新たな狩場
雪とばかり話すのはまずいと空気を読んだミキさんが俺に話しかけてくる。
「これからレベル上げに行くんだよね?」
「おう! 雪のレベル上げをしたいからな。この町のすぐ横のフィールドで経験値の稼げなくなるLV10迄上げ切ったんだけど、レベル10以降のレベル上げってどこがいいのかな?」
「ここでレベル10迄上げたの? 随分と効率悪いあげ方して……私なら渓谷か海岸かな? あそこならLV30迄上げられる狩場だから、ポーションがぶ飲みしてHP回復しながらレベル上げれば結構稼げるよ」
「今回のレベル上げは雪が死んでロストしない様にするのが目的だから、きつい狩場でのレベル上げは選択肢には入らないというか避けたいな。効率悪くても安全に稼げる狩場がいい」
「なるほどね。それでこんなとこでLV10まで上げてたんだね。そうね……安全重視なら次のエリアのフィールドの黒の森かここのエリアの赤の洞窟のどっちかかな?」
「どっちの方がより安全かな?」
「より安全な方と言われると、うーん、どちらも変わらない位に安全でどちらも変わらない位にレベル上げ効率が悪いと思うけど、森の方は雑魚を狩り続けてるとレアモンスターが湧く敵が何体かいるから同時にレアが湧いた場合の万一の事を考えるとシュワルツの森の方が危険かな? 危険といっても身構えるほどの危険じゃなくてちょっと危ない程度だけど。レアモンスターの湧かないホーツの洞窟の方がより安全だとは思う。ボスはいるけどかなり弱いし、いきなりレアモンスターが湧く事も無いし」
「ミキちゃん、くわしー!」
「だてにサービスインからずっとBBBをプレイして無いしね」
「じゃあ、ホーツの洞窟にするか」
「ホーツの洞窟に行くなら、冒険者ギルドで素材入手クエストとボス討伐クエストを受けようよ。経験値と報酬が美味しいよ」
「そうだね! 受けよう、受けよう!」
ミキさんとヘブンの勧めで冒険者ギルドへ行き、クエストを受ける。
受けたクエストは、
・コウモリ討伐クエスト
錬金術素材のコウモリの羽を10枚
報酬:500EXP 1500ゴルダ
・錬金素材クエスト
レアな赤鍾乳石 1個入手
報酬:500EXP 2000ゴルダ
・ボス討伐
洞窟の奥底に潜む正体不明の敵の排除
ホーツアイデックス 7匹討伐
報酬:15000EXP 4000ゴルダ
銀勲章(初回のみ)
正体不明の敵と言いつつ敵の名前や匹数が思いっきり判明してるのが謎。
確か石化も火炎ブレスもつかって来ない攻撃力が少しだけ強いトカゲの集団の討伐だったはず。
ゲームを始めて間もない頃はLV16ぐらいの戦士ソロで間違えてボス部屋に突っ込んでかなりハラハラした思い出。
そんな奴でも倒せる敵だからたいした敵じゃない。
その頃からボッチでソロをやってたのかよってツッコミは無しの方向でお願いします。
初期村のクエストなので冒険者ギルドのクエストは美味しいと言ってもたかが知れてるレベルである。
ちなみにボス討伐クエストはボスを倒して銀勲章を手に入れないと隣のエリアへ行く関所を通して貰えないので初期プレイヤーには必須のストーリークエストである。まあ俺たちはリピートでクエストを受けるだけなので面倒なチュートリアルのストーリー部分は発生しないのでどうでもいい話だ。
ミキさんが俺とヘブンにちゃんとクエストを受けたか確認してくる。
そんな確認を何の違和感もなく出来るミキさんはフレンドたちと遊び慣れてる感じがするな。
「みんなクエスト受けた? コウモリと赤鍾乳石とホーツアイデックス討伐ね」
「受けた受けた」「おう、受けた」
「ご主人様、ボスはどんな敵なんですか?」
今まで黙って話を聞いてた雪が心配そうに俺に聞いてくる。
「大して強くないトカゲのボスだから安心しろ」
「回復役がいなくても行けますか?」
それを聞いたミキさんが得意気な顔をする。
「大丈夫よ。私、薬師だから回復出来るよ」
「その格好で薬師なのか? 短剣持って軽装してるから普通に盗賊かなんかだと思ってたぞ」
「カモフラージュで見た目変えてるからね。ほら、薬師だとMP関係無しに回復出来るから回復役として攻略パーティーに結構誘われるじゃない。でも強い相手だと薬代が物凄く掛かるからあんまりガチの攻略パーティーには呼ばれたくなくて偽装してるんだよね……だから初期エリアとかで金策やりつつ隠れて遊んでる事が多いんだ」
「なるほどね」
「今回のパーティーはヘブンちゃんリーダーでLV12にレベルマッチしていいかな?」
「おう! それで頼む」
ミキさんのレベルを下げてLV12が2人とLV10の俺と雪で洞窟に挑む事にした。
この洞窟はLV20迄経験値が稼げるのでしばらくは遊べそうだな。




