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全財産をガチャに注ぎ込んだ結果、チームでハブられていた俺は成り上がる  作者: かわち乃梵天丸
第二章 真魔王を倒した結果ほぼ全裸で雪原に放り出されたが、なんだかんだで成り上がる
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スキル上げ

 ヘブンの解熱剤を作り終えた俺はホッとしていた。

 

「アイスドリンクが作れてヘブンの熱も下がった事だし、俺も疲れたから少し休憩するかな……昼飯もまだだったし飯でも食いに行くか」


 独り言を言いながら宿屋の食堂に入ると周囲の客の刺す様な視線が気になる。


 あれ?


 俺なんか悪い事した?


 してないよな?


 となると田舎町によそ者が来てるからハブられてる?


 またイジメかよ……。


 嫌になるわ……こういうの……。


 その時ウエイトレスのお姉さんが俺に小声で耳打ちをした。


「あの~お客さま、何か羽織る物をお貸しいたしましょうか?」


「えっ?」


 俺は気がついた。


 ヘブンのアイスドリンクを作るのに必死でパンツ一丁で村の中をうろついてたと言う事に。


 はふん!


「いや、いいです。ちょっと急用を思い出しました。また来ます!」


 俺は大慌てで、食堂を後にした。


 こりゃまいったな。


 素っ裸で村をうろついてたのかよ。


 この街に居たのがNPCだけでプレイヤーが居なかったのが不幸中の幸いだ。

 もしプレイヤーがいたら掲示板で再び祭りになる。

 

 もしかすると変態行為を運営に通報されて垢バンされてしまうとこだった。


 いや運営に通報できるならいんだけどね。


 俺が作ったあの地割れに落ちてから運営の通報どころかログアウトも出来なくなっているし。


 完全にバグりモード中。


 このBBBってゲームは初期の頃もバグだらけで大変だったらしいしな。


 ログアウト出来なくなるわ、時間加速が10倍で無く10,000倍の超加速が掛かっていて大騒ぎになったって伝説が有る。


 まあゲーム内に閉じ込められてもリアル時間で数時間も経てばサーバーリセットが掛けられてログアウト出来るだろう。


 その時の俺は、そんな風に甘く考えていた。


 とりあえず服を作らないとな……。

 

 生産の裁縫レシピだと麻の服が一番簡単だけど、麻の服はチクチクして痛いので着心地重視で木綿の服を作ろう。


 幸い、裁縫の素材となる草は薬草と同じくこの辺りに自生している。


 集めたのは木綿だ。


 俺はそれらを集めて木綿の下着と木綿の服の『旅人装備』を作った。


 当然下着だけで寒がっているヘブンの分もだ。


 ついでに雪の分も作ってやった。


 宿屋に戻りそれを雪に渡す。


「すまないが、天使の目が覚めたらこの下着に着替えさせてやってくれ。あとお前の服も作ったからこれ着てくれな」


「ご、ご主人様……パトのわたくしにそこまでしてくれるなんて……感激です! 一生ついていきます!!」


 雪はちょっとオーバー過ぎる性格なパトだな。


 まあ機械みたいに何言っても無反応で無表情でムスッとしているパトよりもずっといいけど。


 俺は宿を後にして身の回りの物を作り始める。


 武器、盾、そして防具、とりあえずその辺りが必要だ。


 それを作るのには素材が必要。


 盾を作るには一番弱い盾を作るのにもウサギの皮が必要だしウサギの皮を取るためには武器が必要だ。


 でも武器を作る為には鉱石が必要……。


 鉱石を取る為にはつるはしが必要。


 何を始める為にも何かが必要なんだよな。


 何処から手を付けるか……。


 この村じゃ武器らしい武器は売ってないから、とりあえずそこら辺の茂みで木の棒を拾って、それでウサギを倒して皮を集めるか……それしか無いよな。


 俺は茂みに入ってかなり歪んだ木の棒を拾う。


 調べてみると攻撃力1の木の棒だ。


 無いよりはマシと言った感じの木の棒。


 でもこれしか無いんだから仕方ないよな。


 俺は木の棒を手にして草原で草を食べているウサギにそっと近づき襲い掛かる。


 罪も無いウサちゃんよ!


 俺が生きる為に犠牲になってくれ!


 俺は木の棒をウサギに向かって思いっきり振り降ろした。


 ――バン!


 炸裂音!

 

 ウサギが爆ぜる!

 

 皮と肉だけを残してこの世から消えた。


「うは! 力込め過ぎた? やり過ぎ、俺!」


 ログを見ると与ダメ9999ダメージが出ていた。


 えっ?


 LV1で攻撃力1の木の棒を装備して9999ダメ?


 有りえん!


 そんな事ある訳ない。


 もしかすると、戦闘スキルもレアガチャの効果が残ってる?


 でもメニューから俺のステータスを見ても、どう見てもLV1のステータス表示でしか無かった。


 バグかな~?


 まぁいいや。


 どうせすぐにメンテが入って修正されるだろうし気にしても仕方ない。


 今はスキルを上げる事を優先して、メンテが入るまでのゲーム内時間の数日を無事に過ごせればいい。


 今は気にせず生産スキル上げた方が吉だ。


 俺はその日一日掛けて素材を取り生産を繰り返した。


 陽が沈む頃には武器鍛冶、防具鍛冶、裁縫、木工、調薬、調理がスキル30を超える。

 素材取でウサギなんかを倒してた事でLVも10に上がり、当面の冒険に困らない装備とアイテムを手に入れた。


 宿に戻ると雪の献身的な看病で天使もかなり良くなっていた。


 ヘブンも雪も旅人の服に着替えていた。


 よく考えたら雪は人間用の装備を着れなかったはずなんだけどどうなってるんだ?


 まあ、着れてるんだからどうでもいいか。


「どうだ? だいぶ良くなったか?」


「うん、雪ちゃんが看病してくれたからだいぶ良くなったよ」


「そっか。それは良かった。一時はどうなるかと思って心配したぞ」


「心配かけてごめんね」


「そんな事気にすんな。俺、今日一日装備作ってたんだ。とりあえず普通に生きていくには困らない装備を揃えといた。あと料理も……」


 俺はパンだのウサギのローストだのの山を机の上に置く。


「ありがと。こんなにいっぱい……食べきれないね」


「それなんだけど、天使は雪と一緒に宿屋でもう1日静養しててくれないか? 俺、明日レッドレイクまで行って作った武器や装備、アイテムを売ってこようと思うんだ。少しお金を手に入れておかないとこの先不安だからな」

 

「うん。わかった。お土産に串焼き買って来てね」

 

「ああ、任しとけ。雪もすまないが、看病頼む」

 

「天使様の看病はこの雪にお任せ下さい!」

 

 翌日、俺はお金を稼ぐ為にレッドレイクに向かう事にした。


 朝早く起きて料理を仕込み装備を作る。


 どれもハイクオリティーの+3だ。


 きっと高い値で売れる事だろう。


 朝8時に村を立ち、昼前にレッドレイクの街に着いた。


 食べ物はNPCの屋台より若干安く売ってた事と、昼前と言う時間も有って飛ぶ様に売れた。


 装備もすべて+3のハイクオリティー品だったので、装備を失ったプレイヤー達に飛ぶ様に売れ合計で5万G程手に入れた。


 一日の収入としては上出来の額で無駄遣いさえしなければ一週間ぐらい宿に泊まって暮らすのには困らない額だ。


 お土産の串焼きを買う時に、プレイヤー達が話す妙な噂話を聞いた。


「ログアウトボタンや運営への通報ボタンがメニューから消えたのは、この世界がゲームではなく、異世界だかららしい」


「この世界は、ゲームの世界では無くゲームそっくりの異世界なんだぜ」


「今までNPCだった奴らが普通の人間として生活してるんだぜ? 信じられるか?」


「死んだらホームポイントに飛ばされるけど、ゲームじゃないから死ぬと稀にそのまま消えちゃう奴がいるらしいんだぜ」


「ゲームでは今まで受けられたクエストが全て受けられなくなっている」


「クエストを受けられないので転移石はクエストでは二度と手に入らないらしいぞ」


「転移石は生産の錬金LV90のレシピアイテムなので、錬金職人が一括千金を狙ってスキルをこぞって上げているので錬金素材が高騰しているらしい」


 なんて事を耳にした。


 薄々気がついていたがこの世界はやはり異世界だったか。


 異世界だったから今までひくことの無かった風邪をヘブンがひいた事も納得出来る。


 もし、ここが異世界と言うのならば、もう元の世界には戻れないんだろうか?


 俺は帰り道の中、色々と考えながら村へ戻った。

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