事件の起こる第3話
あの怒涛の面接のつぎの日。
俺は早速バイトとしてあの狂った(店長が)店で働くことになった。
「一応喫茶店のバイトは経験あるんですけど……」
「あ、そ〜なんですか〜!助かります〜じゃあ裏の方を教えますね〜」
裏の方、とは『少年少女を守ろうプロジェクト』、略して『SSP』のことだ。。………うん。何度聞いてもアホな響きにしか聞こえん。
そんなことを考えていると、
「おや、上から指令が入りましたよ〜。」
「上って……神様?」
「はい〜。」
「あれ?でもラメエルさんって堕天使なんですよね?なんで神様の言うこと聞いてるんですか?」
堕天使というのは神に背き、罰として堕天させられた天使のこと……というのが俺の中でのイメージなのだが。もしかしたらすごい重要な理由があるのかもしれない。
「なんでって言われても〜……暇だから?」
すごいふわふわした理由だった。
「いやいやいや!え!?なんかもっとしっかりした理由とかないんですか!?」
「ないですね〜。私も人間好きですし〜。することなかったので適当に言うこと聞いてるだけです〜」
なんだろう。堕天使ってみんなこんな感じなんだろうか。俺の中二の夏を返せ。
「そんなことより〜早く行かないとやばいですよ〜」
「はぁ……わかりました。行きましょう」
ため息混じりにまばたきをした。すると、
「着きました〜」
見知らぬ家の玄関前に俺たちは立っていた。
「………はい?」
「何ぼーっとしてるんですか〜?」
「え、いや、え?今何したんですか?」
「え?テレポートですけど〜なにか〜?」
なにかじゃねえよ。
しかし何を言ってもこの人には無駄なので『そういうこと』として認識することにした。
「で、これ知らない人んちですよね?勝手に入っていいんですか?」
「え?犯罪者に人権なんてあるんですか?」
「へ?犯罪者?」
少年少女を守ろうプロジェクトっていったい……
「こんなところでなにを騒いでる!!」
やばい、この家のおっさんが二階の窓から怒声を浴びせてきた。どっせーいって。やかましいわ。
「ほら怒られ……ちょ、ちょっとラメエルさん!?」
なんのためらいもなく家に入っていくラメエルさん。しまいには、
「早く行きますよ〜?」
なんて言ってくる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよー!!」
俺はただ追いかけることしかできなかった。無念。
☆☆☆
「な、何だ君たちは!人の家に勝手に入ってくるなんて………通報してやる!!」
俺たちが玄関まで入ると、怒ったおっさんが出迎えてくれた。
ま、そうなりますよね。
しかしまったく怯えずに対応するラメエルさん。
「へぇ〜……通報されて困るのって〜むしろあなたのほうじゃないんですか〜?」
「ッ…!?なぜそれを……」
「おや、やはりそうでしたか〜。じゃあ上がらせてもらいますね〜」
それは玄関に入る前に言うべきだと思う。
「や、やめ……」
「ここですね〜?」
ためらいもなく人の家のドアを開けるラメエルさん。
開けたドアの先には……
「………ッ!!…ッ!!」
口をガムテープで塞がれ、手を縛られ、それ以外は全裸の少女がいた。
「なっ!!これは……」
「くっ……!!」
俺が驚くのとおっさんが逃げ出すのは同時だった。
「因幡さんは女の子をお願いします〜。私はあのおっさんを〜」
「消します♡」
「ちょっ!!」
俺が止めるよりはやく部屋を出ていくラメエルさん。
………まあ、冗談だろう。そんなことよりこの子だ。
口のガムテープを剥がし、俺の着ていた上着を着せる。
「大丈夫?立てる?」
「う、うん………ありがとう………あれ…?君、隣のクラスの……因幡くん!?」
「え?俺のこと知ってんの?」
「う、うん……前から見てた……じゃなくて!たまたま!そう、たまたま見かけたから!!」
「う、うん?そ、そうか……」
どうやら同じ学校の生徒らしい。夏休みにあんなおっさんに捕まるなんて、この子もついてない。
「と、とりあえずラメエルさんを追おう!」
「ら、ラメエルさんってあの美人の人……?ね、ねぇ因幡くん!!あの人とどういう関係なの!?」
なんか変なことを言ってくる。さっきまで監禁されてたのに余裕か。
「普通にバイト先の店長」
「え……バイト?」
まあ、不思議に思うのも無理はない。人んちに勝手に上がって人を助けるバイトなんて俺も聞いたことがない。
「………因幡くん………バイト………いいなぁ……」
「ちょ、ちょっと?何言ってーーー」
何か変なことを言ってる女の子に聞き返そうとした時、
『ギヤァァァァァ!!??』
外からおっさんの悲鳴が聞こえた。
「まさか……!!」
さっき確か…
『私はあのおっさんを〜消します♡』
とか言ってたよな……
いやな予感がして俺は全力疾走で外に出た。
そこで見たのはーーー