3秒奇談
<ひとつめ>
まだ暗い朝4時に、ゴミを出しに行った。
ゴミ捨て場には、半透明のゴミ袋がひとつ置かれていた。
中に詰められていた、お婆さんと目があった。
<ふたつめ>
夜の山道をわたしは歩いていた。
すぐ後ろに、いる、とわかっていた。
振り向いてはいけない、ともわかっていた.
振り向いてしまった彼の、ちぎれた手首が、わたしの指を握りしめていた。
<みっつめ>
「ぼく、百足になっちゃうよう」
と夜中、急に息子が泣きだした。
息子の足が、一本増えていた。
<よっつめ>
夜中の神社で、必死に祈っている男のひとを見た。
「もう、ゴキブリは殺しません。もう、ゴキブリは殺しません。だから、・・・・・・もどして」
そのひとの両腕は、ゴキブリの足になっていた。
<いつつめ>
「だーれだ?」
急に目をおおわれた。
驚いて、後ろに手をのばしてみたが、何も触れない。
誰もいない。
なのに、何かが、目をふさいでいる。
「だーれだ?」
<むっつめ>
最近なぜか、目をつぶると、まぶたの裏の闇の中に、
目玉がはみ出た赤ん坊の顔が浮かびあがる。
眠れない。
怖くて目をつぶれない。
<ななつめ>
「蜘蛛は害虫を食べてくれるから、殺さないほうがいいよ」
そう言って笑う彼の口の中には、
びっしりと蜘蛛の巣がはっていた。
<やっつめ>
おかあさんとかいものにいったとき、でんちゅうをなめているおじさんをみた。「おかあさん、あのひとへんだよ」といってゆびさしたら、そのおじさんがとんできて、ぼくのゆびにかじりついた。
<ここのつ>
夕方、家に帰る途中、
路地裏で、両目に針を刺した少女に出会った。
少女は、すごい力で私の手をつかみながら言った。
「わたしと目玉を交換しろ」
<とお>
「あの、これ、食べてください!」
後輩の女子が、顔を赤らめながら、おれにタッパーをさしだした。
中には、何か赤黒い肉のようなものがつまっていた。
ふと、彼女の足にたくさんの包帯が巻かれていることに気がついた。
「食えよ」
彼女の声色が変わった。