この空を飛びたいな
完結です。
後味のいい作品とはいえないかもしれません。
また、確定した終わりでもありません。
青年が結局誰で、なにだったのかもわからずじまいです。
「……あれ?」
気づけばビルの屋上にはわたししかいない。
あの変わった青年はいなかった。
「……夢?」
まるで元から誰もいなかったかのように、ほかには誰の気配もない。
わたしは首をかしげたが、すぐに「そんなこともあるか」と思い直した。
「変わった人だ。自殺をする人はたいてい、心根の優しい人間だなんて」
呟きながら、わたしはフェンスの向こうへと視線を移した。
「……人は空を飛べない」
フェンスへと歩み寄る。足取りは決して軽くない。まるで地面に掴まれているかのようだと思った。
フェンスを掴めるところまでくると、よりこの場所の高さがわかる。
終わる、逢魔が時にわたしは空を見上げると、まだうっすらと赤い蒼い闇色の空を見上げて、呟いた。
「この空を、飛びたいな……」
闇の広がる世界の空。わたしは地上から逃げることを望んでいたのだろう。
わたしがどうなったのか、ご想像にお任せします。
評価などなど、よろしくお願いします。