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さんじゅう

「それは面白い」

「だろ」


 ………………。


 まず僕は和真の突発性超身体能力よりも、お互いに嫌い嫌いと言っていたはずのふたりが、まるで友達のようにおしゃべりを交わしているのに目と耳を疑った。

「いや、ハジメ先輩、冬真先輩。仲悪かったんじゃないんですか?」

「仲?――――は、悪いな。嫌いだからな」

「ぶっ殴ってやりたいと思ってる」

 一触即発っ?!

 僕はギョッとして身構えたけれど、二人に動きがないところを見るに、多少は冗談を兼ねているらしい。

「だったらなんでしゃべってるんですか?いくらなんでも矛盾でしょうに」

「勘違いするな、秋人。僕はそのツインテールロリに興味が湧いただけだ。僕の興味が、このアホへの嫌悪感で邪魔される方が業腹なのさ」

「理屈は通ってるんだな…………」

「その子が気になったのは私もいっしょよ」

 伊狩先輩も、口の前に両手を置いてハジメ先輩に共感した。

 時は午後4時半過ぎ、場所はオカルト研究同好会にて、みんなそれぞれ特等席とも呼べる定位置に座ってするのは、冬真先輩の報告からずっとこの和真の話ばかりだ。

 今日は珍しく仕事がない。

「聞いた限りでは身体能力の他に気になるところはなかったようだけど?」

 陽菜先輩は伊狩先輩へ疑問を投げかけた。

 僕もあの身体能力が気になるところなんですが。

 和真が運動が得意という話も特に思い当たるところもない。

「気になったのはラクを恐がったところよ」

 …………ああ。確かにそこは不自然なのだろう。

「おれはなんで嫌われたのかなって思ったよ」

 と、冬真先輩は大きく肩を落として落胆した。

 そりゃ、見慣れた天敵に対してなら話は別だろうけど、初対面の人間にあんな反応はどんなことがあってもしない。

 決して。

「ええ。ラクを嫌っているなんて。一体どんな理由があったのかしら。是非訊くべきよね」

 伊狩先輩はイキイキとそんなことを言う。

 どうしてそんな風に嬉しそうな顔をするんだろう。

 どうやら、伊狩先輩は冬真先輩が嫌われることを面白がってる節があるようだ。

 かなりのイジメっ子気質を持ってるな、この人。

 うつむいて暗い影を落とす冬真先輩を尻目に、和真の話題は淡々と続いていく。

「そういえば弐ノ舞先輩は?」

「委員会だよ。風紀委員長だから」

「しかし思えば、初対面でラクを恐がるというのは、やはりおかしい反応ではある。それこそ本能で忌避していなければだが」

「そうねハジメ。彼女は猫嫌いだそうだけど、偶然にしては筋が通ってる感が否めないわ」

「まるで知っていたかのように。ある種の直感というやつかな」

「おそらく、彼女はそういう存在ね」

「ならすべきことはできてくるな」

 ガタッ、と述べつ幕なしに話を進めたあげくに、ハジメ先輩と伊狩先輩は同時に立ち上がって帰り支度を始めた。

「いや、先にまとめないでくださいっ。なにがすべきことなんですか?」

「秋人。お前、そのツインテールロリが今なにしているか、わかるか?」

「やめてくださいよその呼び方。彼女の名前は和真です。ハジメ先輩」

「彼女の身の安全を保証してほしいならさっさと居場所を言え」

「誰が言うかっ!」

「なぜだっ!僕は女性を安心させることに関しては他の追随を許さないと断言できるぞ!」

「そんなあんたの人となりがあいつの安全を保障できないっ!具体的には発言に遊び人の要素が多く加わってるっ!」

「失敬な!僕は童貞だぞっ!」

「童貞に一切のプライドを感じないっ?!」

「秋人くん、早く教えて」

 ………………はい。

「今日は和真…………バイトのはずなんですよ」

「秋人くんと和真ちゃんって、ほんと仲良いよね。そこまでお互いを共有できてるなんて」

「いやっ、陽菜先輩っ。僕は別にそういうつもりで和真の今の予定を知っていたわけじゃ…………っ」

「わかってるよ。和真ちゃんが教えてくれたんだよね」

「なんで知ってるんだ…………」

「で、どこ?今すぐにでも行きたいんだけど」

「えっと…………」

 なんかメンド臭そうだな。

 多分、早く終わらせてゆっくりしたいだけなんだろうけど。

「まて夏希。先に確かめたいことがある」

「なによハジメ…………」

「ラク。今、金どのくらい持ってる?」

 もう、仲良しでいいんじゃないかな。ハジメ先輩と冬真先輩は。

 うわっ!冬真先輩の影が濃すぎて、一瞬ゾンビかと思ったっ!

 どんだけ傷ついちゃったんだよっ!

「………… 一昨日使ったからあんまないけど」

「そうか。じゃあ今すぐ卸してこい。僕もヤバい」

 そしてなに故に金の話?

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