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みっつ

 招かれざる客に恥ずかしいところを見られるや否や、その客が韋駄天のごとき速さでこの場を立ち去った折、私は淫らに乱れたスカートを叩くことでしか平静を取り持つことができなかった。

 失敗を誤魔化そうと言い訳する前に逃げられるもんだから、全くこれを割り切るのは難しい。

 仕方がないので今日どっさりと集められた『妖異』に関する資料を漁ってファイルに綴じ込める作業を再開しよう、という次第だ。

 さて、一人で片付けられるかな。

 無理だな。

 陽菜さえいれば下校時間ギリギリまでに間に合ったろうけど、彼女は用事で来れず、ハジメはアテにならないし頼みの綱であるラクは最近、なんかやってる。

 あいつらに友達との約束はなければバイトなんて勤勉なことをする性格でもない。

 れっきとしたボイコットを整然とされるなんて、私としてはたまったもんじゃない。

 たまってるのよ。紙も、ストレスも。

 いつかぶっ飛ばす。

 …………とはいえ、もうこの日の作業が捗ることはなかった。

 原因はさっきの男子。

 何年生かは知らないけど、身近にその存在と出くわすことになるとは。

 そう、覗き魔痴漢変態という意味ではなくて。

 へらっとした冴えない男だったけど、よもや結界を簡単に踏み越えてくる人間だなんて思いもよらない。

 制服の状態を見るに新入生か。

 早めに手を打っておいた方がいいかな。

 いずれ誰かに保護対象とされるだろうけど、遅いよりはマシだ。

 もちろんパンツを見られたことは根に持ってない。

 これっぽっちも、全然。

 だって色を塗られた布を見られただけだし。

 実質服を見られたってだけだし。趣味を見られたってだけだし。

「ははははははは」

 …………かなり気にしてるわ。

 誰も見てないよね?

 今の笑い声誰も聞いてない?

 ハジメはどこに潜めているかわからないから、こういうのはしっかり警戒しておかないと。

 単細胞への気遣いはこれだから困る。

 とうとう紙やファイルにすら手をつけなくなり、今日のところは置いといて、明日これの片付けを一気にしてしまおう。

 どうせまだ一週間の半ばしか経ってない。

 むしろこの量で済んだのが幸運だった。

 よし。

「帰ろ」

 さっさと身支度を整えて、窓を閉め鍵をかけ、カーテンを開け放って電気を消し、扉を閉めて鍵をかけて、また職員室に寄って帰ろう。

「誰か…………手伝ってよ」

 なんで私一人でこんなにしなくちゃならないの?

 みんな私が嫌いなのかな?

 陽菜…………陽菜の大事さがよくわかった。陽菜の優しさがわかった。

 後輩ができたらしっかり手伝ってもらおう。

 オカルト研究同好会。

 どう考えても部員が増えそうにない名前だった。

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