の罪をも許してしまうような暖かくそして
「いい笑顔だ」
!やばい、声に出てた!
とっさに愛鈴を見ると
「な!?何、泣いてんだ!?」
アリスは何故か泣いていた
「ごめん!アレ?なんでかな、急に涙が、ごめんね、変、だよね」
俺はこいつの過去を知らない、そしてあの瑞さんが連れてきたってことは余程の事だ、いったい事が、色んな思考が頭を駆け巡る、でも
俺は考えがまとまるなんかより、ただ、思ったことを伝えよう
「愛鈴、今までどんな過去を歩んだか俺には分からない」
そう、昔がどうとか関係ない!こいつは今俺の家にいる!なら話は簡単じゃないか!
「愛鈴!これからは好きな時に笑え!好きな時に怒れ!好きな時に泣け!そうやって、感情をぶつけてこい!ここにいる奴らもうちのガキどもも、お前の味方だ!」
そう、これでいい!今はまだ、
「それでいい」
「ゆってる事はかなりいい事だが、東山?」
?あれ?なんか、寒気が?
「ここは教室で、もう授業始めたいんだけど?いいかな?」
そこには満面の笑みで立っている…
「は、花ちゃん?えっと、その手に持ってる30cm定規はなんですか?そして何でそんなに笑ってらっしゃるんですか?何かいいことでも?」
「歯食いしばれ!!」
ギャァーーーーーー!!!!
教室に俺の叫び声がこだました
そんなこんなで放課後に呼び出され、花ちゃんにこってりしぼられ、教室に帰ると
「あ、キタキタ」
そこにはいつものメンバーと愛鈴がいた
「カズぅ〜?あんた、引き出し見た方がいいわよぉ〜?」
愛鈴は苦笑い、俊之と由佳は馬鹿みたいにニヤニヤとしている
「なんだ?いったい何があるって……はッ!」
そこには俺の机の引き出しに所狭しと…
「ふッ!封筒ッ!」
「アッハハハハハ!ヒィイ!お腹痛い!あんたが、あんな事ゆうから!」
「さっき1つ読んだけど、『私も、うちの子って呼ばれたい!』とかあったぞ!ほんっと、おもしれぇ!」
「いいよ思うよ、カズ」
「愛鈴…慰めは時に人を傷つけるぞ?後お前ら!いい加減笑うのヤメロ!」
そのまま俺らは楽しくダベりながら帰った、家に着いてバイトに行こうとすると、アリスが自分も何か手伝いたいとゆってきたから俺はミサに任せてバイトに行った…
それはまるで今までの不幸を精算しているかのように幸せだった……
このまま幸せが続けばいいのにと、願ってしまうほどに……
当然だが、幸せしかないなんて事は、絶対にありえない
俺らが楽しみながら生活をして、数週間経ったある日の事
「おーい、上がったぞ〜次は誰だ?」
この日はどこのバイトもシフトが入っておらず、久々に一番風呂に入った
「じゃあ私入る♪」
急に目の前のドアが開きトモが風呂に走っていった
「ビックリした…こら!トモ!急に出てくんな!」
だがその声はルンルン気分のトモには聞こえてなかった
次の日、学校に向かっていると、
「カズ、誰かいる」
愛鈴のゆう事は正しかった、確かに誰か付いてきてる、と言うか見られていた
「まぁ、気にしなくてもいいだろう」
俺の読みは合ってたその視線の犯人は数日間ただただ、見つめるだけでとくになにもアクションを起こさなかった
そして数週間後、机に1通の手紙が置いてあった、
「ん?なんだこれ?」
たまたま1人で忘れ物を取りに帰った時だった
「なになに?『貴方は罪を償わければならない、貴方は罪人だから』!?なんだこれ!?」
俺は手紙を封筒に戻し、ポケットに入れて急いで帰った、途中瑞さんに電話をしたがあの人が電話に出れるわけも無く1人で考えていた
罪人、なんのことだ!
すると後ろから扉の開く音がした
「だ、誰だ!」
そのにいたのは
「ご、ゴメン!驚かせた?」
「な、なんだ愛鈴か」
「どうかした?遅かったから来たけど」
愛鈴が心配そうにこっちへ来る
「あ、あぁそうだな、帰るか」
そうゆって俺は持っていた封筒をポケットにつっこみ、学校を後にした
その夜俺はすぐに寝た
そして夢を見た
夢の中で俺は1人の少女を見ていた
俺はその少女知っている、だが誰かは分からない、誰だ、誰だ、誰だ!
「誰だ!」
気づくと目の前の光景は見慣れた自部屋だった
「夢、か……」
あの娘は誰だったのか、そう考えながら、俺のいつもの日々が始まろうとしていた
その日の昼
飯を食ってる時にふと外を見るとそこには1人の少女がこっちを見ていた
「なぁ、俊之あの娘知ってるか?」
「ん?どれどれ?う〜ん?あれは」
一瞬俊之の顔が強ばった気がした
「あれは?知ってんのか?」
「え?あぁ、その、知らねぇな!じゃ、じゃあ俺、喉乾いたし、飲みモン買ってくる!」
そうゆうと俊之は教室を後にした
「なんだあいつ?まぁいいか」
「東山和樹、お前の命は私の手の中に」
次の日、バイトが何もなく俺は家でのびのびしていた
「兄貴、ゴロゴロしてないで、たまにはかまってくれよぉ〜」
「もぉ、トモ姉お兄ちゃんはいつも私たちのために頑張ってるんだから、たまにはゆっくりさせて上げなよ」
「いや、ミサ別にいいよ、俺もちょっと小腹がすいた、コンビニでなんか買って来るよ」
俺が家を出際にトモの声が聞こえた気がしたがまぁ、いいだろうどうせプリンだろ
「ありがとうございました〜」
「さて、帰るか、まさか、近くのコンビニのプリンが全滅していたとは」
俺は気づくと懐かしい場所に来ていた
「しっかし、ここら辺も久しぶりだなぁ」
自分が卒業した小学校だ、数年前に廃校したと聞いた時は驚いたが、今となっちゃ、『仕方ない事』だったかもしれない、え?
「なんで?仕方ないんだ?」
なんで、仕方ない事なんて思ったんだ?確か、廃校するほど、児童が居なかった訳じゃない、身の丈にあった人数だったはず、金もなかった訳じゃない、なのになぜ?なぜ俺は仕方ないなんて思った?
「教えて上げようか?」
「!?」
振り返ると深くまでフードを被った少女が立っていた
「お前は、こないだ教室の外にいた」
「気づいてたんだ、君は気づかないと思っていたよ」
なんなんだ、この娘、急に出てきて、それに、教えるって、何のことをだ?
「まぁまぁ、そう身構えないでよ、それじゃあまるで、私がなにかしてるみたいじゃないか」
「で?何のようだ?」
「何のようって、君の忘れた過去を、思い出させて上げようって、親切だよ」
目元は見えないものの、口元がニヤけてるのは分かる
「君は、この学校が廃校になった理由が知りたい、いや、思い出したい、そして私は、君の知りたがっていることを教える、いや、ちょっと違ったね、私は君に思い出させたい、かな?」
俺が知りたいこと?
「じゃあ、話をしようか、これはとある小学生達の酷く、胸糞悪い話」
『こ、こんにちは!天村 紅葉です!』
私は今日転校してきた、初めての転校、とても緊張した
『皆さん仲良くしてくださいね』
パチパチパチ
とても不安だったけど、新しい生活にとてもワクワクしていた
『よ、宜しくね』
『うん』
隣の席の男の子、みんなにカズ君って呼ばれてる
『なぁ、お前さ』
『ん?なに?』
カズ君、いつも静かで、全然おしゃべり出来なかったけど、そんなカズ君が話しかけてくれた♪
『いや、何でもない』
『ぶー!なによ〜』
『何でもないって』
たまにこうゆうことがある様になった、最初は分かんなかったけど、徐々にそれは、カズ君なりに仲良くしてくれようとしてるって分かってきた
そんなある日
『はい、皆さんにお話があります』
突然先生が、お話を始めた
『昨日、竹中さんの筆箱からお気に入りの消しゴムが無くなったと、放課後相談されました、そこで、誰か知っている人はいますか?』
教室がざわめいた、先生の隣では竹中さんが泣いていた
『はーい、みんなの筆箱を確認したらいいと思いまぁーーーす』
そういったのはクラス長さんの中村君だった
『そうですね、それが1番ですね、皆さん筆箱を机の上に出してください』
先生がそうゆってみんなが筆箱を机の上にだすと、先生がひとりひとり、机を周り筆箱を確認して行った
そして私が終わり、カズ君の番になって先生が確認すると、先生の顔が変わった
『カズ君、これは君のですか?』
そう言って先生が手にしたのは、女の子ものの消しゴムだった
それを見てカズ君は顔色を変えた
『ち、違う!僕じゃない!なんで、なんで僕の筆箱に!』
すると急にカズ君はある人を見て反論を辞めた
私はカズ君の目線の先を見た、そこには、数人でクスクス笑っている中村君の姿だった
『カズ君、聴いていますか?カズ君?カズ君!』
先生の声が聴こえて無いみたいだったそしてカズ君はそのまま中村君に掴みかかり殴ろうとした
『やめて!!』
気がつくと私は大声で叫んでいた
『中村君、カズ君、今すぐ職員室に行きます、他のみんなは教室で静かに待っていてください』
そう言って、先生は2人を連れていった
『ざまぁねぇな!いい子ぶってた報いだ』
クラスの男子の1人が、そう言いながら笑った
『ほんとだよ、少しカッコイイからって調子に乗りやがって』
そして、ほかの男子が続く、もちろん、みんなカズ君がやったと思って、誰も反論しない、けど
『……行かなくちゃ』
そう思った時にはもう身体が動いていた。私は無我夢中で、職員室へと走った
(行かなくちゃ、行かなくちゃ、行かなくちゃ!)
私の中にはカズ君を助ける事しかなかったそして私は職員室のドアを勢いよく開け、先生の元へ走った
『ど、どうしたんですか?天村さん?』
先生も困惑してた
『はぁ、はぁ、先生!』
『は、はい!』
『カズ君は、悪くありません、やったのは』
先生は驚きの表情で、中村君は引きつった顔で、カズ君は、泣き顔でこっちを見る
『私です!』
その場の全員が固まった
『私が、私がやったんです!だからカズ君は悪くありません!』
『天村さん、弁解したい気持ちは分かります。ですが、それではなぜ、カズ君の筆箱の中に竹中さんの消しゴムがあったのですか?』
『そ、それは』
考えなくちゃ、考えなくちゃ、ここで折れたら何もかも意味が無くなっちゃう!
『天村!』
急に叫んだのはカズ君だった、初めて聞いた、滅多に喋らないカズ君が
『もういい、お前帰れよ!正直ウザイんだよ!人の気も知らないで、いいこぶって、偽善者が!』
……
その場に一時の静寂が訪れた
『分かった、帰るね』
悲しかった、苦しかった、嫌だった、私はただ、カズ君を助けたかった、他の誰でもない、カズ君を
そして、数日して、カズ君は学校に来た、今まで両親と竹中さんの家や学校へ謝ったりして、学校に来れなかったみたいだ
『きやがった』
『ほんとに来た』
『聞いたか?アイツ助けに来た天村に逆ギレしたんだってよ』
『なにそれ?何様だよ』
教室中に悪い空気が流れ始めた
『おい、カズ、よくぬけぬけこれたなこの人でなし!』
『そうだよ!紅葉ちゃんに謝りなよ!』
わいわい、がやがや
あぁ、うるさいな、こんなクラスだったけ……あ、そっか、私のせいで、私のせいでカズ君は責められてるんだ、私が、私なんかが助けなければ
あーやまれ!
あーやまれ!
あーやまれ!
……
ガタッ!
……
『ど、どうしたの、紅葉ちゃん、気分悪いの?え?紅葉ちゃん?もう授業始まっちゃうよ!』
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!
私は無我夢中で走った、あの時みたいに、あ、あの時とは違うね、今回はただ、自分のために、自分だけのために走った
そして、たどりついたのは屋上、フェンスの先
下を見ると遠くに地面がある
(ここで死んだら、楽かな…カズ君…許してくれるかな)
その時
『天村!』
屋上にカズ君は来てくれた、けどもう遅い、振り返った反動で、バランスを崩し私は
(カズ君、ごめんね、私、また迷惑かけちゃうね、でもねカズ君、私、私ね、カズ君のこと……)
『天村!!!!!』
好きだったんだ……
「それからの事思い出した?」
「ちょ!ちょっと待て!なんでそれを!とゆうか、天村は転校したはずだ!」
そうだ、天村は転校したはず
「そうなんだ、そんなふうに言われてたんだ、じゃあコレ見てみ」
そう言って彼女は1冊のファイルを投げた、俺は無我夢中でそのファイルに目を通した
「ど、どうゆう事だ……!?」
そこに書いてあったのは
『高村小学校児童の自殺を隠蔽!警察の調査により廃校決定』
うそだろ
「う〜ん、嘘じゃないけど間違いならあるね」
「間違い?」
「ふふふ、それは……」
彼女の次の言葉を俺は聴くことが出来なかった、絶望に耳を伏せたわけでもなく、聞こえなかった訳でない
「それくらいにしろ」
その言葉を発した人物に俺は目を向けた
「イタタタタ、女の子を突き飛ばすなんて、酷いことするじゃない、」
「ひでぇ?人の過去をほじくって楽しんでるやつに、言われたかねぇよ」
そこに立っていたのは……
俊之だった
「君は誰だい?」
彼女はそう俊之に問いかけた
「へぇ〜、結構な挨拶だね、それが本心から出てるなら俺は耳を疑うね」
俊之はどうやら彼女のことを知っているような口ぶりだった
「分かんないねぇ?まぁいいや、今日の所は帰るよ、また会おうね」
そう言って彼女は帰った
……
どうゆう事だ?彼女は、俊之との関係は?俺が思考を凝らしていると
「おい、カズ」
「あ、あぁ……今のは一体?」
俺の口から出る言葉はそのくらいだった
「あぁ、あれは、まぁいいじゃねぇか!それより、みんな待ってんじゃねぇの?」
「あ、忘れるところだった!」
色々気になることはあったが俺は家に帰ることにした
そして家で今日起きたことを整理していた
あの娘は?俊之は?謎の多かった1日だが、そんな1日は静かな夜とともに終わりを告げた
あれから、俊之に、あの少女のことを聞こうとすると話を逸らされていた
「あれは何だったんだろう?」
まるで嘘だったかのようにまた平穏な日々を送っていた
「カズ〜、まぁ〜た、ボケェ〜としてる、ぞ!」
「いっつ!!んだよ!」
不意に由佳の渾身のデコピンが炸裂した
「うわっ、びっくりした、どうしたの?ボーッとしたり、大声出したりして」
「あ、あぁ、すまん……」
由佳のゆう通りだ、俺は何をしているのだろうか
「大丈夫?気分悪いなら保健室いく?」
「あ、いや、大丈夫だ、心配してくれてありがとうな、愛鈴」
そうゆうと愛鈴はニコッと笑った
「……」
「ん?どうした?由佳」
「え?あ、あぁ何でもないよ!あ、そうだ!カズ、あんた今日バイトないっしょ?」
「あぁ、確かにねぇな」
よく覚えてんな、こいつ
「私、今日部活行くんだけどさ、良かったらカズも来てよ、愛鈴も!」
部活かぁ〜俺は家の事情上部活なんてしてる暇は無かったから少しだけ、放課後を部活に費やしている奴らを羨ましいと思っていた
「部活?由佳ちゃんって何部なの?」
あ、そう言えば聞いたことがなかった
「文芸部じゃなかったか?」
「そうそう、文芸部!て、あんたいつからいたのよ」
確かに気が付かなかった
「酷いな!同じクラスで、隣の席の俺の存在を!」
「いや、あんた『トイレ♪トイレ♪トイレに行ってまいるぅ〜♪』なんて、言いながらどっかいったじゃない」
「なにそれ?ボーッとしてて聞いてなかった」
「そんなのすぐ帰ってきてたに決まってんじゃん」
しょんぼりしながら俊之はケータイを取り出して
「俺は、この時に帰って来てたよ」
そういいながら、ケータイの画面を由佳の方に向けた、すると由佳が
「あんた!なってもの撮ってんの!!今すぐ消しなさい!!」
「えぇ〜そんな態度でいいのかなぁ〜?別に俺はこの写真をカズに見せてもいいんだけどなぁ〜」
ん?なんでそこで俺が出る?そう思った時には俊之は由佳に殴り飛ばされていた
「殴るわよ」
その時の由佳の笑顔はとてつもない殺気を纏っていた
そして放課後
「じゃあ、カズ、愛鈴行くよ」
「え?俺は?」
「あんた、昼の事、あれで許されたと思ってるの?」
由佳その顔辞めてくれ、が物凄い力で服を引っ張って首が閉まって!!
「どーどー、ごめんってこれやるから許してよ」
そう言って俊之はまた、ケータイを由佳へと向けた
すると由佳は俊之に耳打ちをすると
「じゃあ、行きましょう♪」
なぜか上機嫌になり、歩き始めた、その姿に安心したのか愛鈴は服を離し由佳の後ろに着いて行った
「先輩〜、久々に来たよ〜、友達連れてきたんだけど別にいいよね」
「え?ちょ、ま、中野ちゃん!?そうゆうのは事前にお願い!?えぇ!?東山君!?中野ちゃん、東山君と友達ってホントだったの!?嘘!?嘘!?あ、あの!文芸部部長の高音美麓です!」
「あ、あぁ、よろしく」
俺は差し出された手を握ったら
「あ、ああああああああああああああああああありがとうご、ごごごごございます!!!」
高音さんは部屋から飛び出していってしまった…
「あ、あぁ、どうする?お茶でもしに行く?」
「そ、そうだな」
「おっはー!」
「いっつ、お前なぁ、どうして毎朝そんなに元気いいんだよ」
朝っぱらからいつも通り俊之のバカでかい声と共に俊之の平手打ちを背中にくらった
「ん?そりゃあ、毎日しっかりと睡眠を取って、しっかり運動もして、健康な生活をしてるからな!」
「嘘つけ、お前夜中によく変なメール送ってくるじゃねぇか、昨日とか、なんだよあれ、『自分の知ってる過去が全く違うもので、誰かを傷つけていたら、どうする?』だ、知らねぇよ」
これじゃまるで自分を否定されてるみたいじゃねぇか
「あぁ、それはな?」
急に俊之が真面目な顔になって俺に顔を近付けてきて
「身近の事に目を向けてりゃ、なんて事ねぇよ」
!?
「なんつってな!お、花ちゃんおっはー!」
「花澤先生だろが!」
そう言って俊之は先生のとこに行った、そしていつもの様に出席簿で頭を叩かれた
「……」
『身近の事に目を向けてりゃ、なんて事ねぇよ』
そう言った時の俊之の言葉はまるで別人のように、俺に、俺じゃない誰かに語りかけていたようだった
「いや、あいつは知らないはずだ」
そう、俺の中には確実に俺じゃない"俺も "が居る
「まさかな」
「何が?」
「うをぉ!?んだよ急に!ビックリしたじゃねぇか!」
俺の机に由佳が顔だけひょっこり出していた
「なによ!こっちもビックリしたわよ!あんたが最近いつも悩んでたっぽいから相談に乗ってあげようと思ったのに!何よその態度は!」
「あぁ、悪かったちょっと考え事しててな」
「分かればいいのよ、で?何があったのよ」
言うべきだろうか、そう思ったが、急に『俺の中に俺じゃない"俺"がいる』なんて言ったら、変なやつと確実に思われる
「いや、自己解決した、もう大丈夫だ」
「そう?悩み事があったらいつでも言いなさいよね、……心配なんだから……」
「ん?なんか言ったか?」
「な!?何でもないわよ!バーカ!あ、愛鈴、おはよー」
『身近の事』か、考えても見なかった
そして、授業が終わり放課後、先生から仕事を押し付けら、コホン、手伝わされて帰りが遅くなってしまった
「はぁ、花ちゃん先生も、人使い荒いよな、ん?なんだこれ」
下駄箱の中に1通の黒い封筒が入っていた
「誰がこんなの?あ、やべ、落ちちまっ!!」
封筒から落ちたのは数枚の写真とノートの切れ端だった、そこに写っていたのは
「ゆ……か……!!」
写真には体を椅子に縛り付けられ、口をタオルで絞められていた由佳が写っていた、そしてノートの切れ端には
『中野由佳の命のタイムリミットは19時だ、少しでも過ぎたら中野由佳のいる場所は彼女諸共火の海に沈む』
!!!
「おーい、東山、お礼とっちゃなんだけど、東山?」
俺はカバンを投げ捨ててその場から走り出していた
「おい!東山!?どうした!?東山和樹!!」
後ろから花ちゃん先生の声が聞こえたが俺はそれどころじゃなかった、俺は無我夢中で走った、場所の目星は付いていた
「旧体育倉庫!!待ってろ!!由佳!!」
写真の端に写っていた黄色い綿のはみ出した白い布地だった、それは破れて使い物にならなくなった体操マット、そんなものが放置されているのは取り壊し予定の旧体育倉庫だけだ
俺がそれを知っているのは花ちゃん先生が体育教師に押し付けられた雑務を手伝わされていたからだ
「花ちゃん先生!!サンキュー!!!」
そして、俺は旧体育倉庫へと到着した
「時間は!?」
腕時計は18時30分を刺している
「よし!」
深呼吸をし、俺は旧体育倉庫のドアを力いっぱい開け放って
「由佳ーーー!!!!無事かーーー!!!」
全力で叫んだ
別に旧体育倉庫は広くはない、中に火を放つ犯人がいた場合の為の威嚇のつもりだった、そして旧体育倉庫の中には
「由佳!!じゃねぇ、あんたは?」
信じられなかった、そこで座っていたのは由佳じゃなかった
「高音…先輩……!?」
「いらっしゃい、遠山君、君はあの写真を見て、絶対にここに来ると分かってた」
俺の頭の中は真っ白になっていた
「先輩?あ!そうだ由佳!由佳を知りませんか!?」
「知ってるわよ、ここには居ないけど」
「そうですか、良かった、で、先輩は何故ここに?あの写真は先輩が?」
俺は由佳が無事と聞いて気が緩んでしまった
「そうよ、私よ。あの写真は由佳に頼んで撮らせてもらったの。よく取れてたでしょ」
そう言うと先輩はライターを取り出して
体操マットに火をつけた
「ちょ!!先輩何してんすか!!」
俺が慌てて火を消そうと、もう1枚のマットで火を叩いていると先輩は旧体育倉庫の扉に鍵をかけ
「あなたが悪いのよ!!」
そう叫んで扉の鍵を消火器で壊した
「先輩?どうしてこんなことを」
「東山、貴方は憶えてるかしら?貴方この学校に入学してすぐの頃」
入学してすぐの頃?何のことだ?
「あの時私は今より暗い娘だったわ、前髪も校則ぎりぎりの長さまで降ろして、そんな時、廊下であなたとすれ違った」
確かに俺は入学してすぐに暗い先輩とすれ違って、俺はその時
「その時、俺は1人で大量のプリントを運んでた先輩のプリントを一緒に運んだ、まさかそれが」
「そう、それは私、その時私は正直貴方の事が嫌いだったわ、色んな女にちやほやされて浮かれてる奴だってね、でもあの時貴方は言ったわ」
俺はあの時、確か女子が話し掛けてきて先輩を待たせちゃって、そして先輩が『ちやほやされて楽しそうね』って言われて、俺は
「あんな女子達より、先輩みたいな落ち着いた人の方が好きだなって」
そう言った、だがそれとこれと何が
「嬉しかったなぁ、あの後貴方へラブレターを書いたわ、そして、どんな反応をするか貴方の教室へ行ってみたわ、そこで貴方は、貴方は!」
俺は何を?
「貴方は!私のラブレターを捨てた!その時『暗すぎる』って言った!貴方は私を騙した!」
違う、確かあの時
「違う先輩!俺はあの時!」
「うるさい!言い訳は沢山よ!東山君、私、それでも諦められなかった、不思議よね、これが恋なの、そしてこの間、貴方が部室に来た時、私は驚いたわ、貴方、私の事覚えてなかったものね、だから私ね、分かったの」
確かに、あまりの変わりように覚えてなかった
「ここで、一緒に焼け死んだら灰が混ざりあって、ずっと一緒にいられるって!」
すると旧体育倉庫が崩れ始めた
「くそっ!あんたは馬鹿だ!」
俺はそう言って扉へ、体をぶつけ、こじ開けようとした
「無駄よ!ねぇ、東山くん、一緒になりましょ?ここで、一緒に」
そう言って先輩が抱きついてきた
「ふっざけんな!」
俺は先輩を振り払って
「簡単に死ぬとか言うんじゃねぇ!!死ぬってのはな!2度と自分として居られねぇって事だ!死んだらずっと一緒?ちげぇよ!死んだらその瞬間から違うものなんだよ!そんくらい分かれ!受験生!」
その時、外からドアが開いた
「東山!無事か!」
そこに立っていたのは花ちゃん先生だった
「先生!よかった、先輩早く外へ」
「い、いや!私は!私は!」
「先輩!」
その場から動こうとしない先輩に俺は
「先輩、ここから出ましょう、生きてたらまた楽しく話が出来ます!だから!今は生きて!」
俺はそう言い放ち先輩をドアへと押し出した、そしてやっと出られる、そう思った瞬間だった
「東山!上だ!」
上から燃えた旧体育倉庫の1部が落ちてきた
そしてその瓦礫は俺を
押しつぶした
「東山!!!!」
そして花ちゃん先生の叫び共に旧体育倉庫は
崩壊した
ここは?
あそこにいるのは
父さん!?母さん!?
まって!置いてかないでくれ!
父さん!母さん!
「はっ!はぁ、はぁ、ここは?」
病院、俺はなにを
「あ、あああああ!!」
「ん?なんの声だ?あ」
そこには口を大きく開け、こっちに指を向けて固まっている由佳が居た
「あ……よ、よぉ、おはよ、はははは」
「お、おはよじゃないわよばかー!!心配したんだかんなーーー!!!」
そう言いながら由佳が俺に泣きながらしがみついてきた
すると、
「お、カズ!起きたか!いやぁ良かった良かった!」
俊之が病室に入ってきた
「あぁ、迷惑かけたな」
「いいよ、いいよ、俺らの仲だし、そうだ!由佳ちょっと使いっ走りしてくんね?」
「は!?なんで私が!?自分で行きなさいよ!!」
「んな事ゆうなよ、それに」
そうゆうと俊之は由佳の耳元で何かをゆうと
「わ、分かったわよ!行くわよ!」
そう言って、由佳は病室を飛び出して行った
すると、俊之が
「カズ、真剣に聞いて欲しい」
そうゆうと病室は真剣な雰囲気に包まれた
「覚えてるか?前に変な女に昔のこと言われたことあっただろ?」
あ、あの時のことだろうか
「お前は小学校の頃のこと、どれだけ覚えてる?」
「小学校?んなこ…と………」
あ、あれ?小学校のころの……こ…と
「何も思い出せねぇだろ?」
!?
確かにそうだ、何故か小学校の頃のことが何一つとして思い出せない
「あの女が言ってたこと、あれは事実だ完全事実、一つたりとも嘘を交えていない、確かに俺らの母校で、そしてお前の前で、天村紅葉は……自殺した」
「う…嘘……だ…ろ……?お、俺の……俺のせいで…人が……死んだ……?……嘘だ…嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!!」
ドォス!!
気が動転していた俺を誰かが殴った、恐る恐る目を向けるとそこには花ちゃんがいた、その後には、愛鈴と買い出しから帰った由佳がいた
「東山、逃げるな!前を向き、過去を乗り越えろ!『記憶にない』『俺じゃない』そんなガキが使うような逃げ道に走るな!そんな逃げ道が使えるとなどとつけあがるな!お前がお前の過去を否定して、何になる!過去のお前が逃げた現実に、大人になったお前が向き合え!ここで逃げて、過去を否定して、そして、お前は報われるのか!?お前が心配で来てくれた仲間を!お前を救って!お前の苦しみを背負って死んだ女の子の気持ちを!お前は踏みにじるのか!答えろ東山!!」
「花……ちゃ…ん……どうして知ってんだ」
「ここにいる全員知ってる……知らなかったのは愛鈴だけだ」
と、俊之は言った
俊之と由佳は昔から知ってたらしく、先生は入学前にあらかじめ叔父さん達から話されてたらしく、それでもみんなはその時の事を忘れることで生きてきた俺のために、何も言わなかったらしい
「で?どうなんだ東山、お前はどうしたい?」
どうしたい?そんなの決まってる
「俺は、償いたい!受け入れたい!そして、もう逃げたくない!」
「そうか、なら」
そう言うと俊之は病室のドアを開けとある人物を病室へと招いた
「聴いてただろ?そういう事だ、言いたいことを全部言っていいぞ」
そこにはあの時の少女がいた
「そう、じゃあ遠慮なんかしねぇよ」
少女は大きく深呼吸し
「お前のせいだ!お前さえ、お前さえいなきゃ!姉ちゃんは!姉ちゃんは!!姉ちゃんはお人好し過ぎたんだ!無愛想で、カッコつけで、他人のことなんてどうでも良さそうな奴なんかに優しくして!挙句の果て、そんな奴好きになって、そんな奴庇って、そして自殺した!お前が!お前がぁ……」
少女は泣き崩れ、弱々しい力で俺の身体を叩いていた
「カズ、こいつはあの時の、天村紅葉の妹だ」
「そっか……あいつに妹が居たのか、なぁ、天村の妹、俺はほんとにクズだ、お前の苦しみを知らず、現実逃避して、挙句の果てに記憶をなくす、そんなクズだ、だから虫がいいのは分かってる、だけど」
俺はそっと天村の妹の手を取り
「そんな俺の罪を、お前の苦しみを、背負わせてくれ、その上で俺に罪を償うチャンスをくれ」
そう、俺はあの時の俺じゃない、記憶をなくす前の俺がどんな思いをしたか、どんなことを考えていたかなんて知らない、だからこそ、今、ここにいる俺が、背負わなくちゃいけない、そう、心から思った
「天村…鈴音」
「え?」
「名前だ!私の名前!いつまでも天村の妹ってのも癪だしな!後!言ったことは守れよ!お前にはしっかり償ってもらうからな!」
「おう、分かったよ、あま、いや、鈴音」
天村は辞めよう、天村って呼ぶのはあいつだけだ
「な!な!いきなり下の名前で呼ぶんじゃねぇ!!!!」
「え?でも、天村ってのは、あいつだけにしときたいしな、じゃあ鈴音ちゃん?」
「ちゃ…ん!?あぁもうなんでもいい!好きに呼べよ!」
「おいおい、俺らのこと忘れてイチャイチャすんなよ〜」
はっ!!すっかり忘れてた!!
「はぁ〜、青春だねぇ〜」
そう言う、花ちゃんに、奥でむくれてる由佳と、真顔で俺を見つめている愛鈴がいた
「え?あぁ、そのぉ〜、はっはっはぁ……」
俺がどうしようか悩んでいると
「おい、えぇ〜と、東山和樹」
突然鈴音が声をかけてきた
「え?なんだ?」
「あの女2人のどっちかがお前の彼女なのか?」
!!!??
ななななな!?何を言ってんだこいつ!!!??
「おい、どうなんだ?東山和樹ぃ〜?」
ど、どうしてそんな話が!?とゆうか心做しか由佳とアリスが睨みつけてきてる気がする
「べ、別に、そんなんじゃねぇよ!」
よ、よし!これが安牌だろう!って、なんでお二人さんキレ気味な顔で睨んでるんでしょう!?して、何故か端っこでいかにも笑いを堪えてそうに震えてる俊之と、なんかそわそわしてる花ちゃん、なに?ことカオスな状況!?
「ふ〜ん?なるほどねぇ〜じゃ、こっちを向けよ」
「なんでだ!?」
その瞬間、俺の思考は停止した、多分だが、この場にいる全員の思考も停止している事だろう、なぜなら
「ふふふ、頂き♪」
鈴音が俺にキスをしたからだった
「な、ななななななな!何してくれてんの〜!!!!?」
「ふふふ、だって、私の苦しみを背負ってくれるんでしょ?だから、私の全てを背負って貰おうってね?」
「はぁ!?そういう事じゃねぇ!!」
「カズ?ちょっといいかなぁ〜?」
「カズ?あなたはどうしてそんなにタラシなのかな?」
!!
振り向くと、鬼の形相の由佳と、目の笑ってないが、満面の笑みの愛鈴がいた
「いや、その、あの、えぇ〜と、俺にもわからん!!」
「歯ぁ、食いしばれ!!」
「理不尽だァーーーーーーー!!!!!」
俺の悲鳴が病院内に響き渡った
俺には気になる奴がいた
そいつは俺に声をかけてきた、俺をウザがらなかった、俺を
助けてくれた
そんな奴に俺は怒鳴った
悔しかった
あいつはいつも俺の味方でいた
あいつは俺を庇うために、嘘をつこうとした、だから悔しかった、だから怒鳴った
そんな奴が俺の前で、俺のせいで
落ちた
俺はその事を俺のせいだと思いたくなくて逃げた
現実に目を背けて
考える事が怖くなった
そうしていると気がつけば俺じゃない俺が俺の生活をしていた、そいつは俺より優しく、俺より頑張り屋で俺よりも
人に愛された
そんな俺じゃない俺を見ている内に俺は、俺の身体に戻る事を
辞めた