ダンジョンコア
ダンジョンコアという便利アイテムを手に入れたので、さっそく村へ戻りダンジョンを作り始める事にする。
だがこのダンジョンコアという代物、ダンジョンを作るのに便利なアイテムらしいけど見た目が宝珠というか色の付いた水晶玉と言った感じでスイッチらしきものは何処にも無く使い方がサッパリ解らない。
しばらく悪戦苦闘をしていると旅の荷物を片付けたミキさんがやって来た。
「これ、スイッチも何も無くて使い方が分からないんだけど使い方わかります?」
「ごめん、使い方を教えて無かったね。使い方は簡単、地面に置くだけでいいよ」
俺がダンジョンコアを地面に置こうとするとミキさんが慌てて俺の腕を掴んで止める。
「あっ、待って! 言い忘れてたけど、これを置いた場所がダンジョンの入り口になるから家から少し離れた場所の方がいいと思う」
危うく俺の家の庭がダンジョンの入り口になるとこだった。
家で風呂に入ってるミキさんがダンジョンから出てきたスライムに襲われてスライムまみれになるとか、気が付いたら何気ない顔して冒険者が俺の家の居間でお茶飲んでくつろいでるとか要らないから。
ミキさんのアドバイスに従い、家から10分ほど離れた広場にダンジョンコアを置いてみると地面に吸い込まれる様に消えた。
「消えちゃったな」
「お兄ちゃん消えちゃったよ」
「ご主人様どうしましょう?」
オロオロする俺達にミキさんも少し焦ってる。
「わたしもダンジョンを実際に作るのはこれが初めてだけど、た、たぶん、こ、これで大丈夫だから」
そう言って錬金術ギルドで買って来た書籍『ダンジョンコンストラクション入門』のページを必死にめくる。
「こ、これね。『ダンジョンコンストラクション』て言ってみて」
「『ダンジョンコンストラクション』」
すると軽いめまいと共に視界が歪み、大きなディスプレイがいくつも並ぶ白くて少し広めの部屋に移動した。
なんか特撮アニメの司令部みたいな感じの部屋だ。
「うわっ! なんか移動したぞ!?」
でも部屋の中には俺だけでミキさんの姿は無かった。
頭上に表示されるディスプレイの一つにカメラで撮影されたらしいミキさんの姿が映っていた。
ミキさんの声が聞こえる。
「ダンジョンの管理室に入れた様ね」
「ええ、来れた様です」
でも、俺の声は届いてないのか聞こえてないみたいだ。
ミキさんは本をしばらく読んだ後に話し始める。
「キーボードの横にマイクボタンが有るから押してみて。それで会話できるから」
言われた通りマイクに赤いボタンがついてたので押してみた。
「これでいいですか?」
「うんうん、それでオーケーよ」
「ご主人様の声だ!」
「お兄ちゃん何処に行ったの?」
「なんか指令室みたいなとこに居る」
「ご主人様が消えたので心配しましたよ」
「大丈夫。ちょっとビビったけど俺は無事だ」
「じゃあ、キーボードのある真ん中の席に座ってメニューを選んでみて」
メニューか。
カーソルキーでメニューを選ぶと正面のディスプレイにメニューが表示された。
――ダンジョンメニュー
――・ダンジョンステータス
――・ダンジョン開発
――・ダンジョン管理
「なんかメニューが出てきた。ダンジョンステータス、ダンジョン開発、ダンジョン管理」
「『ダンジョン管理』を選んでみて」
「『ダンジョン管理』か」
――ダンジョン管理
――・宝箱管理
――・モンスター管理
――・ダンジョンポイント管理
――・スタッフ管理
――・マスターメニュー
「新しいメニューが出てきたな。宝箱管理、モンスター管理、ダンジョンポイント管理、スタッフ管理、マスターメニュー。どれ選べばいい?」
「『スタッフ管理』を選んでみて」
「おう」
「『スタッフ管理』を選んだら『スタッフ登録』を選んでみて」
――スタッフ登録
――・ヘブン
――・雪
――・ミキ
「全員スタッフに登録して」
「おう、ミキさんを登録と。雪とヘブンも登録だな」
――プレイヤーミキをダンジョン管理スタッフに登録します。
――プレイヤーヘブンをダンジョン管理スタッフに登録します。
――プレイヤー雪をダンジョン管理スタッフに登録します。
背後から声が。
「出来たみたいね」
見るとミキさんだった。
ミキさんと、ヘブンと雪も指令室に来ていた。
「すごーい! こんなに画面が有ったらゲームしまくりだよ」
「なんなんですか、これは? こんなすごい部屋見た事ありません!」
驚きまくる雪。
マニュアルを読んだミキさんが続ける。
「じゃあ、ダンジョンステータスを見てみて」
「一番最初のメニューだな」
「うん。それを開いてみて」
――ダンジョンステータス
――・フロア 0階
――・モンスターポータル 0個
――・宝箱 0個
――・ダンジョンポイント 10pt
――・収入 1ダンジョンポイント/時
「なんか色々出てきたな」
「ステータスに出てきたダンジョンポイントを使ってダンジョンを開発するのよ」
「ほう、これがお金みたいな物なのか」
「そうね、そんな感じ。一番最初のメニューにダンジョン開発って言うのが有ったでしょ? そこからダンジョンのパーツを買って開発するの。とりあえず入り口を買って設置してみて」
1ダンジョンポイントを使って入り口を設置する。
するとカメラに映し出されている外の地面に、トンネルというか地下遺跡への入り口みたいなのが現れた。
「うお! 凄いなこれは」
「ダンジョンの入り口よ。ダンジョンポイントを使ってこの入り口の先にダンジョンを開発していくのね。部屋が無いと始まらないから、通路を設置してからルームを設置してみて」
言われるとおりに1ポイントの通路と3ポイントのルーム小を設置。
するとダンジョンの入り口に通路が繋がりその先に部屋が出来た。
「ご主人様! 突然洞窟が出来てその先に部屋が出来ました!」
画面を見ていた雪が興奮気味に言う。
「よしと。ではガイヤ君、ダンジョンの下見に行こう!」
ミキさんに言われて地上に戻りダンジョンの中に入る。
ダンジョンの中に入ると10畳ぐらいのちょっとだけ狭めの部屋が出来ていた。
「じゃあ残りのポイントを使って『モンスターポータル』を設置してみて」
ミキさんから渡されたタブレット端末を使って5ポイントで一番ポイントの低いダンジョンポータル:スライムを設置。
これで所持ポイントは全て使い0だ。
すると部屋の中にスライムが一匹現れた。
ご、ご主人様、目の前にスライムが突然現れました!」
「これがダンジョン作りの基本よ。面白いでしょ?」
「家を作るのとは違って、これも面白いな」
「ご主人様、スライムを倒していいですか?」
「おう! 倒していいぞ」
プチンと音を立ててはじけるスライム。
雪にとっては練習相手にもならない敵だった。
その後、スライムは二度と現れなかった。
「あれ? 次のスライムが出て来ないな?」
「あー、ごめん。モンスターポータルの説明を忘れてたね。モンスターの再呼び出しに時間が掛かるの。メニューの『ダンジョン開発』の『強化』を選んでみて。一階のフロア1のモンスターポータル1ね」
「何か色々表示されてるな」
――モンスターポータル:スライム
――・最大同時呼び出し数 1
次レベル2(1ダンジョンポイント)
――・呼び出し間隔 3600秒
次レベル1800秒(1ダンジョンポイント)
――・呼び出し数 1
次レベル2(1ダンジョンポイント)
――・モンスターレベル 1
次レベル2(1ダンジョンポイント)
「いまは1時間に一匹しか出て来ないけど、ダンジョンポイントを使ってこれを強化するのよ。するとスライムが沢山出てきたり、より強いスライムが出てくるようになるのよ」
「ほう、なんとなくわかって来たぞ。でも手持ちのダンジョンポイントは0だから今は強化出来無いな」
「ダンジョンポイントは1時間すれば増えるわよ」
「さっき有った『収入 1ダンジョンポイント/時』ってのだな。これって1時間にダンジョンポイントが1回復するって事でいいのかな?」
「うん、そう、そんな感じ」
「1時間で1しか増えないのか。となるとまともなダンジョンを作るにはかなりの時間が掛かりそうだな。これってまるでソシャゲのスタミナみたいな感じだな」
「モンスターが冒険者をやっつければ1時間待たなくてもダンジョンポイントが増えるわよ」
「こんな一部屋しか無くてスライム一匹しかいないダンジョンに、冒険者がわざわざやって来るとは思えないんだけど」
「だよね。それならリアルマネーパワーで解決ね」
「金で解決できるのか?」
「ダンジョン管理からダンジョンポイント管理を選ぶの。そして購入を選んで聖水晶を捧げるのね。聖水晶はちょっと高いけど聖水晶一個で1000ダンジョンポイントに交換できるのよ」
「聖水晶なら作れるな」
「聖水晶作れるの? あれって錬金のかなり高いスキル居るんでしょ?」
「そりゃ、俺は転移石作れる位だから聖水晶作る事ぐらい余裕だよ」
俺が聖水晶を作ってるのを感心した顔で見てるミキさん。
すぐに100個ほどの聖水晶が出来た。
ダンジョンポイントの購入メニューをだして地面に聖水晶を置くと次々と地面に飲み込まれてポイントに変換された。
100個の聖水晶で10万ポイントになった。
「じゅ、10万ポイント? これだけポイントが有ったら、レッドレイクのダンジョンどころじゃなくてジェネシス周辺のダンジョンの匹敵するものが作れるわよ!」
「なにいってるんだよ。俺たちの作るのは至高のダンジョンだぞ。10万ポイントなんてケチ臭い事言わずに1億でも10億でも掛けるぞ!」
「ご主人様凄いです!」
「さすがお兄ちゃん!」
「どしぇー! マネーパワー過ぎるぅぅぅ!」
一人腰をぬかすミキさんであった。




