さんじゅうろく
なんで…………じっとしてるんだ。
「あなたが選んだのよ」
僕が?
違う。
僕は伊狩先輩に言われて、仕方なく――――。
「それでも、嫌だと言えたはずよ」
言えた。言えたんだ。
人に言われたからやめた。言い訳のしようがない。
「できることなら、助けに行きたかった?」
もちろんだ。
でも、伊狩先輩に言われたことは正しい。
僕はヒーローに成りたかっただけなんだ。和真を助けることによって、できなくとも、あの場に行ければ僕は、悪者にならずに済んだかもしれない。
「ここにいるのが悪者なの?」
違うかもしれない。
僕がここにいることによって、扇の人たちは力を遺憾なく発揮できる。味方の攻撃に巻き込まれて死んでしまったら、洒落にならないんだ。
「あなたは無力だものね」
もっとひどく言ってもいいよ。
僕は 無能だ。
「大丈夫。わたしは知っている。あなたには力がある」
ないよ。
「知らないだけよ。教えてあげる」
…………?
「フフフフッフフフフッ」
なにがおかしいんだ。
「いい?これを誰に教えてもらったかは、誰にも秘密よ?」
…………あなたは誰?
「友」
…………。
そんだけっ?