憧れのデュランダル
コメディ調のVRMMO冒険小説です。
※この作品には多々の設定の矛盾がありますので真剣に読むと禿げます。
※この作品には主人公がピンチになる描写が含まれて居ます。
※基本ソロプレイですがギスギス成分多少あります。
※主人公のステータスはカンストしていて強いはずですが頭が弱いせいで弱いです。
誤字脱字等が有りましたら感想や活動報告で教えてもらえると助かります。
俺は苛立っていた。
何故なら、祭日の今日が発売日の午前中配達指定のゲームが午前中があと15分で終わろうとしてるのに未だに届かないからだ。
これでは今日のバージョンアップ解禁の時刻に間に合わない!
待ちきれずに宅配便の運送会社の営業所に電話を入れると、頭の悪そうな口調のお姉ちゃんが眠たそうに「今すぐ届けさせますね~」と謝罪の言葉も無く言った。
「お兄ちゃん、どうだった? 届きそう」
そう心配そうに聞いてきたのは俺の一つ歳下のヘブンだ。
俺と同じ高校に通ってるツンデレ妹みたいな可愛いきょうだいなんだぜ。
よくあるラノベの妹物みたいに兄である俺に結婚してくれと言うほどベタ惚れって感じではないが、俺の事を持ち上げてくれる上に慕ってくれてる可愛い子だ。
そこら辺に転がってる糞ビッチと違って今時珍しい清純系なんだ。
清純系だからもちろん髪も染めて無い今時珍しいレアな妹。
藍色がかった黒髪がキュート!
その上、ロリ体形で小柄でお胸も小振りと思わず抱きしめたくなるようなきょうだい!
いいだろ?
羨ましいだろ?
お前らもこんな可愛い子が欲しいだろ?
だが断る!
俺の天使ちゃんは誰にもやらん!
俺だけの物だ!
ちなみに天使と書いてヘブンと読むキラキラネームだ。
あ、ヘブンのことを考えてたらつい暴走してしまった……すまん。
俺は頭の中から雑念を吹き払いヘブンの質問に答える事とする。
「今すぐ届けさせるとは言ってたんだけど、どうなんだろうな。この時点で届いてないとなると3時ぐらい……最悪夕方過ぎ位になるかもしれないな」
「そっかー。デュランダルを手に入れたお兄ちゃんと一緒に遊びたかったのに残念だなー」
俺は諦め半ば諦めつつ、宿題をやりに自室に戻ろうとした。
その時!
──ピンポーン!
と、インターフォンの呼び鈴が鳴った。
「お兄ちゃん! 宅配便来たよー!」
インターフォンに出た妹が俺の部屋にも届く程の大きな声で言った。
マジか?
もう来たのか?
仕事はえーじゃん!
やればできるじゃん!
玄関に猛ダッシュだ!
「待ってました!」
玄関にスライディングをする様に飛び込み0.5秒の早業で鍵を開けついでにドアを開ける。
もちろん手にはキャップを外したハンコを持っている。
全国宅配便受け取り王選手権で三年連続地区ブロック優勝者の俺に抜かりは無い。
あ、これは嘘です。
少し話を盛りました。
ドアの先には額から汗を流しながら息を切らせている宅配便の兄ちゃんがいた。
俺が営業所に電話を入れるまで荷物の存在を忘れてたのに間違いない。
この息の切らしようだと営業所から電話が入って未配のミスに気付き慌てて届けに来たのが丸わかりだ。
「お時間遅れてすいませんでした! お荷物です」
「ずいぶんと遅かったですねー。もう、待ちくたびれちゃいましたよ!」
少し嫌味っぽい口調で釘を刺しておいてやった。
ちゃんと言うべきときに言う事を言っておかないと舐められる原因になるからな。
すると一回りも歳の若い俺に宅配便の兄ちゃんは必死に頭を下げながら申し訳無さそうに詫びる。
「うちの集配所にこの荷物を載せたトラックが入ったのが午前10時の二便目で入ってきたもので……時間ギリギリになってしまって本当にすいませんでした」
配達時間帯には遅れていないと控えめに主張する宅配便の兄ちゃんに「二便は午後に到着だろが!」と突っ込みたくなったがその場で考えたであろう嘘にしては上出来である。
俺は受け取りのハンコを押すと荷物の箱を受け取った。
「次は気を付けて下さいよ」
「はい! ご迷惑をお掛けしました。またよろしくお願いします~」
宅配便の兄ちゃんは米つきバッタのように頭を下げながらそう言うと逃げる様に帰っていった。
ネットショップのヨミバシから届いた箱のガムテープを無造作に引き剥がし開梱。
緩衝材の中からお目当てのパッケージを取り出す。
『VRMMO:BBB 三周年記念特別パッケージ』だ。
何が特別かと言うとまずは値段が安い。
最初に売り出した時の三分の一の値段だ。
いわゆる売れ残り商品を値段を下げて再販した廉価版という奴だがそれはどうでもいい。
俺の目当てはそのパッケージに付いてる三周年記念のレア武器の特典コードだ。
なんでもこの特典コードをゲーム内で入力すると現在最強と言われているレリック武器の片手剣エクスカリバーの性能を遥かに超えるデュランダルが貰えるのだ。
その性能はぶっ壊れてると言っても過言では無い。
現在の最強武器の武器のエクスカリバーの性能は
・攻撃力 800
・攻撃間隔 20回/分
・攻撃回数 4回/1アタック
・刃渡り 1.2m
と言う性能に対しこのデュランダルは
・攻撃力 1200
・攻撃間隔 30回/分
・攻撃回数 16回/1アタック
・刃渡り 2.0m
と言う性能だ。
単純に計算しても……多分……倍ぐらい? 3倍? よん?倍ぐらいのDPS性能だ。
さすが三周年記念パッケージに付けるだけのレア武器だ。
ぶっ壊れ具合が半端ない。
これさえ有れば俺をノーブと小馬鹿にした奴らを見返せる!
これで俺もトッププレイヤーの仲間入りだ!
すごいだろ!
いいだろ?
でもお前らには使えぬ!
このコードを使えるのは選び抜かれた勇者のみ。
何故ならこのコードは初心者救済のコードなのでLV49までのプレイヤーにしか使えない。
使えるのは新規プレイヤーと、レベルの上がりきっていない初心者プレイヤーと、LV30キャップが掛かっていた時代に長らく放置してた俺みたいな復帰プレイヤーだけである。
あまりにも壊れた性能の武器なので掲示板では「即修正されるんじゃね?」とか「どう見てもステータスの誤表記だろう?」とか「BBBも遂にサービス終了か?」とまで言われる始末。
それらは既にこのコードを使えないレベルに達してしまったプレイヤー達の嫉妬心からの発言だろう。
俺はパッケージを開け箱の中から特典コードの書かれたカードを取り出す。
トランプサイズの紙に魔方陣が描かれているカードだ。
特典コードとは言ってもカードに目に見える番号が書いてるわけじゃなく、この魔方陣の絵の中のどこかに特典コードのデーターとなるコードが画像として書き込まれてるらしいが俺にはよく解らん。
俺はコードを読み込む為にヘッドマウントディスプレー型のゲーム機のゴーグルを掛けBBBを起動する。
ちなみに『BBB』とは『ブラッディー・バーニング・ブレード』と言うゲームのタイトル名なんだが、あまりにも長いタイトルなのでプレイヤー仲間では『ビー・ビー・ビー』以外の名前で言われてるのを聞いたことが無い。
「よし! コードを読むぞ!」
「おおー!」
俺は妹の声援におされながらBBBのメニューの階層の中から『アイテムコードの読み込み』を選ぶ。
そして、額にカードを押し当てる。
──ピコン!
と言う電子音と共に、
──カードの読み込みが完了しました。
とのメッセージが表示される。
画面に細かな説明が出てきた。
めんどくさいのでよく読まなかったが、要約すると『カードのコードは一回しか使えないけどYOU使っちゃっていいか?』と言うことらしい。
もちろん答えは『はい』だ!
『YES』だ!
『グーテン・モルゲン』だ!
そのためにパッケージを買ったんだ。
わざわざ聞いてくんなよ。
めんどくさい。
そして俺は、ポチりと決定ボタンを押した。
──特典コードを読み込みました。
──特典アイテム手に入れました。
「来た! キタ! キタ! キタ! キタ~!! デュランダル!」
だが、次の一行に表示されていたのは、デュランダルでは無かった。
──『VRMMO:BBB 三周年記念ガチャコイン』を手に入れました。
「何じゃこりゃ!!!」
「ど、どうしたのお兄ちゃん!?」
「デュランダルじゃなかったぜ」
「えええーー!」
「ガチャコインと言うのが出た」
「ガチャって、抽選なんだね。どうりでデュランダルの性能良すぎると思ったよ」
「だよなー。そんなに世の中おいしい話は無いよな。ある訳ねーよな」
「でも、それで当たれば……もしかすると?」
「もしかするかも!???」
俺はそのコインを使った。
ガチャを回した!!!
出るぞ!
出るぞ!!
間違いなくデュランダルが出るぞ!
俺のスタンドと背後霊が出ると言っている!
今の俺なら出る気がする!
出てきたアイテムは!
なんと!
──VRMMO:BBB 三周年記念 レアパトロヌス『雪』を手に入れました。
「はふん!」
パトロヌスって言うのは金魚の糞みたいにプレイヤーの後を付いて来るペットだ。
現実世界の犬みたいなもんだと思ってもらえばいい。
戦闘時に一緒に戦ってくれたり休憩中にどこからか物を拾ってきてくれたりするので役に立たない訳じゃないんだけど俺が狙ってたのはデュランダルだからな~。
レアのパトなので性能はそれなりにいいらしいが、がっかり感が半端ねーわ。