病室
なんだか目の前が眩しい。
僕は目を開けた。ゆっくりと見えてくる世界は明るくて、白い壁や天井があって、横を向いたら点滴があってそれは僕の腕へと伸びていて、僕はどうやらベッドの上にいてここは病室なんだとわかった。
部屋には誰もいない、僕一人だけだ。
起きたことを早く誰かに知らせたい。僕が無事だということ、僕はちゃんとこっちに戻ってきたこと、家族の安心する顔が早く見たい、その全部を早く。
声を出そうとした。しかし声は出てこない。こんな時に出ないなんてタイミングが悪すぎる。
でも焦らなくていい。僕はここにいるんだ、体も魂もここにいる。もう離れたりしない、離れ離れは寂しいから。
手を動かした。指を閉じたり開いたり、グーとパーを交互にしてみる。自分の手じゃないようなぐらい重たくて動かしにくい。足も動かしてみる。しかしこっちはびくともしない、それぐらい重たい。
こんなに僕は重かったのか。久しぶりの自分の体だから重く感じるのだろうか、自分じゃないみたいでロボットを操縦しているみたいだった。操縦席に座って、操作は初めてだから慣れなくて、だから動かそうと思った方向とは別の方向に手を動かしてしまったり。
この重さが重力なのだろうか。魂となって彷徨っていたときは自分の体が軽かったように思う。それは重力から離れた別のところにいたからなのか、体から離れたから軽くなっただけなのか。
今は重いけどそのうち慣れるだろう。この環境にすぐ適応して、それに慣れて当たり前になる。そういうもんだろう。
そういえばナースコールとかあるんじゃないのか。入院するのは初めてだからこの目で見たことはないけど、だいたい手を伸ばせば届く範囲にあるはずだ。医療ドラマで見たことがある、苦しくなってナースコールを押したらナースステーションにある病室が書いてある表みたいなものの横にあるランプが光って知らせる。そして看護師や先生達が病室へと急いで、患者を助けるために頑張る。心臓マッサージをしたり注射をしたり、電気を送ったりすぐに手術するためにベッドを動かしたり。
僕は苦しくなはい。ただ起きたことを知らせたいだけだ。
それだけで押しても大丈夫なのだろうか、あとで怒られたりしないだろうか、なんだか押しづらくなってきた。押したらどうしましたかと看護師が聞いてくるだろうか、そうしたら僕は起きたので来てくださいと言ってあとは来るのを待てばいいんだ。ただそれだけのことじゃないか、何も難しいことなんてない。
もう一度声を出してみる。何か掠れたような声がとても小さく僕の口から聞こえた。
これじゃあ聞き取れないだろう。何を伝えたいのかわからない。
とりあえず押してみるか、声は出なくても誰かは来る、来たら僕が起きてることがわかる。なんだ簡単じゃないか、何故難しく考えていたんだろう。
僕は動かしにくい手を動かしてナースコールのスイッチを探した。それはすぐに見つかって、親指でスイッチを押そうとした。その時ドアが開いた。
「飛鳥君起きたのね! ちょっと待ってね」
看護師が一人病室へと入ってきた。急いでこっちにやってきて、点滴を見たり僕のおでこを触ったり体温計をワキに挟んだり色々している。
僕は掠れた声を出した。僕は無事です、家族に知らせてください。そう言ったつもりだけど自分でも聞き取れないぐらいに小さな声だ。こんな声では何を言っているのかわかるはずがない。看護師は首をかしげている、そしてポケットから携帯を取り出した。病院は携帯ってあまり使ってはいけないのではなかっただろうか。よく見ると僕が知っている携帯とは少し違うようだった。
看護師はどこかに電話をかけて、少し喋ると携帯を再びポケットになおした。
「先生が来るから待っててね。家族にもすぐに会えるから」
僕が起きたことは家族に伝えられるようだ。なんだか安心したから少し疲れた。
瞼が重たい。なんだか眠たい。
「飛鳥君調子はどうかな? 体はまだ重いかな」
男の人の声が聞こえてきた。重たい瞼で視界が狭くなる。
「うん、大丈夫そうだね。もう寝そうだけど連絡はしてちょうだい」
駄目だ目を開けてられない。僕は目を閉じた、看護師や先生の話し声が遠くなっていく。そして夢の中へと吸い込まれていった。
夢の中で僕はバーベキューをしている。
家族や友達や知り合いと。年に数回しか会わない親戚もいる、引っ越す前に仲良かった友達もいる。
姉が僕の持つお皿に野菜や肉を入れてきた。さあいっぱい食べなさい、お腹空いたでしょ長い時間泳いでいたんだから。そう言って割り箸で肉をつまむと、僕の口へともってきた。
自分で食べられるよ、だからそういうことやめて。僕は恥ずかしかった、こんなところを誰かに見られたら絶対に煽られる。
飛鳥はお姉さんと仲良いなー、羨ましいぜこの野郎、その肉いらないなら俺にちょうだい。ほら煽ってきた、だからお姉ちゃんいい加減くっつくのやめてよ。
姉は僕にくっついている。僕のことが大好きなのはわかるけど、それはいくらなんでもやりすぎだよ。ほら同じクラスの女子が引いてるじゃんか。
編み物が得意な佐藤さん、新体操をしていて体が物凄く柔らかい井口さん、英語がペラペラで発音も良くてなんだかカッコイイ河西さん、絵を描くのが得意で将来はイラストレーターになりたい田辺さん。皆こっちを見ている、他のクラスの女子も見ているんじゃないかな。
誰か見てない人はいないの? 僕は左右に頭を動かした。すると向こうのほうで一人、肉を焼いていてこっちを見ていない人がいた。
なんだか目の前が眩しい。
僕は目を開けた。ゆっくりと見えてくる世界は明るくて、白い壁や天井があって、横を向いたら点滴があってそれは僕の腕へと伸びていて、僕はどうやらベッドの上にいてここは病室なんだとわかった。
部屋には家族がいた。僕のほうに注目している。
父が僕の手をぎゅっと握りながら、良かった本当に良かったと涙を流している。
母は僕の頭を優しく撫でた。心配かけさて、お母さん毎日辛かったのよ。そう言って泣いた。
姉も僕の手を握った、優しく握った。目を覚ましてくれて嬉しい、また会えて嬉しい。
祖父と祖母は僕を優しい目で見て、そして椅子に座った。
「おとうさん……おかあさん……」
声は出るようだ。さっきよりも声も大きい、そして掠れてはいないから聞き取れる。
「おねえちゃん……おじいちゃんと、おばあちゃん……」
皆僕を見ている。その声をしっかり聞こうと。
「ただいま」
僕はニコっと笑った。上手く笑えてはいないと自分でも思う。でも家族に僕の笑顔を見せたいのだ、今まで心配させてきたからそれを少しでも楽にさせたいから。この笑顔で肩に乗った重りが取れるとは思えない、でも今だけでもそれを忘れてほしい。
おかえり、おかえりなさい、飛鳥おかえり、おうおかえり、夕飯はまだですよ。皆いつもどおりの言葉を僕に聞かせてくれた。おばあちゃんがいつもどおりすぎて皆笑った。笑い声が病室に響く。
なんだか久しぶりだな。家族に会うのも、家族と一緒なのも。こうして笑っているところを見るのも。僕は暫く一人だったから。
「心配かけてごめんなさい」
僕がどれぐらいここで目を覚まさなかったのか、僕がどれぐらい家族を心配させたのか。このまま目を覚まさなかったらどうしよう、このまま一生寝たきりだったらどうしよう、このままもうずっと笑った顔を見れなかったらどうしよう。家族は最悪の事態も考えていただろう。
何言ってるんだ気を使わなくてもいんだ、父が言う。飛鳥は被害者なのよ何も悪くないのよ、母が言う。飛鳥がこんな目にあって可哀想、姉が言う。まあでも戻ってこれて良かった、祖父が言う。おばあちゃんより先に天国に行くことは許しません、祖母が言う。
「今日は何日?」
今が何日なのか、何曜日なのか、僕には全くわからない。見渡してもカレンダーらしきものはない。時計はあるから時間だけはわかるけど何日までかはわからない。
今日は三十日だと父が言う。そうかもう月末なのか、だとしたらもう夏休みも終わりだ。屋上に呼び出されたあの日は夏休み前だ、それから長い時間が流れたはずだ、だから月も変わったはず。今は八月だろう。もうあと少しで二学期が始まるのか。僕の夏休みはずっとここで眠っていたわけだ。
長い間眠っていたねと母が言う。一ヶ月ぐらい僕は起きなかったことになる。そんなにも起きなかったらそりゃ体が重いはずだ。それは同時に一ヶ月分勉強ができなかったということにもなる。ある程度先まで予習はしているから今から急がなくてもいい、だけど少し不安だ鈍っていないだろうかと。
受験のことはおいといてまずは元気にならなくちゃねと姉が言う。今何て言ったんだ、受験はおいといてと聞こえたような。いやいや一ヶ月遅れただけだ、まだ受験には時間があるし焦る必要は全くないと思う。志望校も早い段階で決めているし、そこは絶対に落ちることはないだろうし、リハビリをしながら勉強はできるだろう。だから大丈夫だよお姉ちゃん。
それにしても寒いなと祖父が言う。寒いというのは冷房の効きすぎということかな、お年寄りは冷房が苦手な人が多いから。祖父は暑がりだからよく冷房をかけている、だから寒いというのはおかしい。祖母は冷房が苦手だけど全く寒がっていない。ちゃんとあたたかそうな格好をしている。え、何で長袖を着ているんだ。
もう師走ね一年早いわと祖母が言う。師走ってどういうことだ、今は八月の末なんじゃないのか。三十日とは八月三十日ではないのか、十一月三十日だというのか。そんな、それは嘘だろう、もしそれが本当だとしたら僕はそんなにも目を覚まさなかったのか。
ああ、また瞼が重くなってきた。
「こんなに長い間時間を無駄にさせて、飛鳥が可哀相だ」
「そうね、それもこれもアイツのせいね。自分はさっさと楽になって何様よ。親はどういう教育していたのかしら」
「お母さん、亡くなった人にそんな事言っちゃ……」
「まあ慰謝料貰ったし、あの家族は引っ越したしもういいんじゃないかな。飛鳥も起きたから」
「飛鳥があの娘と同じ名前なのはどうにかならないの?」
ゆっくり目が閉じてきた。家族は明日香の文句や悪口を言い合っている。姉は止めているようだけど、僕のこの状態を見て姉までもがその言い合いに参加した。
「逃げやがって」
「迷惑よねあんなのがクラスにいたら」
「飛鳥と同じ名前なのが許せない」
「引っ越してから離婚したという噂があるけどな」
「いいざまよ、あの娘のせいで家族がバラバラになって」
皆やめてよそんな事言うの。僕はもう何も思っていないんだ。明日香は自分で決めて、天へと昇って行ったんだ。だからもうやめて、もう何も言わないで。
「飛鳥もう寝るの? おやすみ」
姉の優しい声が最後に聞こえて、そして夢の中へと吸い込まれていった。
夢の中で僕はバーベキューをしている。
家族や友達や知り合いと。年に数回しか会わない親戚もいる、引っ越す前に仲良かった友達もいる。
僕は背中を向けて肉を焼いている人が気になって、姉のくっつきから離れて走った。
そこにいる貴方は誰なんだ、後ろ姿じゃ誰だかわからない、顔を見せてよ。
その人はお皿に肉を乗せていた。割り箸でその肉をつまんで、歯で肉をちぎって食べている。
外で食べる物は美味しい、バーベキューだとさらに美味しい、砂浜で食べるともっと美味しい。
ねえ僕も一緒に食べていいかな? 僕はその後ろ姿の人にたずねた。
いいけどやめておいたほうがいいよ、その人は言った。
何でさ一緒に食べると美味しいよ、僕はお皿を持って割り箸も持った。
じゃあお隣どうぞ、その人は手を横に向けた。
僕はその人の隣に立って、網の上で美味しそうに焼けている肉を割り箸でつまんでお皿に置いた。
その肉を食べる前に、僕はその人の顔を見た。
僕はびっくりしてお皿を落とした。
だからやめたほうがいいって言ったのに、その人はこっちを見てそんな事を言ってきた。
私は飛鳥君の夢の中や心の中で輝き続ける、私はここでなら生き続けることができる。
明日香は夢の中で輝いていた。
なんだか目の前が眩しい。
僕は目を開けた。ゆっくりと見えてくる世界は明るくて、白い壁や天井があって、横を向いたら点滴があってそれは僕の腕へと伸びていて、僕はどうやらベッドの上にいてここは病室なんだとわかった。
部屋には金髪がいた。金髪一人だけで他の人はいない。
「おはよう」
「うん、おはよう」
金髪は椅子に座っている。
「……あの日のことは夢じゃなかったの?」
「そうみたいだね」
「そっか」
「何だよその顔は。友達になれたから俺にとっては良かったんだけど」
「それに関しては僕も」
僕と金髪は笑った。
「どう体調は?」
「まだ体が重いような気がする」
「そっか」
「僕は長い間眠っていたようだから」
もう今は十二月だろうか。一年で一番忙しい月だ。
「そうだね、飛鳥はずっと眠っていた」
「僕が眠っていた間、何か変わったことはなかった?」
それが知りたいんだ。僕には情報がなさすぎるから。
「俺は突然こっちの世界に飛ばされていた」
「それは明日香が君の事が邪魔だと言っていた」
「……なんかムカつくな。それで俺は怪我をしていたから入院していた」
教室で突然倒れてタバコと大食いが助けようと必死だった。
「体が重くて、言うこときかなくて、でも二学期が始まるまでには回復した」
「良かったじゃん」
「うん、それで心を入れ替えて不良をやめた」
「だからその髪の色なの?」
金髪の髪の色は金ではなかった。僕と同じように黒色だった。
「まあな、見た目から変えないと信じてもらえないからさ」
金髪じゃなくて、黒髪は照れながら髪の毛を触った。
「ついでに二人も素直になってさ、それが学校のニュースになった」
タバコと大食いも心を入れ替えたんだ。
「友達もできたし、今まで嫌いだった先生が良いやつだなと思えるようにもなったし、何で不良やってたのか不思議でさ」
「心を入れ替えたから見える世界が変わったのかな」
「そうだと良いな」
「絶対そうだよ! なんだか顔つきがかわったし」
「お前のおかげだな、ありがとう」
黒髪はとびきりの笑顔を僕に見せてくれた。
「なんか気持ち悪い」
「……おいお前それはないだろ、確かに気持ち悪いけど」
僕と黒髪は笑った。楽しいな面白いな、お腹が痛いぐらい笑った。
「それでさ、明日香はどうなったの?」
「あーそれなー」
「楽しい雰囲気に水を差すようで悪いけど」
「ほんとそうだよ」
黒髪は咳をして、そして喋り出した。
「明日香は屋上から飛び降りた。すぐに救急車で運ばれたらしいけど意識は戻らなくて、そのまま目を覚ますことはなく息を引き取った」
明日香の魂はあの場所にいた。戻る場所も帰る場所もなくて、留まるか上に行くかの選択を迫られていた。
「そのあとは明日香の残された家族は引っ越した。どこに行ったのかそれはわからない」
僕があの場所に行ったのは偶然か必然か。その時明日香はこれは神様がくれたチャンスなんだと思い、僕の記憶を嘘で上塗りして僕に近づいて僕を天に連れて行こうとした。
「明日香の話題は暫く続いた。マスコミが来たり、ニュースではこれが大きく報道されて、毎日この事が取り上げられていた。ある事ないこと書いたり言ったり、色々と騒ぐだけ騒いである日それは台風のように通り過ぎていった。もう今は誰も明日香の話はしない、話そうともしない。初めからそんな人はいなかったみたいに、記憶から消えてしまったかのように」
「……」
「酷いよねこんなの」
「そういうもんだよ。何かあったら騒ぐんだ、馬鹿みたいに」
「明日香がやった事は許されない、でも言いすぎだよ」
「書く人も言う人もそれが仕事だからしょうがないよ、擁護するつもりはないけどね」
「他人の不幸に食いついて荒らすだけ荒らして帰っていくのはどうにかならないのかな」
これは不幸な出来事なのかな?
人の命が一つ失った、それは確かに不幸だけど明日香にとってはどうなのだろう。明日香は僕の夢に出てきた、そこでなら生き続けられると言った。命は失ったけど明日香は生きている。それは果たして不幸と言えるのだろうか。
「それより受験どうしよう」
僕は話題を変えた。
「飛鳥ならどこでも行けるんじゃないの?」
「そんな賢くないよ」
「嘘だ、そんなわかりやすい嘘はよくないよ」
「だって何ヶ月も勉強してないんだよ」
「それぐらい余裕でしょ」
「まあ今はゆっくり休むよ。間に合ったらもうどこでもいいよ」
「そうだよお前は大変な思いをしたんだから」
「そういえばさ」
「何?」
「よく病室に入れてくれたね」
黒髪は更生したからといっても少し前まで不良だった。学校では有名で、僕の家族も知っている。だからそんな悪い評判しかない元不良を病室に入れるはずがない。
「毎日お見舞い来てたからね」
「え、毎日?」
「うん毎日。まあ初めはびっくりされたけど。息子と友達って冗談でしょって言われた」
「そりゃ普通そうなるよ」
「で毎日来てたら俺の心が通じたのかな、目が覚めたら仲良くしてあげてねって言われた」
「そっか」
「友達だからな! これぐらい当たり前でしょ」
「僕の友達がお見舞いに来たらびっくりするだろうな」
「あーびっくりしてたよ。ドア開けて俺と目が合って部屋間違えたと思って閉めたもん」
「誰も僕と君が友達だと知らないからね」
「うん」
また楽しい雰囲気になってきた。暗い雰囲気は暫くいらないね、心までもが暗くなりそうだから。
「ねえ」
「何? 俺はまだ帰らないけど」
「そうじゃなくて、名前で呼んでいい?」
「いいよ」
「そっか良かった」
「てか今まで呼ばれていなかったのは気のせいじゃなかったんだな」
「ごめん」
僕は今まで黒髪のことを名前で呼んでいなかった、その事がずっと気にはなっていたけど後回しにしていた。それどころじゃなかったから。
「いや全然いいけどさ、俺も前まではクラスメイトの名前あんまり知らなかったし。興味なかったっていうかね」
「それ酷いな」
「お前に言われたくはないよ」
僕は笑った。黒髪も笑っている。
僕はこのあとまた眠くなって、そしてまた夢を見るだろう。そこには明日香が生きている。明日香は何故僕の夢に出てきたのだろう、あの時僕を諦めたんじゃないのだろうか。僕も本当の気持ちをしっかりと伝えた、だからもう未練なんてお互いないはずだ。それなのにどうして夢の中であんなにも輝いているんだろう。
僕は今になって明日香のことが好きになったのだろうか。そんなわけはない、そんな事は考えたくもない。僕を巻き込んだのは明日香だ、明日香の一方的な片思いに巻き込まれて長い間眠ることになったんだ、だから好きになるはずがない好きになんてなれない。
それでも夢の中の明日香は輝いていて、可愛くて素敵で綺麗だと思えてくる。
そこに気持ちはないのに思わず見とれてしまう、好きじゃないのに気になってしまう、もうここにはいないから余計に考えてしまうのだろうか。
天へと昇っても僕を惑わす明日香。彼女は悪い女の子なのだろうか、好きという気持ちが他の人より強いだけの純粋な女の子なのだろうか、それとも……。
僕は明日香からまだ完全に解放されていないのだろうか。もしそうだとしたら僕は解放されなくちゃいけない。いつまでもこの状態は駄目だ。
だから僕は前に進んでいくしかない。勉強だったり受験だったり、恋だったり愛だったり、友達と遊んだり家族とどこかに出かけたり。そうやって毎日を充実させて楽しんで明日香が出てくる隙をなくしたらいいんだ。そうやっていたらいつか現れなくなる。心の中にも、夢の中にも。
それは忘れるということじゃない。その人の分まで生きて、この長い人生を歩き続けて、なるべく座り込まないでゴールを目指したいという僕の目標みたいなもの。命がなくなった人はもうこの道を歩くことはできないのだから。
ああ眩しいな、僕はこのあと目を覚ましてまたいつもの病室のベッドで手を伸ばしてノビをして起きるんだ。看護師さんが来ておはようございますと挨拶したら、僕もおはようございますと元気に挨拶するんだ。
ゆっくりと目が開いてくる。また新たな一日が始まる、今日も一生懸命頑張ろう。
終わり
最後まで読んでくださってありがとうございました!
初の連載でした、初の長編でした。もう文字数をどう稼ぐことで頭がいっぱいでしたw
時間かかりまして、完成した時はもうこんな時期でした。どんだけ書くの遅いんねんって呆れます。それでどうにか十一月には終わりたくて連続投稿しまくりました。
色々難しかったですがどうにか最後まで書けて良かったです。僕の目標はとりあえず長編を完結させることだったので。ホントは内容も良ければ良いんですがねw良いか悪いかは自分ではわからないというか。
ただ書いていて楽しかったですし自分的には良かったかなと思います。楽しくないとそれは面白くないんだなと思いますし。
はい、あれやこれや書いたらまた時間かかりそうなのでパパっと終わります。また次があったらよろしくです!他のも良ければ読んで下さい。




