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全財産をガチャに注ぎ込んだ結果、チームでハブられていた俺は成り上がる  作者: かわち乃梵天丸
第二章 真魔王を倒した結果ほぼ全裸で雪原に放り出されたが、なんだかんだで成り上がる
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廃錬金術職人

 俺はヘブンの復讐計画に乗ることにした。


「お兄ちゃん、転移石ってどうやって作るの?」


「レシピの事か?」


「そう、レシピを教えて欲しいんだ」


「えーとな、レシピはこうだな」


 俺はレシピを書いた紙をヘブンに差し出す。


 ・聖水晶×2

 ・聖金鎖×1

 ・聖水×1


「これだけ?」


「うん。これだけだよ。ただ、これは全部最終素材だからね。当然この素材は手に入らないから自分で作らないといけないんだけど、この素材を作る事を考えると実際に使うレシピはもう少し複雑かな?」

 

「これで大体どの位の原価になるの?」


「聖水晶が一つ7万ゴルダで合計14万ゴルダ、聖金鎖が4万ゴルダ、聖水が3,000ゴルダ」


「合計18万3,000ゴルダの素材なのね……結構素材高いんだね」


「高いよな。だから俺はこのレシピ使ってないんだ」


「え? じゃあどうやって作ってるの?」


「代用品使った隠しレシピで作ってる」


「そんな事出来るの?」


「うん、安い素材使って作ってる。違う素材のハイクオリティー品で代用してるんだぜ。俺は、聖水晶の代わりにガラス板使ってるんだ」


「それって粗悪品て事?」


「違う違う。粗悪品じゃ無い。例えばジュースとかを飲む『コップ』有るだろ? 透明なコップ。あれって素材解るか?」


「ガラスだよね?」


「そうだな、普通はコップの素材はガラスだな。でも水を飲む為の『容器』って機能だけ考えれば素材は紙で作った紙コップでもいいしプラスチックでもいい。ただその場合は潰れたり割れたりして耐久度が低くてガラスのコップより性能が落ちるけどな」


「でしょ? だから粗悪品でしょ?」


「紙や普通のプラスチックだとそうなるな。でもガラスを使わないからって性能が落ちるって事は無いんだぜ。同じプラスチックでも硬質プラスチックのポリカーボネートや金属のアルミやステンレスを使っても水を飲むと言う機能を満たせるし、逆に割れないからガラスのコップより頑丈な高性能なコップが出来る」


「あー、そう言う事か」


「極端な話、金や銀みたいなもっと豪華な素材で物を作っても水を飲むコップって言う機能は満たせる」


「なんとなく解ったよ」


「転移石の代用レシピだとこんな感じで作ってる」


 ・ガラス板+3 ×4

 ・ペンダントヘッド+3 ×1

 ・聖水+3 ×1


「これって素材の値段はだいぶ違うの?」


「そりゃなー。違わないならこんな面倒なの使わないよ」


「だいたい、どのぐらい?」


「俺は全部+3のハイクオリティー品使ってるんだけど、ガラス板+3は50ゴルダのガラス瓶の分解品だから合計200ゴルダ。ペンダントヘッド+3は一個50ゴルダの鋼の(やじり)12個を素材のスチールインゴット+3に分解してから作り上げてるから合計600ゴルダ。あと聖水は村の井戸から組んだ水で作ってるからタダだ。全部の合計で……800ゴルダかな?」


「やっす!! ボッタクリ過ぎじゃん! 800ゴルダを50万ゴルダで売るお兄ちゃんて鬼畜じゃん!」


「そうでもないぞ。普通は作るのが大変な+3のハイクオリティー品の素材を使ってるし、その分手間がかかってるからな。そんなこと言い出したらVRMMO:BBBの特典パックだってボッタクリだぜ。あれって素材で考えると殆どがプラスチックで、更に言うなら原油10ccも使ってないと思うけど3,800円も取ってるんだぜ? ボッタクリ過ぎないか?」


「だって、それは素材の話だけで、それにはゲーム作る沢山の人の開発費とかパッケージ作る製造費とか全然入って無いし」


「だろ? この代用レシピの転移石も素材は安いけど手間は正規レシピの物よりずっと掛かってるんだ」


「なるほどねー。お兄ちゃんの言う手間の意味が解ったよ」


「わかればよろしい。ヘブンは頭いいから理解が速いな。ほんとお前は賢いよ」


「えへっ! その転移石の手間賃て、いくらぐらいなら見合うかな?」


「5,000ゴルダも貰っとけば十分かな?」


「じゃあ、10,000ゴルダなら文句無いよね?」


「それだけ貰えれば十分過ぎるぐらいだな」


「じゃあ、ちょっと私出かけてくるからお兄ちゃんは転移石1,000個ほど作っといて」


「解った」


「じゃ、行ってくる」


 俺は膝の上で気持ちよさそうに寝ている雪を降ろしてベッドに寝かせ、転移石を作り始めた。


 2時間ちょっとで転移石を作り終えるとヘブンが帰って来た。


「ふー。疲れたー。明日面白い事が起きるから楽しみにしといて」



 翌日、レッドレイクの街に転移石クエストのNPCが出現した。


 正確に言うと、ゲームの世界ではNPCだった食材屋の店主のオヤジさんが転移石クエストを発行している。


「こ、これは一体……どういう事だ? クエスト発行NPCは消えたんじゃないのか?」


 その食材屋の店主は簡単なクエストと引き換えに転移石を5万ゴルダで売っていた。


 街で店主の言う通りの細々とした物を買って来て渡すと、その謝礼に転移石を貰う権利証を50,000ゴルダで売って貰え、7日後にその権利証と引き換えで転移石が貰えるという物だった。


「ど、どうするんだよ? 俺昨日、転移石1,000個も作り込んじゃったぞ! もう売れなくなるぞ!」


「大丈夫。あのNPCはお兄ちゃんの転移石を売るNPCだよ」


「え?」


「よく見てよ、あのクエストの素材。あのクエストのお使いの要求品の中に転移石の素材のガラス瓶4個と、鋼の鏃12個が入ってるでしょ?」


 確かにNPCが要求してるお使いリストの中にはちみつやベーコンに混じってガラス瓶4個と鋼の鏃12個が混じってた。


「こ、これって??」


「転移石を作る素材だよ。お兄ちゃんが作る転移石のね。昨日あれから転移石を売ってくれるNPCを探して交渉したんだ。こっちの取り分が47,000ゴルダと素材の瓶と鏃で向うの取り分が3,000ゴルダとはちみつとベーコンね。雪ちゃんを転移石の販売であんな危ない目に二度と遭わせられないしね」


「ヘブン、お前天才だな。NPCにアイテム売らせるって天才過ぎるよ!」


「てへっ! もっともっと、褒めて褒めて!」


「おう! お前は賢い、マジ天才!」


「NPCのクエストならボッタクリとか言う人いないし、値段も普通のレシピで作るよりずっと安いからみんな大喜びだと思う」

 

 転移石NPCは皆に大歓迎され大盛況だった。


 それからの俺はスモールリーフの宿屋に篭って転移石生産に大忙しとなった。


「ご主人様ー、新たな注文が入りましたよー」


「またか……今度は何個だ?」


「28,300個です」


「ぐは! 多過ぎ、俺死ぬ!」


「ご主人様、ガンバです! 私達の運命は御主人様の頑張りにすべて掛かっているんですよ! 頑張ってくださいね。今日の分を作り終わったら串焼き買って来ますから!」


 雪はどこかで聞いた事有る台詞を俺に言う。


 結構容赦無い少女である。


「素材の瓶と(やじり)と水をここに置いておきますね」


 そう言うと、出来上がった転移石を箱に詰めて、忙しそうにレッドレイクに戻っていった。


「転移石、めちゃくちゃ売れてるな……」


「値段が今までの10分の1だからね。今まで転移石を欲しくても買えなかった層の低レベルのプレイヤー達に売れまくってるからね」


 でも、それを快く思わないプレイヤーも居た。


 錬金術ギルドを根城にする廃錬金術師達である。


「どうするんだよ。あんな原価割れの値段で転移石を安売りされたら、俺達スキル上げで借りまくった借金を返済できなくなるぞ?」


「おまけに、まだ転移石を作れるスキルまで到達してないしな。まだまだ借金しないといけないと言うのに……いったいどうすればいいんだよ」


「誰だよ! 転移石作ればボロ儲け出来るってそそのかした奴は!」


「そりゃ、お前だろ!」


「野盗の高利貸しに約束の期日までに金返さないとぶっ殺されるぞ? どうするんだよ!」


「うわぁぁぁ! どうすればいいかわかんねー!」


「どうにもならないだろ? 俺達はもう終わりだぜ」


「こうなったら、あのダンピングNPCを叩き潰すしかねーな」


「それしか無いな!」


「やるか!」


「やるしかねー!」


「この前はケチってギャラの安いチンピラに頼んで失敗したから、もっと強い傭兵呼んで一気にNPCを叩き潰しちまおうぜ!」


「だな! それしか無い!」


 廃錬金術師達は転移石NPCを叩き潰す為大暴れをし始めた。


「オラオラオラ! 誰の許可を貰って転移石販売なんて始めたんだ? 俺達キング・ベヒーモスの許可を取ったのか?」


 NPCの店舗の破壊を始める愚連隊達。


 それを止めに入るプレイヤーの剣士達。


「なにするんだよ! 俺達のクエストを邪魔すんな!」


「テメーら、弱いくせに俺達の邪魔するのか?」


「雑魚冒険者が、死にて―のか?」


 戦うが愚連隊に一般冒険者が敵うわけもない。


 勝てないと悟った冒険者は怪我をする前に身を引いた。


「勝てねーなら最初から手を出すんじゃねーよ! 今度歯向かったらぶっ殺すぞ!」


 そこに、後ろから糞生意気な子供の声が掛かる!


「おい! 何を暴れてる! お前等生かしておかないぞ!」


 見るとそこに立っているのは小生意気な感じの女の子だった。


 いっちょ前に騎士風の格好をしてる。


「なんだこのガキ? 泣かしたろか!」


「リーダー! ヤバいですよ! この子、赤獅子のリーダーですよ!」


「赤獅子!? マジかよ!」


「お前ら! ここレッドレイクがあたしの赤獅子騎士団のお膝元と知っての狼藉(ろうぜき)か?」

 

 レッドレイクをギルドの本拠地とする、BBB最大勢力の武闘派騎士団の赤獅子騎士団の団長の少女だった。


 少女は精鋭の騎士団メンバーを引きつれて現れた!


 それを見た群衆は沸きに沸いた!


紅美(くみ)ちゃんきたー!!」「もうついたのか!」「はやい!」「きた! 団長きた!」「きた! メイン盾来た!」「これで勝つる!」


 ベヒーモスの連中は、赤獅子騎士団の精鋭に袋叩きに遭って一瞬で壊滅だ。


 その頃錬金術ギルドでは……。


「あの傭兵たちもやられちまったぞ? 強い傭兵じゃなかったのか?」


「最高に強い傭兵だったんだが……戦闘バカの赤獅子騎士団が出て来るとは思わなかった」


「どうするんだよ!」


狼狽(うろた)えるな! 狼狽えるな! 俺達にはまだ……」


 聞き覚えの有る少女の声が掛かる。


「何が有ると言うのだ?」


 赤獅子騎士団が錬金術ギルドになだれ込んで来た。


「お前ら! カルテル容疑と公共物破損の罪で連行する!」


「ぐは―!」


「なんで、俺達の事がバレた?」


 紅美(くみ)の横に天使(ヘブン)が立っていた。


「私らに手を出して、ただで済むと思うんじゃないよ!」


 全ては天使(ヘブン)の手の平の上で躍らせられてただけの廃錬金術師達。


 その後、レッドレイクの錬金術師ギルドは取り潰しになり、廃錬金術師達はキッツイお仕置きを受けた。

 

 借金を返すあての無くなった廃錬金術師達は借金取りの激しい取り立てに追われてレッドレイクの街から消える様に居なくなった。


 その錬金術師の名はマサル。


 ガイヤのフレンドであり、ガイヤをチームでハブられるように裏で手を回してた男だった。


 その時俺は何してたって?


 宿屋に篭って必死に転移石作ってましたよ……ふー、腰痛い。


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