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掃除当番  作者: 夕凪
1/1

1日目

「……嫌いだ。」

ふと聞こえた誰かの一言。それは隣の席の君だった。


今週から教室掃除は私の班だ。皆は露骨に嫌そうな顔で掃除を始めた。私だって勿論、好きではない。その中でも君は特に嫌そうにしていた。私は思わず溜め息を漏らす。

「掃除当番、めんどくさいなぁ。」


ふと視線を感じ振り返ると、君がいた。

「今の溜め息、聞こえてた?」

「うん。」

君は気だるげに答えた。

「…本当に?」

「本当に。」

クスリと笑う君。顔に熱がこもるのを感じ、思わず目を逸らした。すると君は不思議そうにし、覗き込んできた。

「…ッ……!」

だんだんと近づく君の顔。目を閉じた私。しばらくして君が笑った。

「何?期待した?」

「……してないよ。」

すると君は口を開いた。

「俺さ、掃除嫌いなんだよね。」

「だってさ、面倒じゃん。早く部活に行きたいけど行けないし。」

私は目を逸らしたまま、黙って話を聞いていた。

「だからさ、俺は雨宮さんの気持ち分かるよ。…けど、なんで顔が赤いのかは分からないなぁ。」

意地悪な表情で君は笑った。

「……意地悪だね。」

「そうかな?」

「そうだよ。」

しばらくの間、お互いに笑い合った。

「雨宮さんはさ、掃除……嫌い?」

「…好きではないなぁ。」

「そっか。」

一瞬君の瞳が揺らいだように見えた。


気づけばもう掃除が終わり、ゴミ捨てじゃんけんが始まる時間。今日の当番は私でも君でもなかった。

「じゃ、またね、雨宮さん。」

君は笑いながら言った。

「う、うん。またね!」

君は荷物を持って体育館へと走りだした。


夜、私はベッドの上で君のことをずっと考えていた。

「…今日はよく笑ってたなぁ。あんなによく笑うような人だっけ?」


彼はあまり笑わない。いつも気だるげ。故に、私の学年では有名で、『無気力ボーイ』と呼ばれている。それだけではない。何故なら彼の性格、容姿ともに良く、学校一の人気者なんだ。それに対して私は、漫画で例えるならクラスメイトAといったところだろう。そんな君が私に話しかけるなんて………


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