最後の輝き
俺が魔王城の封印を解くと、群衆が我先になだれ込む。
真魔王との戦いを特等席で見る為に我先へと魔王城の中へと走り抜けるギャラリーたち。
魔王城には4体の四神と呼ばれる中ボスとさらにその四神を束ねるボス格の2体のメデューサが魔王の間のある奥宮の封印を守っているがそれらはギャラリー達の圧倒的な数による暴力で既に処理されていた。
俺達は最短距離で魔王の間へ向かう事となった。
魔王の間の入り口はギャラリー達でごった返していた。
数万人を超えるギャラリーたちが魔王の間の前で俺たちを待ち構えていた。
俺が魔王の間への扉を開くと群衆がより良い観戦場所を求めて魔王の間になだれ込んだ。
すると真魔王トリガーにより既に魔人から最終形態の竜へと変身していたバーニング・ブラット・バースト・ドラゴンが灼熱の炎を吐き、部屋になだれ込んだ数千人を一瞬で消し炭に変えた。
皆、一瞬で強制ホームポイント送りだ。
「ご主人様、観客さん燃えちゃいましたね」
「ここまでいい席欲しさに四神も倒して頑張って先を進んで来たのに……なむー」
「うわー、私初めて新ラスボス見るけど人型じゃ無くて既に竜になってるんだね」
「一応竜化した魔王を倒したメインシナリオの続きのクエストって感じだからね。真の力を見せた竜の姿から始まるの」
「こりゃ強そうだ!」
「間違いなくやり応えあるね!」
「でも勝てるよ!」
「ご主人様は強いですから!」
「いくぞ!」
「「「おー!」」」
俺は剣を、妹は槍を構え、ミキさんはワンドを構え、雪はダイヤモンドダストを構えドラゴンに立ち向かう。
竜は大きく息を吸うと灼熱の炎を吐きだした。
炎熱地獄が俺達を襲う。
数千人単位で俺たちの後ろから闘いの様子を見ていたギャラリーたちが一瞬で消し炭に変わる!
「熱い!」
でも耐えられない熱さじゃ無い。
見ると雪がダイヤモンドダストのベールで灼熱の炎を緩和していた。
ダイヤモンドダストにはこんな使い方も有ったのか!
俺たちを冷気の膜が包み込む。
ダイヤモンドダストのベールのお陰で俺たちのHPは極僅かしか減っていない。
「いける! これは絶対いける!」
俺達は竜の攻撃を同時に喰らわない様に前後左右から真魔王を挟み込んで攻撃を始めた。
俺が正面に立ち敵の注意を引き付け、雪とヘブンが左右から挟み込むように攻撃し、ミキさんが尻尾の攻撃を避けつつ回復するという布陣だ。
真魔王は強かった。
豚王の様に一瞬では倒せない。
俺達はひたすら攻撃を続ける。
切りかかる!
斬りかかる!
突く!
俺達のカンスト9999ダメージの攻撃が連続で入っても真魔王のHPゲージは数ドットしか減らない。
おまけに雪の切り札のダイヤモンドダストは相性が悪いのか炎属性の真魔王を凍らす事が出来ない。
「こりゃキツイな!」
「大丈夫。ちゃんと減ってるから、絶対倒せる!」
「おう!」
事実、ヘブンの言うように徐々にだが竜のHPは削られていた。
「もう少しダメージが入ったら真魔王が大きくジャンプしてた後に急降下攻撃をして地属性の貫通大ダメージ攻撃『真・大激震』を仕掛けてくるから、ガイヤ君は座り込んで盾で雪ちゃんを守る様にガードして!」
「解った! でも盾が無いミキさんとヘブンはどうするんだ? 盾が無いんじゃガード出来ないだろ?」
「大丈夫。ここまで削ったんだから後はガイヤ君一人で倒せるよ。頑張ってね!」
「そう! お兄ちゃんなら出来るから! 私達がお兄ちゃんの盾となるから!」
「ヘ、ヘブン、ミキさん……お前たちは死ぬ気なのか?」
「安心して。お兄ちゃんは強いんだから、自分を信じて!」
「ご主人様は強いですから、大丈夫です!」
竜がはばたき大きくジャンプをした。
そして急降下攻撃をして来た!
「ヘブン、雪、ミキさん! お前たちを死なせるものか! お前たちは同じパーティーのメンバーだ! お前たちは俺が守ってやる!」
俺の前に立ち盾となる皆を抱えると次々に天井高くに放り投げた。
「お兄ちゃん?」「ご主人様?」「ガイヤ君?」
竜の真・大激震が発動!
大地から無数の岩盤が湧き上がり俺を襲う!
「ぐはあぁぁ!」
高速で飛んでくる巨大な岩盤が俺を連続で襲う!
ぐはあぁ!
痛てー!
すげー痛てー!
俺は三人を投げた事でガードが遅れて竜の攻撃をまともに喰らいまくってしまった。
気がつくと俺のHPの9割が持って行かれた。
「くそっ!」
「グハハハ! お前は次の攻撃で終わりだ!」
真魔王が大きく息を吸う。
貫通ダメージの範囲攻撃『メテオ・フレア』だ!
その時天井から凄まじい勢いで何かが落ちて来た。
ヘブンとミキさんだ!
ヘブンとミキさんは張り付いていた天井を蹴る!
ミキさんは竜の頭に取り付くと両の目をワンドで突いた!
ヘブンは竜の頭上から槍を突き刺し串刺しに!
雪は二人にダイヤモンドダストのベールで包み口から放たれる灼熱から守っている。
竜が大きく息を吸いメテオ・フレアを放とうとした瞬間、ヘブンはその槍を渾身の力て振り払い竜を部屋の隅の壁に叩きつけた!
竜は壁に叩きつけられた衝撃で身動きを取れなくなっていた。
「お兄ちゃんを倒させはしない!」
ヘブンはにっこりと笑って言った。
「借りは返したよ!」
「おう! すまない!」
「とどめいくよ!」
「おう! コンパニオンだな!」
コンパニオンと言うのは二人のプレイヤーによる合体技だ。
バディ登録した特定のプレイヤー、俺の場合はヘブンとのみ出せる技だ。
発動までの隙は大きいが出てしまえばダメージキャップ無視の凄まじい破壊力の超攻撃が繰り出される必殺技である。
俺達はこれを竜に叩きこむ事にした。
コンパニオンを放とうとした俺たちに気が付き、遠巻きに見ているギャラリーから歓声が沸き上がった。
「これは本当に倒せるんじゃないか?」「凄い物を見れるぞ!」「奴らなら出来る気がする!」
俺とヘブンは手を取り合い声を合わせて叫んだ。
「「コンパニオン!」」
二人の手の間に、凄まじく巨大な光の剣が現れた。
手を取り合って巨大な剣を振り降ろした!
「「とどめだ!」」
――ザク!ザク!ザク! ザクリ!
竜は強引に振り下ろされた巨大な剣を肩で受けるとあっさりと真っ二つに両断されて倒された。
俺達は真魔王を4人で討伐した。
「「すげー!」」「「うおおお!」」「「奴らはやったぜ!」」
ギャラリーからの歓声が鳴りやまない。
「お兄ちゃんやったね!」
「ご主人様、凄いです!」
「ガイヤ君、凄いよ!」
「みんなのお陰だ!」
俺たちは皆で抱き合ってお互いの偉業を称えあった。
「やりやがったな!」「真魔王を四人で倒しただと!」「し、信じられん!」
唖然とするトッププレイヤー達。
俺達はそんなギャラリーたちに見守られながら報酬の宝箱を開けに行く。
「じゃあ、これはミキさんが開けてくれ。待望のエクスカリバーだぞ」
「ありがとう」
ミキさんが宝箱を開けようとすると城がぐらりと揺れた。
切ったものは真魔王だけでは無かった。
城の床と城の壁が真っ二つに切り裂かれ地滑りの様にずれる。
部屋の床が大きく二つに分かたれ数メートルの幅の亀裂が走る。
そこに宝箱が吸い寄せられるように落ちた!
「え~! エクスが!」
箱を追って亀裂の中に飛び込もうとするミキさん。
俺は身体を抱き抱えて止めたがミキさんは亀裂の中に飛び込む。
それだけではすまなかった。
コンパニオンは城だけでは無くレスティア氷河の大地をも真っ二つに叩き切った!
そして、その大地のひび割れはこの世界自体を真っ二つに叩ききったのだ!
その亀裂から世界の狭間が顔を覗かせる。
亀裂の中に漆黒の闇の虚無が顔を覗かせる。
俺たちと10万人のギャラリーは、その闇の中へ吸い込まれる様に堕ちた。
第一部完です。
読んで下さいましてありがとうございます。
引き続き第二部へと続きます。




