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しじゅう

最近調子悪いです。

なにか気になるところあったら教えてください。応用と、改善させていただきます。

 なんだあれ…………?

 なんでいきなり外が燃えたりしたの…………?

 昼の明るさが弱く感じられるほど明るくて、なのに熱が伝わってこなかった?

「ねぇっ、さっきのなんなのっ?」

 たまらずあたしは、横たわっていた状態から自力でベンチに座り直した沢井に訊ねた。

 せっかくあの息をするだけでも空気を凍らせるような化物が追い出されてホッとしてたところなのに、外があれでは出るに出られないじゃないっ。

 沢井は澄ましたもんで、

「焚き火でもしてるんじゃないのか?」

 と、傷口を弄り倒してやろうかと思うような返答をした。

 マジで今なら勝てるんだから、口には気を付けてほしいよねっ。

「失礼した。次から気を付けるよ」

 !

「今…………またあたしの心を………っ?」

「気のせいだ」

 それは苦しい。

「気になるんなら観に行ったらどうだ?」

 なんなのよもうっ…………!

 とはいえ、あのラクさんも火が消えたあと向こうに行ったけど、確かに気になるから観に行きたい。

 …………ラクさん、飛び降りてたけど生きてんの?

 ああ、いやいや、ステンドグラスを割って入って無事な人みたいだし、多分絶対大丈夫。

 それにあたしが怖れるあの人がどれ程のものなのか。‘彼’とどういう闘いを繰り広げているか。

 よしっ。観に行こうっ。

「行くんなら僕も連れて行ってくれ」

 ………………。

 世話の焼ける先輩。

 あたしは渋々、ひとりでは立って歩けない沢井に肩を貸し、がんばってよたりよたりと、ベランダへ辿り着いた。

 沢井は柵に身体を預けた。

 セクハラもなかった。さすがに、空気を読むことぐらいのことはできるらしい。

 外は広い広い中庭だった。

 そこには迫力の光景が一面に広がっている。

 砲筒?大砲?迫撃砲?

 ズラリと並べられているそれらは一様に方向を中庭の中心に向けられており、そしてその先に、あのふたりが大立回りを演じていた。

 でも勝負は決まったらしい。

 ‘彼’が横たわり、その側でラクさんが見下ろしている。

 つまり終わったのか…………ずいぶんあっさりとしてるけど、これ以上恐い思いをするのはコリゴリだ。

「違う、まだだ」

「え?」


 その通りだった。


 ドクンッ。


 そんな音が聞こえた気がした。

 それは、‘彼’が息を吹き返した際の効果音だったのかもしれない。

 痛みを堪えながら、‘彼’は立ち上がろうと、地面に両手を突っ張ろうとしている。

 もがき始めている。

 ここからではよく見えない…………なんか話してるのか?

「ハァッ…………!グッ!痛いっ!全然面白くないっ!なんでだっ?!前は一回もカスってすらいなかったのにっ…………!」

「だから、具合悪かったんだって。腹も減ってたし」

「なんだよ、それっ。そんなんで調子変わるもんなのっ…………?」

 やっぱ話してるみたいだけど、まったく聞こえないな。それとして、まだやるつもりなんだろうか?もう限界にしか見えないけど。

「で?まだやるのか?」

「っ…………いや…………もういい」

「あっそ。じゃあ確保で――――」

「代わりにこいつの相手をしてもらう…………」

「あ?」

 と、突然、ラクさんと‘彼’の周りを、なにか白いものが覆いだした。

 よく見るとそれは、どうやら大量の紙のようだ。

 ボソリ、と沢井が呟いた。

「召喚?なんであんなやつがっ?」

 召喚?召喚って、カードゲーム?

 紙はみるみる内に巨大な柱になり、あの中に閉じ込められたラクさんと‘彼’の姿が見えなくなってしまった。

 そのまま、さっきの沢井宜しくの封印でもするのか?と思ったけど、召喚という言葉を思い出し、なにか出てくるのだと予想した。

 柱が形を保っていたのはほんの数秒で、また下から紙が解れ始め、ラクさんと‘彼’と、さっきはなかった大きな脚が見えた。

 徐々に紙の解れが上にいくほど、その全貌が明らかとなっていく。

 ――――果たしてその正体は、5メートルを裕に越す獅子の様相を成した、‘なにか’だった。

 わからない。

 目に見える質感がなんだかCGめいていて、けれどそこに存在しているのは確かで、でも形もなんだか不自然で…………。

「あいつ、あんな妖異を従えていたのかっ…………?」

 妖異?

 獅子は咆哮をあげ、そのあまりにも巨大な掌でラクさんを潰しにかかった。

 それを紙一重で避けたラクさんは一旦後退して、けど、巨体に似合わず凄まじい速度でそれを詰めた獅子が、今度はまた掌で、はたくように、ラクさんを襲った。


 その際に獅子にしっかりついていた尻尾が、あたしたちのいるベランダの屋根に当たり、石の雨が降り注いで――――っ。


 っ……………………。

 !

「沢井さんっ!」

 気がつくと、沢井があたしを庇って石の下敷きになっていた。

 っ…………頭が痛い。直前に突き飛ばされて…………それで助かった?

 なら早く沢井を助けないとっ!

「ああ、いや、大丈夫か…………?」

 沢井は今の自分の状況よりも、ほぼほぼ無傷のあたしを慮った。目がうっとりしている。なに考えてんの…………?

「くっ!」

 あたしは意を決し、沢井を潰しかかっている石に手をかけ、救助を試みた。

 幸い、石はそれほど重くなく、女子のあたしでもテコを応用せずに退けることができた。

「ああ、ありがとう」

 お礼が言える余裕があるらしい。意識は大丈夫――――だけど、身体の方は悲惨と言っても過言じゃない。長くもたないかもっ。

 さっきの闘いと合わせて、もう完治不可能のはずだ。

 あたしは誰かに助けを求めようと周りを見渡した。大砲を持っている人たち、彼らは味方のはず。

 だけどそれよりも目が行ったのは、獅子とラクさんの闘いだ。

 あれだけの巨大さと馬鹿力を併せ持った化物が、高が人間に手こずっていた。

 リーチと範囲を生かした攻撃はことごとくかわされ、明らかに弄ばされている。

 はっきり言って、見物だった。

 この勝負に興味がある。じゃないっ。早く沢井をっ!

 誰かっ?

 いたっ!ふたりこっちに駆け寄ってくるっ!

「おいっ!大丈夫か?!」

 ひとりは見た目十代か二十代にしては、結構大人びた人、みたいだ。

「早く!沢井さんが…………!」

「これは酷い。沢井 萌っ!意識はあるかっ?」

 片手があがった。弱々しく。

「時間がないなっ…………お前っ!このことを夏希嬢に伝えろっ!俺はこいつの応急処置と、一番近い支部に連れていくっ!」

 なんか…………この人、歳の割りに偉そう。

「り、了解ですっ!」

「さて…………お嬢さん、見たとこ部外者のようだが、いや、拐われたってのは君のことか?」

「は、はいっ!」

 声がうわずってしまった。この人たちが探してくれてたんだ…………大勢の人が、あたしを…………。

「ボーッとするなっ!君も連れていくっ!少し待ってろっ!」

 なんかすごい迫力…………人命がかかってるから当然だけど。

 中庭では未だ、ラクさんの命を賭けた死闘が繰り広げられている。

 大きな拳が降ってくるのを避けて後ろに回りこんでも、尻尾がそれに反応して反撃を遮る。優勢には見えない。弄ばされているなんて、勘違いだった。

 しかし、大砲の列に動きがあった。次々と砲口と標準が獅子に合わせられ始めていた。

 すごい連携…………海賊ってこんな感じなのかな?

 砲撃手に指示を浴びせている怒号。彼らの的確な指示のお陰――――、

「撃てぇぇぇっ!!!」

 耳を塞ぐのが遅れたっ。10を越える数の咆哮が鳴れば、音の度合いなんて知れたものだったのにっ。

 けれど耳を塞いだところで、しばらく聴覚が麻痺するのは避けられなかっただろう、それほどの爆音だった。

 まだ頭がガンガンしながらも、やっと周りの音が聴こえだしたとき、沢井の処置をしている人が声をだしているのに気がついた。

「チッ、出遅れちまった…………誰かに引き継がせねぇと」

 戦地でさらに指示が飛んだ。

「ラクっ!そいつの相手は私たちがするからっ!‘彼’を追いなさい!!」

 聴いたことがある声が飛んだ。

 …………そういえばさっきこの人が‘夏希嬢’って?

 と、いきなりその人の方を向こうとしたとき、なにかがそれを割って入ってきた。

 これでも動体視力はいい方。

 その‘なにか’とは、冬真 楽だった。

 ぶわっと鳥肌がっ…………。

「しっかりなっ!」

 男の人は沢井の処置をしながらラクさんに激励の言葉をかけ、自身もやっと、

「よしっ!あとは支部に着いてからだっ。来いっ。離れるなよっ」

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