丘の上で待つ君
とある晴れた日の昼を過ぎた刻、一人の青年はひとつの墓の前に花束を持って立っていて、悲しげな表情を浮かべ、無理に繕った笑顔が目立つ。
この墓の者は恐らく青年の大事な人物なのだろう。
そして、青年は苦笑いを浮かべながら、墓に語りかける。
◇ ◆ ◇
「久しぶりだね。俺達が初めて会ったのも、ちょうど今日みたいに晴れてたよね。」
俺はそんなことを呟きながら墓に話しかけた。
墓に埋められているのは、俺の親友のルーク・アウンクラだ。
二年前の第一次人魔対戦でルークは戦死した。
幾つもある人間領土の1つ、慰霊の砦の守護を任せれたルークの隊は、押し寄せてきた魔物に潰され、砦を奪われてしまった。
ルークの隊は全滅した。
30人いた隊員誰一人生き残った者はいない。
別に彼等が弱かった訳ではない。
寧ろ、彼等は屈指の強者が半数を占めていた。
それでも、砦をは奪われてしまった。
幹部クラスの魔物一人が攻めただけで、彼等は敗れてしまった。
たった一人に。
それほど、幹部クラスの魔物は強敵だった。
今も、 その砦は魔物側の拠点だ。
だが、近々奪還作戦が行われる。
その作戦に、俺、ローグ・レイルーラは参加することになった。
というより、自ら志願していた。
何故なら、親友のルークが奪われてしまったこの砦を、自らが奪還して、ルークを安心させたいからだ。
あれから2年、俺はさらに厳しい訓練をし、今では一つの団の団長だ。
わざわざ自殺をしにいくような真似はしないつもりなので、それなりに鍛えた。
その事を親友に告げるために、そして、きっと二度と訪れることはできないと、思ったので、冥土の土産にと、親友の前に足を運んだのだ。
◇ ◆ ◇
「もう...2年になるんだな。ルークが死んでから...」
青年、ローグは墓にそう語りかけた。
「俺さ、実は討伐団の団長になったんだ。へへ、ついに叶ったよ。俺らの夢。ま、俺だけしかなってないからって、あとで怒らないでくれよ?」
その言葉は、何処か寂しさを感じた。
「それでね、近々ね慰霊の砦奪還作戦があるんだ。絶対に勝ってくるからさ、見守っててね。」
やはり、その言葉には寂しさを感じてしまう。
おそらく、本人も気づいているのかもしれない。
が、ローグは続ける。
「この作戦が終わったら、次はいよいよ魔王城に突入するんだ。勇者様達と一緒に。
こんなことがあるなんて俺はホントラッキーだよ。だからさ、次に会えるのは魔王を倒してからになるからさ、▓▓▓▓▓▓」
そして、青年は花束を墓の前に置き、静かに去っていった。
◇ ◆ ◇
あれから三日後、慰霊の砦奪還作戦が行われた。
苦戦を強いられながらも、 見事討伐団は勝利を納めた。
そしてその五日後、勇者パーティーとその他の実力者御一行は魔王城に突入して魔王を打ち倒した。魔物との戦争は、終結を迎えた。
が、いつまでたってもローグはルークの墓の前に訪れることはなかった。
◇ ◆ ◇
ざっ、ざっ、ざっ。
地面を歩く音が聞こえる。
一つの小さな丘に、一人の青年が少し大きく伸びた木の幹にもたれかかっている時、一人の青年が歩み寄る。
「ん?あぁ、もう来たのか。意外と早かっな」
「そう?結構時間かけたと思ったんたけどな〜」
「いいや、それはないな。」
「そこまで否定しなくてもいいだろ、ひどいやつ。」
「お前にそんなことを言われるとはな。
なにが【ちょっと待っててね】だ。死ぬことを分かって言ってた台詞じゃねぇか。まったく、生き残れたのに勿体無いことしやがるな。」
「ちょっ、そんな恥ずかしい聞いてたの!?うわ〜...」
「おう!最初から最後まで聞いていたぞ。」
「え〜!?まったく、聞いているなら教えてくれればよかったのに。」
「アホか!死んでんのにどうやって教えるんだっつ〜の。」
「まぁ、それもそうか。」
「さて、お前も来たことだし、そろそろ逝くか。」
「そうだね。待たせて悪かったね。」
「なぁに、気にするな。そんなに退屈じゃなかったぞ。」
そして、二人の青年はどこか遠くの空に消えていった。
【丘の上で待つ君】はいかがでしたでしょうか。
ちょっぴり切ないけれど、最後はしっかりハッピーエンド。短かったけれど、楽しめたらいいなと思っています。
あとで、考えてみたら、これの連載版を作ってみたいなと思っています。
機会があったら書いていこうと思います。
それでは、さようなら。
また何処かで....